日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2009年6月22日月曜日

Visual Effects For Director

少し前だがHollywood Camera work より「Visual Effects For Director」のDVDセットがついに発売された。

CommingSoonと予告がHPに掲載されてから4~5年かかったような気がするが、なんとか企画倒れに終わらずに発売されたのはうれしいことだ。

いまではもう、すでに知っている知識も多いが、これからVFXの世界に入ろうという人や、VFXの過程で何が重要かをおさらいしておくのにはいいかもしれない。

このDVDの紹介サイトでは、それぞれのサンプルクリップもみれるようになっている。
内容的にはタイトル通り、監督を始め、プロデューサー、コーディネーターなど、VFXの現場にいてアーティストと共同して作業をすることが多い立場にもかかわらず、VFXの具体的な作業については知らない人たちに必要な知識を与えてくれる。

しかも応用の利かない一般的な知識ではなく、もう少し踏み込んで具体的な作業を理解できる内容となっている。

映画のDVDを買うとメイキング映像とかが特典でついているが、それだけでは具体的にどのような作業をしているのかは断片的にしかわからない。
特にみていておもしろくないところは、出てこないので、実際のところそれを仕事に生かすのはある程度経験を積んでからでないとむずかしい。

このDVDだと、そのメイキング映像をさらに具体的にステップをはしょらずに、説明してくれているような感じだ。(ただ完成映像は、もう少し頑張って欲しい感じはあるが...。)


こちらで仕事をしていると、3Dやコンプ作業をまるでPhotoshopでの作業と同じぐらいの時間でできると考えているような監督やプロデューサーによく出会う。
そういった人がクライアントになると悪夢をみる。

まず、CGはを使うことで「簡」「単」にリアルな物を追加したり変更することができ、それがここ数年でソフトが向上したことで、もっと簡単にできるようになっていると思っている。
そういった人と仕事をするとそもそも時間の見積もりの認識にかなりギャップがある。
また変更が簡単にできると思っているので、アイデアを変えることが多い。

(あくまで自分の経験からの感想ですが)こちらでの仕事のやり方は、日本のように前もって十分アイデアを練って作るというのは予算が十分あり、経験のあるプロデューサーに管理されたときのみではないかと思う。
うちのような会社の低予算作品に関わっている人たちの場合、まずおおざっぱなアイデアがきて、なんとか形にする(ショットを作る)、それをもとに、新たなアイデアを盛り込んだり修正を入れたりして、だんだんショットを詰めていくような感じ。
なので、シーンファイルを作るときも、ある程度柔軟性を盛り込まないと、大体おわりごろには二度と作れないような複雑怪奇なシーンファイルになっている。
ただ、低予算のものは大体、納期も早いので、ほとんどのシーンファイルは二度と見たくないような混乱状態になることが多い。

アメリカと日本の仕事の進め方のギャップは東京ディズニーランドの建設時にも問題となっている。
(本:東京ディズニーランドをつくった男たち  野口 恒 )

だが「東京ディズニーランド」の問題は日本で起きたこと、日本国内ならまだ文句の言いようもあるが、こちらはアメリカでアメリカ人の経営し、アメリカ人スタッフが大半の会社なので、そういったやり方さえ、しぶしぶながら受け入れてしまうのだから始末が悪い。
しわ寄せはアーティストにやってくる。
それでもこちらの人はそれが最低限ひつような映像制作のプロセスだと思っているので、どうしようもない。

日本の仕事のやり方になれている人は、かなりストレスを感じることだろう。

いままで、それが当たり前なのか、この業界の人はそれを受け入れているのかと思っていたが、どうやら層ではないらしいw
このDVDのある章では、PhotoshopとCompositソフトの違いに、ついてきちんと説明してある。
よくぞ言ってくれた!!とうれしくなってくる。
願わくば、コンピュータ化により全てが簡単にできると思っている方々の目に届いて欲しい。


話がそれたが、内容的には、VFXの一般的なパイプラインと、そこで使用されるソフトを一通り押さえてあるようで、まさにタイトル通りの内容となっているし、アーティストにとっても役に立つ知識を与えてくれる。

具体的なソフトの名前や画面が出てくるが、あくまで作業の内容を説明するためでソフトのチュートリアルではないので、個々のソフトの使い方については詳しく説明していない。。

しかしながらVFXの行程における共通する問題点はかなり細かなところまで掘り下げてある。
どのソフトでも共通する言葉や作業工程を使っているので、応用が効く内容となっている。

具体的な例をあげると、マスクのキーフレームや、キーイングにおける問題や解決策、シャドーパス、トラッキングのポイントなど。


サンプルを見た感じでは、クオリティーは別として、実際のプロダクションで使われる基本テクニックは網羅してあるように思う。
ちょっとだけ「VFXの仕事」を知りたい程度で見るには長すぎる内容だと思うが、
VFXを仕事にしたくて、基本を押さえておきたいとか、趣味や学校の制作でVFXショットを作りたいということなら、これはとてもよい自習教材となるだろう。

コンプと3Dソフトが使えれば、これをみてまねするだけで、TV程度のクオリティーのものを作ることはできるように思う。

ただクオリティーを詰めることができるかどうかは、ソフトやプラグインをどれだけ突き詰めることができるか、どれだけ根気強く一つのショットに取り組めるか、ショットに関する具体的なアイデアをもっているかなどに依存する。
それらはこのDVDの範疇ではないだろう。

あと、CGの説明ではなく、VisualEffectsの説明であることを強調しておく。
このDVDのポイントはあくまでVisualEffectsのパイプラインに必要とされる作業とそれぞれのポイントでの注意点を解説することにある。
これをみれば、VFXの作業とそこにおける、不備や変更がどのように予算と時間に影響するかを理解することができるのではないかと思う。

 

2 件のコメント:

  1. できれば、そのDVDの日本語訳が出て欲しいっす

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  2. 匿名さん、コメントありがとう。

    おっしゃるとおり!! ><
    今は、将来、海外で働くことを夢見て、英語で頑張っるしかないかなぁ。
    英語の文章はだめでも、DVDの中で使われている専門用語をまず理解するだけでも理解は深まると思います。
    実作業でも、よく使われる言葉が多いですから、将来もきっと役に立ちますよ!

    ワークスコーポレーションさんか、ボーンデジタルさんのほうで日本語版、是非出してほしいですね。

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