日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2010年6月30日水曜日

VES ビジュアルエフェクツ・ハンドブック

毎年ビジュアル・エフェクツ業界のアカデミー賞とも言える、VESアワードの授与とイベントを主催しているVES:(ビジュアル・エフェクツ・ソサエティ:全米視覚効果協会)。
ハリウッドをはじめ、カナダなど各地に支部を持ち、ビジュアルエフェクツ業界の社交場、牽引役をしている協会です。

このVESからビジュアル・エフェクツ業界の決定版とも言える本が2010年7月に発売されます。

The VES Handbook of Visual Effects: Industry Standard VFX Practices and Procedures
(ビジュアルエフェクツのVESハンドブック:VFXプラクティスと手順の業界標準)
価格:$64.95
Amazonでプレオーダーした人は10%引きの$58.45で購入できます。
VESのホームページではまだ発表されていないようなので、会員割引の有無はわかりません。

本の詳細は、www.VESHandbookofVFX.comの以下のページにあります。
http://www.elsevierdirect.com/product.jsp?isbn=9780240812427
このページの要点を簡単ですが訳してみました。


この本は、プリプロダクションから、デジタルキャラクターの創作、ライブアクションとCGの合成まで、すべてのVFXアーティスト/プロデューサー/スーパーバイザーが知る必要のあるテクニックと解決策を含んでいます。
ステレオスコピック映像製作、カラーマネージメント、デジタル・インターメディエートに関する詳細なレッスンも含まれています。

EAとドリームワークスのアーティストによるインタラクティブ・ゲームとフルアニメーションの章もあります。
業界をリードするトップクラスの関係者88人により、プレプロダクションからポストプロダクションについての全てをカバーした著作。

VFX業界で働いている、もしくは将来働きたい人は誰もが持っておくべき本です。


<対象>
VFXプロデューサー、VFXスーパーバイザー、VFXテクニカル・ディレクター、VFXアーティスト、VFXスチューデント、VFXプロセスの大要を知りたいフィルム・メーカー

<内容>
ビジュアルエフェクツとは何か 
(What is a Visual Effect)
ビジュアルエフェクツの略歴 
(Brief History of Visual Effects)
プリプロダクション (
Preproduction)
スクリプトの分析 
(Breaking Down a Script)
映画制作者との最初のミーティング 
(The First Meeting with the Filmmakers)
VFXデザインのためにアートデパートメントと働く 
(Working with an Art Department for VFX Design)
プレビジュアライゼーション 
(Previsualization)
撮影 
(Shooting)
セットでの作業 
(Working on the Set)
ブルースクリーンとグリーンスクリーン 
(Blue and Green Screen)
スペシャル・メカニカル・エフェクツ 
(Special Mechanical Effects)
セットでのデータの取得 
(On-Set Data Acquisition)
カメラとキャプチャーの詳細 
(Camera and Capture Specifications)
3-Dステレオ 
(3-D Stereo)
セカンド・ユニットとVFXフォトグラフィ 
(Second Unit and VFX Photography)
ミニチュア 
(Miniatures)
パースペクティブを補正したミニチュア 
(Forced Perspective Miniature)
パフォーマンスキャプチャとモーションキャプチャ 
(Performance and Motion Capture)
ポストプロダクション 
(Postproduction)
解像度とイメージフォーマットの考慮すべき事柄、ポストプロダクション・パイプライン 4Kと2K 
(Resolution and Image Format Considerations and Postproduction Pipelines (4K & 2K))
デジタル・インターメディエイト 
(Digital Intermediate)
カラー・マネージメントとデータ・マネージメント 
(Color and Data Management)
フィルム・スキャニング/レコーディング
(Film Scanning/Recording)
VFXエディトリアル 
(VFX Editorial)
ポストプロダクションのためのイメージの圧縮/フィルムフォーマット 
(Image Compression/file formats for postproduction)
ライブ・アクションのコンポジッティング 
(Compositing of live-action elements)
マット・ペインティング/エンバイラメントの製作 
(Matte Painting/Creative Environments)
デジタル・エレメントの創作 
(Digital Element Creation)
VFXのためのCG入門 
(Introduction to Computer Graphics for VFX)
デジタル・キャラクター 
(Digital Characters)
デジタルエフェクツ 
(Digital FX)
CGエレメントのライティング/コンポジッティング 
(Lighting/Compositing CG Elements)
群集の生成とシミュレーションのテクニック 
(Crowd Generation and Simulation Techniques)
3Dプロダクト/システム 
(3D Products/Systems)
CGによる補正とアクターのエレメント 
(CG Prosthetics and Actor Elements)
インタラクティブ・ゲーム 
(Interactive Games)
フル・アニメーション 
(Full Animation)
その他のワークフローに関する考察 
(Other Workflow Considerations)



編集は、30年も映画のビジュアル・エフェクツ・スーパーバイザーとして働き、現在はVESのチェアマンであるJeffery A. Okun氏と20年のビジュアル・エフェクツ・プロデューサーの経験をもつSuzan Zwerman氏。

そのほか、著者についてのリストは以下のページにあります。
http://www.elsevierdirect.com/companion.jsp?ISBN=9780240812427
またこのページからPDFファイルによるサンプルを見ることができます。

    * 第二章:カメラアングル・プロジェクション (Camera Angle Projection)
    * 第三章:カメラデータの記録方法としての三角測量 (Triangulation as a Method of Recording Camera Data)
    * 第五章:3Dステレオ・デジタル・インターメディエイトのワーク・フロー (3D Stereo Digital Intermediate Workflow)
    * 第六章:ポストプロダクションのためのイメージの圧縮/フィルムフォーマット (Image Compression/File Formats for Post-Production)
    * 第七章:デジタルヘアーとファー (Digital Hair and Fur)




CGだけでなく、VFXに関係する全体のワークフローに関する内容となっています。
CGを詳しく知りたい方には、物足りないかもしれませんが、様々なVFXに関係する作業を知り、ワークフローを知るには、大変参考になるのではないでしょうか?

Redカメラによるタイムスライス

カジノのCM
RedOneを60台つかっているそうです。



以前、ご紹介したTimeSlice社以外に同じような効果を作れる装置を持っている会社もみつけました。
「TimeSlice」は商標登録されているようなので、マルチカメラとかバーチャルカメラという言い方になっています。
もしかしたら「BulletTime」も商標の関係でそう呼ばざる得なかったのかもしれません。


Digital Air社

Digital Air社のバーチャルカメラシステムを使ったサービスは以下の3つあるようです。
実際の所、使っているシステムの何がどう違うかよくわからないのですが、 サービス毎にそれぞれのWebサイトがあります。
DIGITAL AIR visual effects(長編映画、TV、CM向けビジュアルエフェクツの作成)
TIMETRACK(フィルムベースのマルチ・レンズ・ビジュアル・エフェクツ・カメラ・システム)
MOVIA(ゲーム、ライブ、TV、インタラクティブアプリケーション)


どんな呼び方をしてもやっぱりこの手の映像は、気持ちいいし、かっこいいですね。

2010年6月29日火曜日

メモ:プラモデル

軍艦島
http://ameblo.jp/aoshima-kumablog/entry-10570385971.html

ハセガワ スペースシャトル
http://spacetoys.com/proddetail.php?prod=SM-HA10729

LinkedIn、ILMへの就活?!、ハリウッドVFX業界就職セミナーなど

海外のCGアーティストをはじめビジネスマンにも人気の二大SNSに、「Linked In」と「FaceBook」がある。

Facebookは日本語にも対応しているのでご存じの方も多いようだが、「LikedIn」の知名度は今ひとつのようである。
日本ではどちらもMixiで間に合うので、それほど必要とされていないという背景もあるだろう。

しかしLiked Inは、海外への進出を考えている人には是非ともトライしてもらいたいSNSである。
Facebookは、どちらかというと友人関係主体、Linked Inはビジネスに特化されている。


参照:シリコンバレーでは常識,850万人が使うビジネス特化SNS「Linkedin」  (IT Pro)
参照:Linkedinが変えるビジネスマッチング


実は2008年頃には日本版も登場予定だったが、その後は話を聞かないし、未だに日本語機能も搭載されていないので、その話は流れたようだ。
ひとつ情報として、Bizzoというサイトがその日本版ではないかという話がある。
(情報元:ブログ「もっと知りたい」)

ヤフーも2008年に「CU」というビジネスSNSを立ち上げたが、事業化の見通しがたたず、1年もしないで閉鎖された





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Linked Inは、本名で登録され、就職活動用のサイトへのリンク、レジュメなども掲載することができる。
グループ活動も盛んで、ソフト別、業種(ゲーム、VFXなど)別、会社別、など様々な活動がある。
CG業界全体を包括してネットワークを構築しようとする就活用のグループなどもある。

LinkedInが便利なのは、フリーランス主体で人事移動の激しいこの業界で、知り合った人が今どこで働いているのか?また、どんな仕事をしているのか?
という情報を知ることができることだ。

また自分のメッセージを掲載しておくことも可能だし、メールの機能も持っている。
仕事を探したりすることもできるようだが、このあたりは利用したことがない。
通常のSNSと同じように、友人の友人などもこのSNSを通してコネクトすることが可能である。
そしてアップデートされた情報は、定期的に通知されるE-mailで、コネクトした人たちに配信されるので、常に知り合った人たちのアップデート情報を知ることができる。

私自身はLinked Inを活用しているとはいいがたく、
実際に知り合った人としかコネクションを結んでおらず、いままで登録した相手にLinked Inのメールでコンタクトをとるぐらいだった。

最近、プロファイルのトップに一言メッセージのような物をのせらられると知り、
さっそく仕事を探している旨、書いてみた。

即座に一人の人が連絡をくれ、ある会社が募集していることを教えてくれた。
その会社には応募して、現在は返事待ちである。


そして、先日LinkedInを通じて、別の友人からもメールが来た。
彼女とはCGの学校で知り合ったのでかれこれ7年近く前からの知り合いだ。
学校では、先生の話を一言残らず聞き逃すまいとして一番前の席に座るようにしていたのだが、日本人はなぜか一番前の席を遠慮するために必然的に私の臨席は現地の生徒で埋まることになる。
そのときに、いつも隣に座っていて、馬鹿話などをしていたのが彼女である。

学校を卒業後も、CGのイベントで会ったり、ショートフィルムのプロジェクトで活動したりもしたが、数年後に彼氏の転勤でシンガポールに行くことになった。
折しもそのときは、ルーカスフィルムがシンガポールにルーカス・フィルム・アニメーションを立ち上げようとしていた時期であった。
うちの学校から直接、大手には入れた人は経験者以外、ほとんどいないのだが、彼女は前経験もないのにルーカスフィルムに入社した。
ただし、CGではなく、ProductionAssistantとしてだった。

当時は結構どんな人でもある程度の経験があれば入れたらしく、うらやましかったが、やっとアメリカで安定し始めたときだったので、シンガポールは遠すぎた。
現在は、Coordinatorを得て、現在はAssitant Producution Mangerになっている。

その彼女から、「どんな仕事をさがしてんの?」というメールが届いた。

とりあえず「MayaGeneralistもしくはFxアーティスト」として探していることを返事しておいたところ、
「もし、サンフランシスコに引っ越すつもりがあるなら、うちのリクルーターに話をしてみようか?」といううれしい返事が来た。

しかし、こどもの学校もやっと決まったところだし、前回日本に返った時の費用や、グリーンカードの費用、しかも2月の給料が未だに支払われてない問うことで、借金しかなく引っ越し費用を捻出することもできない状況だ。

まず、何よりいくら口利きをしてもらったところで、現在の自分のスキルには自信がない。

自分のレベルでは、まず無理だが、力試しに応募してみても良いかとは思っている。
今回のシーグラフでもILMからリクルーターが来るらしいので、そこで応募することも考えていた。

仮にうまくいって面接までパスしたとしても、サンフランシスコに今すぐ引っ越すつもりはないといえば、相手も「何でじゃあ応募したんだよ!」と突っ込みたくなるだろう。
そうなると彼女の面目も立たない。

そんなわけで、彼女を通して応募するのは最後に切り札にとっておくことにして、今回はシーグラフで単独、応募することにした。
目的は、面接までいってリクルーターの人と直接話をすること。
それでLinkedInでネットワーク作りができれば御の字である。
採用されることなどはあまり考えていない。

人脈があるからと言って就職できるわけでも無し、スキルがあれば人脈なくても就職できるような気もするし....。


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ところでシーグラフ&ハリウッドでの就活と言えば、あの人の出番である。

「ハリウッドCG 業界就職の手引き」の著者「鍋潤太郎」さん。


なんと今年は、シーグラフ開催中の7月28日にLAのリトル東京にあるMIYAKOホテルにて「ハリウッドVFX業界就職セミナー」を開催するらしい。

私が特に参加したいのは、共著者である溝口稔和氏によるのレジュメの書き方、英語対策、戦略的キャリア・プランニングの講演だ。

少し前に「ハリウッドCG業界就職の手引き」を手に入れ、それを少しづつ読んでいるのだが、両氏の情報収集の質の良さとその情報入手の早さには脱帽する。
数年前から現在のハリウッドの傾向を見抜いている。

そのような人から最新の生きた情報を聞けるのはまたとない機会であり、就職活動に必要なアドバイスをいただけるのは、そうそうある物ではない。
日本では時々、こういったセミナーや講習会を開いているらしいが、ずっとうらやましく思っていたので、今回は時間さえ合えば参加したい。

セミナーの後には懇親会(飲み会)もあるらしく、きっと現地の人も来ると思うので、こちらもどんな人が集まるのかと、今から興味津々だ。

海外を目指している人は、シーグラフで現地の雰囲気をあじわいつつ
Exihibition(展示)フロアーのみだが、無料パスも毎年、いろいろなCG関係会社やグループから発行されるので、それを利用する手もある。
毎年DigitalTutorsやGnomonなどから無料パス用のコードが発表されるのだが、今のことろ、まだ発表されていない。
3Dtotalからはすでに無料パスを手に入れることができる特設サイトが発表されている。


訂正:MiyakoホテルとKyoto Grandホテルを勘違いしてました。 ニューオータニだったのは、Kyoto Grand ホテルでした。Little東京の状況がわかるかと思い文章は一部訂正して残しておきました。
 余談だがMiyakoホテルは、元々はHotelニュー・オータニだった。
2年ほど前にユダヤ系の不動産会社に買い取られ、MIYAKOKyoto Graund Hotelと名前を変えた。
現在では、経営者が日本人ではないため、日本的な良さが徐々に失われていると聞く。
顕著なのはすぐ近くにあるジャパニーズ・ヴィレッッジ。
100円ショップの商品を扱う店や、本屋もあり、現地のコスプレイヤーが集まることもある。
 ほかにもヤマザキパンや、三河屋など、日経のお店がたくさんある場所である。
しかしこちらも同時期から、コリアン系の経営者に変わったために、すでにいくつかの店がコリアン人の経営する店に変わりつつある。
現地の人間から見るとさほど変わらないのだろうが、日本人から見ると違和感がある。
両方とも、バブルの時期に栄え、バブルの衰退と運命を共にした場所である。
ここに来ると、日本人にもっとがんばってほしいなと思うのは私だけだろうか?

メモ:Doyub Kim (流体、泡などのシミュレーション研究)

http://www.doyub.com/research

2010年6月28日月曜日

Lynda.comでNukeチュートリアルを体験 (その1)

 Mayaや3dsmax、Vueの3Dソフトを始め、Photoshop、AfterEffects、Nukeなどの2Dソフト、ebayやfacebookまでのビデオチュートリアルをそろえているLynda.com
以前Mayaのチュートリアルを見たことがあるのだが、非常にのんびりしていて、すぐに眠くなってしまった。
この手のチュートリアルは教えてくれる先生によって、違うので、これだけでLynda.comを評価してしまうのは良くないのだが、それ以降、自分の中ではそれほど使い道のないサイトというイメージが定着していた。


1月ほど前に、VES会員向けに、無料で2週間、Lynda.comが使い放題というスカラーシップが実施されるという案内がきた。
申し込めばグループアカウントのログオン情報が渡され2週間だけログオン可能となる。

登録して、順番が回ってくるまで約1月待たされたが、やっと先週金曜日からログオンできるようになったので、試してみることにした。
期間が2週間と短いので、的をしぼらなければならない。
本当はHoudiniをやりたかったのだが、残念ながらHoudiniチュートリアルはLynda.comには存在しないのでNukeをやってみることにした。


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Nuke5 Essential Training

今まで、別のソフトのチュートリアルを、GnomonやDigital Tutorsなどで見たことはあるが、Gnomonは英語が早く、場合によっては進め方も早くわかりにくい。
Digital Totorsは、わかりやすいのだが、時々間違いやごまかし(チュートリアル録画中に予想外の結果がでて先生が一瞬躊躇する)のようなものがあり、どうかなぁと思う時がある。


今回、Lynda.comでのNukeトレーイングはまだ第一章しか終わってないが、今回のNukeのトレーニングは非常にわかりやすかった。

英語も適度なスピードで聞き取りやすい発音
ひとつひとつのムービーは平均して3~4分と非常に短く、機能が絞って説明してある
今回は入門レベルであると言うこともあり、一つ一つが簡単で、自分のペースで進めることができた。


個人的には、いままでに見てきたチュートリアル動画のなかでも一番のわかりやすさだなと思った。
それもそのはず、これはハリウッドで、コンポジット専門におしえているSteave Weright氏によるものだった。

これまでにも、「Digital Compositing for Film and Video」という本を出したり、ハリウッドエリアを中心に、各地でコンポジットソフトの講習会を開いている。

CG Societyでも7月12日からnuke6のワークショップを開く予定であり、氏のトレーニング専門のサイト「vfxIO」ではほかにも様々なトレーニングサービスが紹介されている。

これだけ、トレーニングに注力している人だけあって、Lynda.comのトレーニングも非常にしっかりした印象を受けた。
見ていて、迷いがなく、ストレートに導いてくれる感じがするので、心地よさを感じる。


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Lynda.com自体にも使いやすい機能がある。

一つは、子供が幼稚園などで、何かできたときにシールを貼ってもらうように、見たビデオ・タイトルの横にマークがつくので、どこまで見たかもわかるようになっており、進捗状況が管理できる事。

もう一つは字幕
プレイヤー内で、「CC」(Closed Caption)のボタンを押せば字幕が表示される。

これは、トランスクリプトのページ(ムービーのリスト(Table of Contents)のタブ右横に「Transclript」がある。)でも確認できる。
トランススクリプトでは、その文章のタイムライン上での時間が記されている。
その秒数をクリックすれば、そのビデオが再生されるが、残念ながらトランスクリプトに表記された時間からではなく、冒頭から再生される。

英語が聞き取れない方は、スペルもわかり辞書で調べ直すときにも便利である。
英語の聞き取りの練習にも良いかもしれない。

ほかにも、自分で注釈もつけられる、ブックマーク(このLynda.com内でのブックマーク機能)やタグ付けもできるようになっており、総合的にチュートリアルを見直したいときには便利そうだ。

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以上の結論から言うと、このLynda.comのNukeトレーニングは初心者入門用としてかなりおすすめです。
トータルで10時間にものぼるチュートリアルですが、全部で8章にわかれています。
お試しとして無料でいくつかのビデオが見れるはずなので、ぜひ体験してみてください。
ちなみに有料サービスは一ヶ月25ドルからと、お手軽です。

断っておきますが、私はLynda.comとは一切関係ありません。

2010年6月27日日曜日

知識の底上げ

昔、いろいろな本を読んでいたことがあった。

小、中、高校と勉強してきた様々な科目、
短大で工業デザインを勉強したときに「デザイン概論」という本があった。
学生の時は授業で少し使った程度で、ほとんど読んでいなかった。

最初の就職先が、希望が持てず、悩んでいたとき。
無意識のうちに、この本を手に取り、「デザインとは何か?」を自分なりに考えた時期があった。

卒業するとき、先生にもコネがないとうちのような学校から工業デザイナーとして就職できるわけがない。
とまで言われていたことがひっかかっていたのもある。
また当時、地方ではまだまだ就職=終身雇用という考えが幅をきかせており、転職は落ちこぼれがするものというイメージさえあった。

この中にあり、自分の道は自ら切り開くしかない。
そのために、わらをもすがる思いだったのだろう。

そのデザイン概論の冒頭に、工業デザインで必要とされる知識の範囲をグラフにした物があった。
真ん中に「工業デザイン」があり、その周りを囲むように、マーケティングや設計など様々な知識が幾重もの輪になっている図だ。
非常にわかりやすい図であったが、その広範な知識に圧倒された。

それから、ありとあらゆる本を読むようにし、ありとあらゆる体験から学ぶようにした。
その会社はプラスチックの製造会社であったが、幸い部屋の隅にほこりをかぶっり、ここ数年は誰も触っていないようなプラスチックエンジニアの本があったので、その本から読み始め。
休憩時間には、「デザイン概論」を読み、何も本が手元にないときはスケッチをしたり、そのあたりにある機材のカタログも隅々まで目を通した。

後に転職してからも、いろいろな本を読み続け、知識を広く吸収するために一日中、大きな書店の隅から隅まで興味ある本を探していたこともある。
幼児向けの本、料理本、宗教書、科学、参考書、辞典、小説、伝記など、ノンフィクション、フィクションを問わず知識を吸収することにどん欲になっていた。
また知識をさらに広げるために読んだ本に載っている、参照文献、本のカタログなどにも目を通し、必要であればそれらの本も読んだ。

ある一つの事についてしっかりとした知識を得るには、関わる歴史、関わった人物の事など直接関係ない枝葉の知識を読むことが必要と考えていたのでこの読書法には拍車がかかった。


そういった読書を続けているうちにある一つのことに気がついた。
学生の時に習い続けていたばらばらだった教科が、ひとつにつながって感じられたのだ。
数学も歴史や人と深い関係があり、音楽や詩と関係もある。
一つとして個別に切り離せる物はない。
なにより、それまで無駄と感じていた歴史や社会の教科の重要性に気がついたのは自分にとってうれしいことだった。
(記憶が苦手でそれらの二つの教科は長い間、苦手教科だった)

それに気がつくのに人生の20年以上を費やしたことになる。
だれもそれに気がつかせてくれる人はいなかった。

それからは、今まで自分が身につけた知識がすべて役に立っていることに気がつき、
また自分の知識がまだまだ足りないことにも気がついた。

その後も、興味ある分野にしぼって、多くの本を読んだりして自らのキャリアアップに役立ててきた。
狙いとする分野に集中して、その分野でそこそこ働けるほどの知識を得るようにしてキャリアアップしてきた。


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この話を出したのは、たまたまYoutubeで
「勝間和代さん 無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法を語る 」という動画を見つけたからだ。

様々な経営などに関するHowTo本を書いていて、有名な方だが、私自身、勝間和代を信じているわけではない。

自信の経営学における知識を駆使して、やっていることは自分のもうけにつながる様々なHowTo本を書いているだけであり、
その成功哲学を駆使して何か大きな事業で成功しているとは言えないからだ。
(ライターとしては成功しているのかもしれないが)
まぁそもそも事業で大成功している人は忙しくて、こうも本を書いたり、マスコミの表舞台には現れたりはしないだろう。
本が売れていること言うことで、マーケッターとしては見習うべきかもしれない。
1歩ゆずれば、まぁ理想論であるなら、それを真に受けて成功するなら勝間氏本人が成功しているかどうかは関係ない。
理論とそれを書いた人とを切り離して考えれば良いだけだ。

さて、このyoutube動画、実は5秒もみてない。

タイトルの「年収10倍アップ」というのを見て、いろいろと考えただけ。

年収を10倍アップするには、今と違う考え方をしないといけない。
少なくとも、収入を二倍にするには異なるアプローチが必要である。

そのためには今持っている知識では、太刀打ちしにくくなっていると言うことだ。
無意識のうちにそのことに気がついているのか、最近いろいろな本を読んでいる。

自分の段階を一段あげるには、その基礎となる知識を大量にいれておく必要があるのかもしれない。
今一段階上に上がれないのはその段階に必要な知識を得ていないからだろう。
そして、今がそれを得る時期なんだろうなと思った。

それからこのように知識を得ることだけで、いままでなんとかしのいできたが、これは時間がかかる。
 これからは、このようなやり方だけに固執するのではなく、今までにやってなかったやり方も身につけて、拍車をかける必要があるだろう。

がんばらねば

2010年6月26日土曜日

地方でのCG制作についてのアンケート

元アニマの3DCGアニメーター 永源一樹氏が「石川県産業創出支援機構(ISICO)」に提出するため、

 地方でのCG制作についてのアンケート
 (〆切 2010年7月20日)


への協力を呼びかけています。

そもそも、なぜ石川県かということについて、氏のブログ「いなかで しー じー」から引用します。
  
 石川県として今、そういうことにすごい乗り気なのですが、 
如何せん情報が集まってこない、現場の人たちの声が聞けない 
というのが悩みだと仰ってました。



一地方なので、関係ないと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、もし石川県でCG業界に関する何らかの試みが行政により行われ、それが成功すると、ほかの地方や首都圏の行政でさえ右へならえで、これから先に大きな変化につながってくる可能性もあります。

 石川県に、直接関係はないですが、神戸市のアニメーションに関係した活動もその一つの良い例といえるかもしれません。

永源さんのブログでも、行政は数字を重視すると書かれています。
数字とは現実を反映しているからこそ、行政が動くわけです。
石川県で、将来なんらかの行政の試みが成功すれば、そこに具体的な数字(行政の効果)が生まれます。

(もちろん、絶対に、良い結果になるとは限らないのですが、)もしよい結果であれば、いろいろとただ意見を述べたり、提案をするだけよりも、はるかに説得力のある数字のデータが生まれます。
 それは、ほかの行政を動かすための重要な情報となり得ます。

 そして何より、良い結果につながる良い方策を生み出すには、現場の声が必須です。
だからこそ、個人的には、このアンケートは非常に重要だと思います。


氏も述べているとおり、これが直接、行政を動かすことにつながるかどうかはわかりません。
実際、こういったことは提案してそれがそのまますぐに受理されることは、よほどの事がないとありません。
だからといって、それが無駄になるわけではなく、こういったことを継続して、いろいろな角度から活動を続けていくことで、やっと真意が伝わるのだと思います。
行政は、CG業界がどうであるかということについては、現場で働く人たちの数パーセントも把握してないかもしれません。
こういった地道な活動を続けることによって、やっとこちらの真意がつたわるのだと思います。

 私が行った、「ハリウッドVFXを日本で・・」の活動も、ほぼスルーでしたが、行政の目にとどめることはできたとは思いますし、個人的には、当初の狙い通りの結果とも言えます。
 行政を、巨大なダムとたとえるなら、その大きなダムを崩すために、最初は針の穴ぐらいしかつくれないかもしれません。
しかし継続して、そして徐々に大きな打撃を与え続けることで、それらを崩すことができるのではないかと考えています。
ダム崩壊と行かなくても、ひびを入れて水が漏れるだけでもいいんじゃないかと思います。
ダムに水が漏れ始めるって言うことは「無視できない」ってことですから。

ぜひ、このアンケートに参加して、自分達の意見を伝え続けましょう!!
そして、知らない人もまだたくさんいますので、是非ツイッターやブログなどで伝えてください。

自作ステディカム(その2)

今日、早速近くのお店で、蝶ネジをかってきました。
余っていた木材を継ぎ足し、おもりが支点より後方まで届くようにしました。
このネジによる固定は意外と便利で、いろいろと腕の角度を変えて試すことができました。

写真ではわかりづらいですが、下のグリップを持っているだけで、上部の板が水平に保てるようになりました。

昨日、エントリを投稿した後にも調べてみたんですが、結局の所、片腕のヤジロベエと同じ原理であるということがわかりました。
よく考えればわかることで、恥ずかしい失敗でした。
 

また、やじろべえの重要点としては、支点の真下に重心がくること
機能はこれが無かったために、バランスをとることができませんでした。
この片腕ヤジロベエでバランスをとるには、腕の先端を支点の下かやや後方まで伸ばす必要があるようです。
また、重心が支点より下にあることで、元に戻る力が発生しています。

さて、カメラを使って動画撮影をしてみたところ、なんとなくステディカムっぽさは出てきました。
しかし、実用にはほど遠いできです。

カメラが揺れ続け、馬の背中に乗っているか、船の上に載っているような映像で、カメラ酔いしそうです。
その中でもまだ、ましな方だったのがこれ。
(ちなみにうちのアパートではありません)


今回の反省点は
1)ローリング(左右に傾く動き)が歩いているうちに激しくなる。
2)ピッチング(頷くような動き)が歩き始めに発生しやすい。
3)方向を変えるときに、カメラの向きがかわらない(ヨーイングの調整ができない)。
と、以下の3軸に関する問題です。

重くすれば解決するかと思い、カメラ側と、アーム部におもりを追加しましたが若干の改善は見られる物の、さほど改善していません。


いろいろアームの角度などを調整していてわかってきたことは、アームが前方に張り出すと、(当然ながら)重心が前方に移動する。
またカメラの位置は意外と重要で、微妙なずれで傾いたり重心がかわる。
特に左右の位置で傾きが意外と変わる、もしかしたらこのことがローリングに関係しているかもしれない。

ほかにもいろいろなサイトを見てみると、
●ヨーイングの調整にはブレーキの役割をする物が必要で、指をつかったり、簡単な仕組みを使う人もいる。(これは高価なステディカムでも、そうするようだ)
●ユニバーサルジョイントを使うと調整がききやすいらしい。
●操作側が不慣れ(揺れはスキルで何とかするのか?)という話もある。
●アームが軽い方が良い。従ってアルミ材を使う人がいる。

この実験バージョンでは、そろそろ限界かなとも思います。
別バージョンで、アームの軽い物を作ってみる方がよいかなと思っています。

2010年6月25日金曜日

自作ステディカム(その1)

予定していた仕事が突然なくなって、急遽就職活動しつつ、家では時間があるのでこんなものを子供と一緒に作っていました。
(仕事がないものはいくらあせっても無い。最大限に就職活動に労力を使う必要は、ありますが、無駄に悩んでも仕方がありません。)



いよいよ本格的にMelスクリプトどころか、VFXからも道を踏み外し始めたなと思われるかたもいるかもしれませんが、まるっきり外れてはいないと、言い訳させてください。

写真をみて、もうおわかりの方もいるかもしれませんが、今回トライしたのはこれです!
 

 ご存じない方も、映像を見ればご理解いただけると思いますが、手ぶれの少ない非常に安定した映像をとることができます。
(注:ステディカムを使えば 誰でもこのように撮影できるというわけではなく、ぶれの少ない安定した画像を撮るには慣れがある程度、必要だそうです。)

私がステディカムの存在を知ったのは、スターウォーズ・ジェダイの復讐。
スピーダーバイクのチェイス・シーンのメイキングを読んだときだ。
 当時、映画用カメラと言えば、かなり巨大な物が多い中で、それを手持ちで撮影することができることにまず驚いた。
スピーダー・バイクのシーンでは、森の中を歩いて撮影し、高速で飛行する効果を出すために、コマ撮り技法と低速度シャッターを使いスピード感を出したという。



ステディカム自体はジェダイの復讐で初めて使われたのではなく、歴史は意外と古く、「シャイニング」で、廊下のシーンや、最後の迷路のシーンなどで使われ一躍有名になったらしいのですが、そのときは知りませんでした。
 

ステディカムの存在とそこから生み出される自由自在に動く映像を見たときに、これならドリーなど不要になってしまうんじゃないかとさえ思った。

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さて、いくら小型といえども、当時のステディカムはまだまだ大がかりな物というイメージが大きかった。
しかし、上動画の「ステディカム・マーリン」は小型のハンドヘルド用に開発された物で、その構造のシンプルさから、まねをして自作する人が多く、自作ステディカムの代名詞といってもよいほどです。


このハンドヘルド用ステディカムの普及率は、かなりのもので最近はiPhone用のステディカムが発表され話題となりました。
http://www.tiffen.com/smoothee_home.html

映像の安定性という点では、大がかりな物には劣るようですが、アマチュアや家庭用としては十分とも言えます。

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さて自作ステディカムですが基本的には
1)やじろべえのようにバランスをとる部分
2)支点で支えるジンバル部

から構成されます

自作ステディカムの作例を見てみると、ジンバル部には、通常ボールジョイントや、ユニバーサルジョイントが使われ、アーム部は金属や塩ビパイプ、木など人それぞれです。

今回は本格的に作る前に、原理の検証のために、手元にあった木材で作ることにしました。
原理の検証のため見た目は、まったく考えていません。
カメラも両面テープで固定しています。
材料費は、以前からあった物だけを使ったので、新たにかけた費用はゼロです。

アーム部も、手でノコギリをひいて板を切っているので、よく見ると波打っています。
ちょうつがい部分は、3mmの穴を開けて、竹ヒゴを通して作っています。
ドリルの刃も竹ヒゴも先日、帰国時に購入した物で、早速活躍してくれました。
おもりには、25セント硬貨を使い、おもりを入れるカップは子供用の風邪薬を計量するカップをピンで止めています。
ジンバル部は、ヤジロベエと同じで、3mmの竹籤の先をとがらせた物をつかい、グリップ部のトップに少しへこみをつけて乗せているだけです。
なので、バランスが崩れると落下します。


さて気になる結果ですが、大失敗です。

バランスをとることができず、安定しません。

その一つの原因として、アーム部がおもりによってどんどん下がっていき、それによりバランスが変わることがあります。
アーム部の固定は意外と重要で、少し角度が変わっただけでバランスが崩れます。
ピンと輪ゴム、テープなどで固定しましたが、それでは変更したいときにうまくいきません。

当初の予定では動かない予定でしたが、やはり竹ヒゴの軸だけでは限界があるようです。
これはネジなどでしっかり固定する必要があるようです。
(参照:科学的に安全なホウキの乗り方?


カメラの固定は今回、両面テープをつかましたが、以外とわずかな位置の差でバランスが崩れるので、左右前後に0.5mm程度の単位で移動できる方法を検討する必要がありますが、これはまだ先でもよいでしょう。

また、詳しくは調べてみないと正しいかどうかわかりませんが、
安定させるためにはカメラは支点の上にあること、アーム先端のおもり部分は支点よりも後方(撮影者側)まで伸びていることが必要なようです。

次回のバージョンまでの改善点は、
1)アーム部を蝶ネジで固定する。
2)アーム部にもう一関節追加し、おもり部分を後方まで伸ばす。

の二点です。

これが、うまくいったら、次はジンバル部にユニバーサルジョイントなどを使ったバージョンを作ってみたいですね。

2010年6月24日木曜日

エントリ「はやぶさ(まとめ)」に追記

先日のエントリ「はやぶさ (まとめ)」にNECで開発を担当された萩野氏について述べた部分がありましたが、萩野氏がはやぶさの解説をしている動画(NECの公式動画)がありましたので、追加しました。

仕事(その後)

実は火曜日でCMの仕事は終わりました。
約3週間nClothと格闘してきましたが、ほどほどに使いこなす自信はつきました。
まだ100%なんでも作れるというわけにはいかないので、このあたりは要 勉強です。

最近は、中規模以上のエフェクト・ハウスでクロスシミュレーションのアーティストを募集することが多いので、もう少し勉強して応募できるレベルにもっていけたらと思います。

「おはなし」の効果と映像教育など

今日は子育ての話です。
子供のいない方、子育てに興味のない方には、さほどおもしろい話ではないと思いますが、将来のために読んでもいいかもしれません。
直接的に仕事に反映するわけではないのですが、自分はこういった事柄の中にも人間が映像を捕らえる仕組み、ストーリーテリングの秘訣があるのではないかと思って、経験を大切するようにしています。


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お恥ずかしい話だが、最近、子供(4歳)が鼻そうじして出てきた放射性物質を口の中に入れるようになった。

幼稚園で他の子がやっているのを見てまねをしているのかどうかはわからないが、何度も注意しているのだが親があわてるのがおもしろくて、余計にやる始末。
どうしようかと、思案に明け暮れていたが、あることからぴたっと止まった。

それまでは、「ばい菌があるからおなかが痛くなったり風邪を引くよ」と注意してたのだが、すぐにそうなるわけでもないので「ならないよ!」「入れてもならなかったよ!」などと反論されると、答えに詰まってしまい、それ以上うまい方法が思いつかないので、半ば強制的に「やめなさい」と言っていた。
まぁ、そうするとそのときは言うことは聞くのだが、一時的な物であるし、自分の意志でやっているわけではないので、目を離すとやっている。

幸い、理解するとちゃんとその通りにするので、何とかうまい方法はないかと考えていた。
(この点が、子供がいない人にはわからない苦労ですねw、まぁこれはこれで楽しくもあるのですが。)


さて最近、時々寝る前に乳母車に乗せて近くを散歩している。
途中にユーカリの木が植えてあるアパートがあり、その下を通ると良い香りがする。
ユーカリは、アロマテラピーや除菌に使われる精油がつくられる種類もある)


数日前にその下を通ったときに、いい香りがすると言うこと、それがユーカリの木であることを話していたので、自分から「ユーカリのにおいがするね」と言い始めた。
「どうしてユーカリはいいにおいがするの?」と聞いてきたので、これはいいチャンスかもと思い以下のような話を速攻で作った。


「昔、ユーカリはとてもくさかったんだ。
どうしてかわかる?
鼻○ソをたべてたから。
だから友達は、くさいからあそんでくれなかった。
みんな、「ユーカリ君は鼻○ソを食べて汚いから遊ばないよ」といって誰も遊んでくれなかったんだ。

ある日、ユーカリは鼻○ソを食べるのをやめたら、くさいにおいがしなくなり
いいにおいがするようになった。

そして、友達も、いいかおりがするねといって遊んでくれるようになったんだ。
それからもユーカリはどんどんいい香りがするようにして、
友達が、いっぱいいっぱい増えたんだって。」


というお話をした。


するとこれに、うまく反応してくれた。
子供:「○○(自分の名前)も、鼻○ソ食べるのやめたら友達いっぱいできるかな?」
(別に本当に食べていたわけではないのだが、口に入れるのを「食べる」と呼んでいたのでこう言っている)

自分:「できるよ」

子供:「じゃぁ、食べるのやめる


なんと、それからはぴたっと食べるのをやめた。



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子育てをしている方なら「お話」の重要性は、知っている方が多いと思う。
知らない人には端的に説明すると、「心の成長」には不可欠と言われている。

うちではDVDやTVは使ってないが、その代わりに絵本を充実させるようにしてきた。
今回のように時々、即行のお話をしたりもしてきた。

シュタイナー教育では、さらに絵本さえイメージを押しつけることにもなるので避けている。
またメディア(広い意味での情報伝達媒体、紙の本や音声のみのオーディオも含む)を避け、人から人へ伝える伝承的なやり方を主体としている。

そして、子供はそんなストーリーの世界から、やってもいいこと悪いこと、生活習慣のことや人間関係のことなどを学んでいく。
TVなどの映像だと、受け身になるので自らの創造力を十分に発揮できず、自らの意志が育ちにくいという説もある。
(これが乳児ほど小さいと、周りの世界を知ることにつながる「わらべうた」ということになる。)


うちではその考え方から、映像は利用しないようにしている。
しかし、最近は「しまじろう」のDVDをはじめとする、幼児教育の質の良い映像がたくさんあり、自分の子供より小さい子供でもしっかりしていたりする。
一時は、その力に、映像教育も必要か?と思ったこともあるが、ある理由から映像の力は借りないで続けてきた。




実際には、いろんなお話やら絵本やらで、生活習慣(歯磨き、お風呂など)を理解させたり心の成長となるように努力してきた。しかし生活習慣に関しては、どれもいまいちで、うまくいった試しがなかく、最終的にはいろいろと説得しなくてはならない。
それでも聞かないときは強制という手段になる。

個人的に、その原因の一つはリアリティーがないということだと思っている。
虫歯になったことがない2歳程度の子供に、歯磨きの重要性を認識させることは無理。
虫歯にならないようにと、いろいろと説明しても限界がある。

子供のリアリティーというのは個々で大きく異なるので、市販のものがすべてぴったりというわけにはいかない。 (低年齢ほど、個々の子供の独自性が強いように思う。)
実際、鼻○ソを食べる子供にそれがいかに悪影響を与えるかという絵本を探そうと思っても ほぼ不可能に近い。
多大な労力を使って見つけたとしても、その内容、絵柄などがその子供にぴったり合っているかどうかは、また別の話になる。


この点は映像教育でも、「おはなし」教育でも変わらないとは思う。
違いとしては、映像教育の場合は、子供の興味を引きつけるためのアニメーションなどが工夫されている。

(映像教育を受けてきた子供に関しての実例は1~2例しかしらないので、私自身、映像教育について語るほどの経験も知識も持ち合わせてはいないことをお断りしておきます。)
「おはなし」の場合は、その子供の創造力に依存する。

ただし、映像教育が「子供の興味を引きつける」というのは、「アニメーションやキャラクタのおもしろいリアクションや動き」に対してである。
 これが、そのことの重要性を理解するために役に立っているのかどうかは別の話ではないかと思っている。
ある事柄を理解させるために、違う部分に興味を引いてもしょうがないのではないか?とおもってしまうのだ。
しょうがないどころか、子供によっては関係ないところだけが印象に残り、悪影響になるのではないかとさえ思ってしまう。
何より創造性が育つ機会を失ってしまう。


そして、TVは子供の注意を文字通り固定してしまう。
以前おとずれた、LAのモンテッソーリ幼稚園のいくつかでは、この様子をゾンビ-と読んでいる。
自分が、いつも思い出すのはダーククリスタルで、ポット族が精気をすいとられる以下のシーン(1:15ぐらいのところ)だ。


まぁ話は多少ずれるのだが、早期の幼児教育は文字教育を含めて、エイジング(年を減ること)の弊害をもたらすというので、あながち上記の映像もまとはずれでもないかw
(参照:ニュージーランド子育てあいうえお 「シュタイナーのお話し会」)


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それにしても、4歳ともなると、いろいろな経験が蓄積されてきている。
3歳と4歳、4歳と4歳半でも大きく異なる。
これは量もそうなのだが質がちがうというほうが当てはまっているかもしれない。
特に友達との世界は確実に広がる。
2歳頃に言葉の爆発期があり、突然、非常に多くの言葉を話すようになる。
その時期があまりにもすごいので、その後少し停滞するように感じるが、4歳半にもなると想像でその場にない物でも話したり、時制の概念がしっかりしてくるので、「おはなし」の中の場面もイメージしやすくなるようである。


うちの子も、つまはじきにされた経験、友達と遊んで楽しかった経験などがあったので上記の「ユーカリの話」は効果を発揮したのだと思う。

それと共に、「お話」の効果がすばらしい物があることを再認識した。
特に、絵本とかではなく、のんびりリラックスしているときに、
文字通り口だけを使った「お話」にすると、その内容を想像力を働かせて聞いており、自らの中に吸収しやすい。
そして、そこにあるいろいろなルールなどを理解するのも簡単なようだ。
何より、自らの意志で自らの行動を決めることができるのは、子供自身のためにも良いと思う。



今日は、おきまりの遊び場、サンタモニカ・エアポート(映画「2010」で主人公が小型飛行機に乗って飛び立つ空港) に行き、遊びに来ていた現地の子供と一緒にあそんでいた。
そのときある子供が同じように鼻そうじをした指を口にくわえていた。
その子の、お父さんはすかさず注意していたが、これからしばらくはそれをやめさせるのに苦労しなくてはいけないんだろうなぁと多少同情したw


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余談だが、子供が育つ過程でいろいろと、しつけとして強制されたことや説明されてきたことは、そのときには効果を発揮しなくても後から徐々に効いてくる。
重要なのは継続すること。そして一貫性を保つこと、感情的にならないで適切に処理すること。
今は無視され、効果を発していないように思っても、子供は親のしてきたこと言ってきたことを細部に至るまで、ちゃんとわかっているし、忘れない。
これらを続けていれば、必ず2年後、3年後にはその効果を感じるときが来る。
小さいお子さんをお持ちの方で苦労されている方は、自分の子供のことを信じ、暖かく見守ってあげてほしい。
できれば、ほんの少し自分で決断できるように手助けしてあげられるとベストだと思う。

2010年6月23日水曜日

シコルスキー H-5「ドラゴンフライ」

とくに航空機マニアというわけではないが、同年代で小・中学生のプラモデル三昧ですごした人たちには近いほどの知識はもっている。

今回、写真ブログ「plog」の「On War: Korean War 60th Anniversary」をみていて、ふと65番の写真が目にとまった。

剣道の面を連想させる特異な形状のコクピット。
両脇に突き出た太いハネのような物。
荒れ地とミスマッチな、1950年代のSF的なデザインを思い起こさせるスタイリング

「一体このヘリコプターは何だ!」と、非常に気になり調べてみることにした。
特に、(後でコクピット後部のドアがあいているとわかったのだが)コクピットがまるでカプセルのように独立して見えたので、余計に気になった。



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探す
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今回、この機種を探していく過程を記録してみた。

実は以前に飛行機のモデリングをしたことがあるのだが、かなりマイナーな機種で機種の絞り込みに苦労したことがあった。
明確な資料がない場合は、できるだけたくさんのアングルとクローズアップの写真が必要となる。
そのためには、正確な機体の知識がないと、写真に撮られている細部が、自分がほしい機種のものか、それとも違う機種の物なのか?
近年追加されたものか?オリジナルの物かなどが判断できない。
さほど、正確性が必要ない場合はよいのだが、機種の確定は、できておいたほうが、後で資料を探すときに非常に楽になる。


まず、最初の手がかりは、この写真の説明文にある「3rd Air Rescu」(第三レスキュー飛行隊)というキーワード。
今でも、その活躍を伝えるホームページがあるが、そこにある写真には該当機をみつけることはできなかった。


次に見つけたのが「All the Worlds's Rotocraft」というサイト
歴代のヘリコプターならほとんどのものがここで写真付きで見ることができる便利なサイトだ。
ここで見つけることができた。

実はここでも最初、見つけることができずにTwitterでヘルプを求めた。

しかしながら、つぶやいた直後に見つけることができた
 (RTしていただいた方、解答してくださったかたありがとうございます。)

ヘリコプターで有名なシコルスキー社(アメリカ)のものとわかった。
(シコルスキー社がロシア名なのは、創設者がウクライナ生まれで、ロシア革命の時にアメリカへ亡命した人だから:Wikipedia

機種名としては、Sikorsky S-51 / H-5 / HO3Sなど、いくつかある。
細かい違いはよくわからないが、XR-5という試作機に始まり、いくつかの派生型がある。
S-51 / H-5 / HO3S の3タイプは、民間向けか、軍隊向けかの違いはあるものの、基本的に同じ4座型の同じ機首を違う名前でよんでいるだけのようである。

写真にあった通り、朝鮮戦争では救難活動に大活躍し、それがもとで有名になったらししい。(Wikipedia
前線を超えたところで撃墜された兵士の救出などにも利用されたということで、その姿からは想像がつかないほどの活躍ぶりである。


日本にも同型のS-51が輸入され、自衛隊や、東北電力などで活躍したらしい。
参照:サイト「ヒコーキ雲
ページ:「東北電力のウエストランドシコルスキー S-51の変遷

また、朝鮮戦争でのこのヘリコプターの活躍は「トコリの橋(1954)」という映画でも描かれていることがわかった。
この動画の3:30あたり


画質が悪いがどんな状況で使われていたかがわかる動画(同じ映画)



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機種の検証
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さて、この機体の正確なタイプは何だろうか?

Wikipediaによると、1946年に90機のHO3S-1がアメリカ海軍に配備されている。
1948年には救難任務に特化したのはH-5Gが39機、フロートを装備したH-5H水陸両用機が16機、追加生産されている。



両脇に飛び出たタンク状のものが最初フロートに見えたため、水陸両用機かと思い、H-5Hを調べてみたが、二つの写真がみつかった。
ひとつはSikorsky H-5 Dragonfly Helicopter w/ Floats

もうひとつは、H-5Hと表記されているが、機体に出っ張った部分があり、フロートがついてない機体。 

どちらを信用すべきかはわからないが、このエントリ最初の写真の機体にあるでっぱった部分と比べて、フロートは、形状も位置も違う。
(ちなみに、WikipediaによるとH-5HはH-5Gのアップデート型であり、フロートが必ずついているとは書かれていない。)

そこで、考えつくのはこれはけが人などを運ぶタンカがわりのケースではないかということ。
当時としては、かなり未来的な感じがする形状ではあるが、1951年なので、ないとも言えない。
そして、それはその通りであることが、いとも簡単に証明された。

質の高い航空機写真、飛行機に関するたくさんの情報が掲載されているairliners.netからカナダ空軍の同機体写真を見つけることができた。

また以下のページによると
サイト:rotor&wing 「Like An Angel Came Down to Get Me 」
これはアルミニウム製のポッドとのことだ。(機体はH-5)

Wikipediaを見直すと、まさに「第三レスキュー飛行隊」で使われた機体写真があった。
ただし、この記述ではH-5としか書かれておらず、それ以上の詳細はわからない。


レスキュー専用機であるH-5Gの可能性もあるので、そのあたりを調べてみた。
H-5Gに関して明確な記述がある写真はAirliners.netにいくつか見つけることができる。
写真1写真2写真3写真4


みればみるほど混乱してくるのだが、おそらく、機種の表記自体が曖昧な部分がある(撮影者/投稿者の思い込み)のかもしれない。

コクピットの足下の窓がふさがれているものが大半で、そこにはライトが埋め込まれているように見える。
下のプラモデルパッケージがわかりやすいが、もうひとつの特徴としてウインチがあげられる。
このパッケージイラストは下部の窓はオープンだが、ローターの付け根あたりにウインチがあるのがわかる。
救難目的ということからは理にかなっており、おそらくこれらのウインチがついた物や、ライトがついた物がH-5Gとよばれる救難に特化したものなのかもしれない。

もしかすると用途によって、いくつかのバージョンが存在するのかもしれないし、
ひょっとすると、ノーマルのHO3S-1に後からウインチをつけた物なども存在するかもしれない。


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しぼりこみ
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H-5というタイプ番号は、R-5, S-51, HO3S-1などと言い換えられており、意外と曖昧である。
元々、気になった写真をみると、コクピット下部のライトやウインチはない。
可能性はぬぐいされないが、H-5Gの可能性は低いとも言える。
またフロートや機体横の出っ張りもないことから、H-5Hではない可能性もある。

時期的にはHO3S-1が大量導入された後であり、Wikipediaの写真にも同時期、韓国に配置されたHO3S-1の写真が掲載されているので、HO3S-1かもしれないと思った。

しかし、Wikipediaに掲載されている第三レスキュー飛行隊の写真とその説明は、National Museum of the US Air Forceが出所であり、写真の出所からすると空軍である。
HO3S-1は海軍へ配備されているので、そうすると空軍所属のこの機体はHO3S-1ではない。

ということは11機が配備されたR-5Fである可能性が高くなる。
R-5Fは1946年当時の呼称であり、後にH-5Fと呼称変更されており、写真がとられたのが1951年であることと、写真説明の記述であるH-5とも一致する。

問題の、どのH-5であるかということだが、上記の写真から推測すると外観からみてH-5G、H-5Hである可能性は低い。
しかし、H-5Gは、H-5Fに救難装置をつけたものであることから、タンカ(アルミ・ポッド)が救難装置ということになればH-5Gとうことになる。
時代的にはH-5Hのフロート無しという可能性も捨てがたい。

結論としては
H-5F(一番可能性が高い)
H-5G(二番目に可能性が高い)
H-5H
のうちのどれか、という歯切れの悪い結末となった。

窓の形状や、細かな部品の有無などから推測していくこともできるが、そこまで調べる必要も中田ので今回は調べていない。


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ほかにもこの第三レスキュー飛行隊のH-5の写真があった。
(以下の写真は全て第三レスキュー飛行隊)
アルミ・ポッドが使われている写真もある。


これらの写真をみると(特に最後の物)、アルミ・ポッドは、片側につけられていたことが多いようだ。
最初の写真では、両側についており、けが人が多いことが予想されていた作戦だったのかもしれない。


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おまけ
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映画「ラドン(1956)」にもラドンの巣を見つけるために登場するらしいが、あいにくその映像を見つけることはできなかった。

下の動画は、アメリカ版ラドンの予告編。H-5は出てきませんがミニチュアワークがすごいので掲載しました。山の崩れる所など、今見てもすごいですね。
ちなみに日本版ラドンの予告編にはミニチュアワークが出てくる場面は少なくなっています。

この違いから、日本人は人の驚く様子や反応を見て、アメリカン人は、派手なディザスターが好きなのかなと勝手に想像しました。



プラモデル
参照:なまこ日記(仮)



もうひとつ全然関係ないけど、印象に残ったので。

2010年6月22日火曜日

オープンソースプロジェクト 「OPENCODE」 

ダンデライオン・アニメーション・スタジオLLCが始めた CGプラグインやツール類を、共有するオープンソースプロジェクト


 日本における「CGアニメ長編映画やCGアニメテレビシリーズ」などを
複数のCGプロダクション間で共同・分担して制作するときに、
可能な限り円滑に制作する為のインフラを作りあげる」ことを目的としています。



よく話題になる、CGパイプラインの整備を主目的とした「Open Code」、そして、セットアップ・アニメーションに関わるツール類「Collage」の二つがあります。

また、Mayaやセットアップだけにとどまらず、プロジェクトにおける技術ボトルネック全体を無くす事を目的としているということで、かなり本格的な活動が期待できます。



パイプラインというと、Hiroshi Chiyamaさんの「パイプライン専門チーム構想」を思い出しますが、そちらも徐々に進んでいるようです。

両者に何か関係があるのかどうかは、わかりませんが新しい動きとして、期待が高まります。
ダンデライオン・アニメーションのほうは、プロシューマー(生産消費者)的な活動と捕らえることもできます。

最近はSONYなども、自社開発品のソースコードを公開したりと、個人だけでなく企業としてのプロシューマー的活動が盛んになってきています。

ぜひ、「OPENCODE」は、軌道にのって、ほしいですね。

2010年6月19日土曜日

CAT SHIT ONE!! 公開決定

ついに公開決定2010年7月17日( 土 ) ~ 9月20日( 月 )! しかもYoutube!!



しかし、喜んだのもつかの間、日本国外では、
「お住まいの地域では著作権上の問題で権利所有者によりブロックされています」となり、見ることができない。

そう日本に住んでいる方は上の動画が見れるはずですが、海外にいる人にはみれません。
(何とか探してみたところ、ニコニコ動画に投稿されていました。)

しかたがないので、前回の予告編を


(別バージョン)



予告を見た感じでは、かなりアクションにリアリティーがあり、期待させられます。
原作がHobby Japan誌などで、戦場劇画を連載していた「小林源文」さんなのでかな、と思ったのですがアニメ版は原作とは違うようです。
それにしても予告を見た限りでは小林源文さんのリアリティーある描写を連想させるほどいいできですね。

小林源文氏の公式HP

ちなみにアメリカが「うさぎ」なのは
USAGI= USA GI
だからだそうだ。


フルCGアニメというと子供か家族向け、もしくはティーンに対象をしぼった作品ばかりのハリウッドに比べて、かなりハードコアな内容になっている。
「低予算」、「アニメ」という日本の得意とする部分でハリウッドには作れない作品ということでも、これからの受け入れられ方が気になるところだ。
Youtubeで公開された予告も、海外での評判はとても大きい物だった。
実際に、前の会社でも結構、好評だった。


こういう分野は、まさに日本独自というか、非常にユニークな作品である。

CMの仕事

Methodでの最初のCMの仕事ですが、今日、最後の大きな手直しと思われる修正がはいりました。
主として細部のデティールアップ。
クロスシミュレーションをやり直す必要があり、結構時間がかかりましたが、休日出勤はさけたいので何とか終わらせました。
まぁ、この時間(12:30)で終わるならOK.でしょう。

今回はnCloth中心でやってましたが、ずいぶん勉強になりました。
キャッシュを元にブレンドシェイプを作り、ブレンドシェイプのウエイトマップ・アニメーションでごまかして、最後はジオメトリキャッシュしたものに、ジョイントをつけて微妙な位置合わせ。

nClothは、以前は、まぐれ的なアトリビュート操作でしたが、今はすこしコントロールが効くようになってきました。
まだまだ勉強すべきことはあるのですが、少し自信がつきました。

プロのエフェクトアニメータになるには、すべてコントロールできるようにならないといけませんが、エフェクト系はケースによってはチュートリアルでははがたたないし、ヘルプもそのままでは役に立たないこともあり、創意工夫が必要です。

ジャンボジェット機のパイロットが着陸するのにフラップをどれぐらい下げたらいいかとか、着陸脚を出すタイミングはこれぐらいでいいかな?などと試行錯誤はしないでしょう。
まぁ、エフェクトはルーティーンワークではないのですが、やはりプロを名乗る以上は、すべての部分をコントロールできるようになりたいところです。


約3週間弱の仕事でしたが、いろいろと勉強になりました。
今回はレンダリングに関係する部分は他の人が担当してくれたので、エフェクトに集中できてよかった。
反省点としては、パイプラインがちゃんと運用できなかったので、次回にはマスターしたい。
 
今日、次の仕事になるかもしれないプロジェクトの話をシニア・アーティストが少ししてくれたんですが、またMayaになりそう。
もしかしてCM部門ってMayaだけ??
まぁ、それでも勉強になるし、プレッシャーかけられてもデモリールに乗せられるような良い物ができるので、結果としては満足できます。
 いままで、長年やってきたのは、やはり時間の無駄になっていた部分はあるなと思いました。

質的に良い物が作れないところでは、時間の問題、予算の問題など、いろいろとあると思いますが、結果的に長い間仕事をしても、身につく部分が少ないのかなぁと思いました。

それなりのクオリティーが要求される仕事であれば、きつくても自分のスキルアップになり、短期でも学べることはたくさんあります。

自分自身のせいでもありますが、長年、TVシリーズで、適当にごまかす習慣がついていたのですが、今回は、クオリティーを結構追求させられました。まぁ、エフェクト作業だけに集中できたので、それに応えることができたのはうれしいところです。
おそらくここが一番、勉強になったところかな。
「締め切りも近いし、時間を過ぎるとまずいのでこれぐらいで出しておこう」と思ってその日の成果をスーパーバイザーとプロデューサーに送ると、でティールの追求をされる。
「いやぁわかってるんだけど時間がないでしょ?」といいたくなるのだが、時間はくれるので、まぁなんとかやってみる。
そんなことを繰り返しているうちに、結構質がよくなってくる。


それから、3週間というと、いままでの2~3倍の作業時間で、その間エフェクト作業だけに集中できたたのは、初めてです。 



さて、あとはコンプのほうで、土日にしあげて月曜日にクライアントに見せるそうです。
その時、手直しがあれば修正して今度こそ本当におしまいです。

まぁ、こんなに忙しいですが、合間を見てHoudiniの勉強は続けています。

2010年6月17日木曜日

現在制作中の映画情報

※ 「現在制作中」というのは、私が制作に関係しているという意味ではありません。どこかのプロダクションが制作中という意味です。

スマーフ(The Smurfs Movie)
Sonyが作成中の3D映画。初のトレイラーがお目見え。
ずっと以下の動画のテイストの延長なんだろうと思っていたが、ここまで方向性が変わるとは思わなかった。嫌な予感がする人は私だけだろうか?
このトレイラーは、Sonyのおふざけであってほしい。



こちらが問題ののトレイラー。公開は来年の夏だし、まだまだ作業ができてないからただの紹介にとどめたのでテイストが大きく違う可能性は大。



さて、現在制作中の映画で、いくつかピックアップしてみました。

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「オズの魔法使い」
現在、数社が製作に名乗りを上げている「オズの魔法使い」

ブログ「CIAこちら映画中央情報局です」によると、計7つの「オズの魔法使い」が進行中とのこと。
以下はそのうちの一つらしいです。



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ローガンズ・ランリメイク (旧邦題:2300年未来への旅)
リンク先によると、この映画自体は、1990年代半ばからリメイクが進められていたそうだ。
実際に2004か2005年頃、ローガンズ・ランのテスト映像を制作している友人に未来の町並みの映像を見せてもらったことがある。
年代的に ちょうどブライアン・シンガーが作業をすすめていたころと一致する。
その会社は、その後もブライアン・シンガーの作品に携わっており、信憑性も十分ある。
しかし、いつまでたっても映画の話は表に現れず、いつのまにか忘れていた。
それが最近になって新しい監督を得てリメイクが一気に進むことになったとニュースが流れた。
以下の動画はオリジナル版に出てくるロボット
動画(Youtube)
それにしてもブラアン・シンガーが「ミラクル・マスター」のマーク・シンガーの従兄弟だとは知らなかった。(Wikipedia)


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「エイリアン (前章)」
遊星からの物体X猿の惑星アバターキングコングとヒット映画の「前章(プリクエル)」制作が最近はやりのハリウッドですが、「エイリアン」も!
しかし、よくあるプリクエルと違い、こちらはオリジナル版の監督リドリー・スコットがプロデューサー!
しかも、あのスペースジョッキーの謎が明らかになるらしい
 監督復活なるかと思われた、「ロビン・フッド」はどうだったんでしょう?

今ひとつ、よいニュースは聞かないですが、なんとなく雰囲気重いですし、まぁ大ヒットするような映画ではなさそうでしたね。
エイリアン・シリーズは、ジェームス・キャメロンも言うようにAliansまでしか良い物はなかった。
ついにオリジナルの監督が動き出したことで、新作への期待が高まります。
個人的にはもし「ベルセルク」を映画化するなら、リドリー・スコットか、ギレルモ・デル・トロ、もしくはピータージャクソンにやってほしいです。



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「リアル・スティール」
スティーヴン・スピルバーグとロバート・ゼメキスがプロデューサーのロボット映画

元になったのはTVシリーズの「トワイライトゾーン」シーズン5の「Steel(邦題:四角い墓場)
ロボットが十分活躍できるってのは、「トランスフォーマー」で証明されましたが、「トランスフォーマー」にも携わったスピルバーグが関係するとあって、注目してます。



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「遊星からの物体X (前章)」
来年4月29日公開がきまりました。
着々と進んでいるようです。監督がジョン・カーペンターでないので、あまり期待してはいけないと思いつつも期待が高まります。


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「Fangland」
なんと、そのジョン・カーペンターが動き出した!
バンパイヤの話らしいです。
しかしながら、個人的には、彼の監督したバンパイヤものは、いまいち感が...。
バンパイヤなどの先行イメージがある程度かたまっているものよりも、霊的なものとか、イメージしずらい作品のほうが成功しているようにも思いますし。
なんとか、これで人気が復帰してほしい。

IMDBみたら、
今年は、The price, L.A. Gothic, The Word、そして、ほかにもゼイリブ、エスケープフロームNYのリメイク、Riotなどの製作もすすめているようで、 ちょっとうれしいですね。
しかし、自分の作品二つもリメイクとはジョン・カーペンターらしいですね。
いつも意外性で驚かされたジョン・カーペンター作品、今度はどんなアイデアが盛り込まれているんでしょうか。

L.A.GothicはLAを舞台にしたダークサイド・ホラーの話だそうです。

まったくジョン・カーペンターとは関係ないのですが、Battle L.Aという映画も2011年公開を控えており、LAが舞台の映画がたくさん見れるのは楽しみですね。



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「Battle LA」
ダークナイトで、2フェイスを演じたアーロン・エッカート主演のエイリアンvs海兵隊 in LA映画
現在、 Hydraulxをはじめ、ロンドン、カナダのプロダクションがポスプロ作業をすすめているはずです。
LAには「Battle of Los Angeles」と呼ばれる、空襲を誤認した陸軍による対空砲火をした1942年の出来事があります。
このときにUFOが飛来し、軍隊はそれと戦っていたという説があり、この出来事がアイデアの元になっているのかもしれません。(ただ、映画撮影時のスチール写真を見ると服装は現代風です。)

2010年6月15日火曜日

はやぶさ (まとめ)

はやぶさの最後の一枚


この写真は、まちがいなく、歴史に残る一枚となるだろう。
まるで、イスカンダルから返ってきたヤマトから見たような気分にさせられる。(ヤマトの地球は赤いですが)

この写真には以下のような背景がある。
「7年ぶりに戻ってきた故郷の姿を最後に撮らせてやりたい」、「相次ぐ故障を乗り越えて帰ってきたはやぶさに、その「目」で、もう一度地球を見せたい」
という川口淳一郎教授らが撮影を思い立った。

はやぶさは同日午後7時51分、機体の前面から地球に向けてカプセルを放出後、底面にあるカメラを地球に向けようと、180度向きを変えた。姿勢制御用のエンジンはすべて故障しており、長距離航行用のイオンエンジンの推進剤を直接噴出して、機体を回転させる離れ業を再び演じた。
2時間ほどかけてはやぶさの姿勢を整えて5、6枚を撮影。ほとんどが真っ黒な画面だったが、時間ぎりぎりの最後の1枚に地球の姿が残っていた。約30分後には大気圏に突入し、本体は燃え尽きたとみられる。
日本時間13日午後10時2分に撮影した白黒写真を送信中の同28分、はやぶさが地球の裏側に入ったため、地上との交信が途絶。写真のデータも途切れたが、地球の姿が奇跡的に写っていた。
なお、「はやぶさ」の本体は日本時間6月13日22時51分頃、大気圏に再突入し、燃え尽きた。


最近は何でもキャラクタにするのがはやっているせいか「はやぶさ」も擬人化キャラが出回っている。
そもそもJaxaのTwitterが擬人化した「はやぶさ」からのつぶやきなので公認ともいえる。

個人的には何でも擬人化する(しかも萌え系キャラで)のは、それほどすきではなかったのだが、「すこっち」さんが「drawr」に投稿した漫画は、じんわりとさせられる。

この漫画を見た後で、上の写真そして下の動画を見ると、その旅の苦労と最後の別れの悲しさがよりいっそう感じられる。


はやぶさ再突入動画(5つ) 3:00ぐらいから

ばらばらになり、燃え尽きていく様はプロジェクトの最後を飾る感動的なシーンだ。
まるで花火かのように粉々になり、非常にドラマティックである。
さみしさはある物の、希望は残る。
少し前を先行しているカプセルがよりそれを感じさせる。

スペースシャトルの打ち上げ失敗や再突入失敗などの映像も粉々に飛散しているが、それらと違い悲壮感はない。


「多くの犠牲の元に自己の一部を無事届ける。」もしくは「死から生まれる生」といった哲学的な物も感じる。



昭和の時代に、得意としてきた製品開発でも韓国に後れをとりつつある日本。
プロジェクトXで紹介される時代は、すでに過去だと感じつつあった昨今であったが、
はやぶさの話題は、日本はまだ世界の先陣をきる能力を持っていることを知らしめてくれた。

「日本の高い技術」と評価されているが、むしろそこで働く人たちの粘り強さ、細部に至る気配り、思い切りのある決断が評価されるべきだと思う。
いくら高い技術があっても、すぐにあきらめていてはここまでの偉業は成し遂げられなかっただろう。

計画をひきいた川口淳一郎氏は以下のように述べている
「この計画は欧米と比べても背伸びした計画」。その一方で、世界初の偉業を「幸運」と言う。
「神がかり的だった。今、こうして(成功の)会見の場にいることが夢のよう」とも話した。


絶望的問題が起きたとき、あきらめることもできただろう。
何せ多額の費用はかかっているが人命はかかってない。
まぁこんな大それた計画は所詮、日本の出る幕ではなかったといわれておしまいだ。

それでも、最善を尽くし、様々な策を練り、実行に移したのだと思う。
それがうまくいったということを幸運と捕えることができるのは、まさに不可能を可能にすべく身を粉にして取り組んだ人でないとわからないことだろう。

もし、困難にであったときに、自分は最善を尽くしたと、高をくくっていては困難にであったときに最善策を生み出す能力は縮小してしまう。
ほかにもっと良い解決策はないか?何かほかに策はないか?とたえず追い求め神のいたずらともいえる不幸を、自らの力で変えていく。

これは、このCG業界で海外を目指す人たち、今いる場所で困難な未来に立ち向かおうとする人たちにも参考になると思う。

 はやぶさの飛行距離は、予定外とはいえ、月への往復約8000回に相当する約60億キロに達したそうだ。



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カプセルの回収などのNews
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「はやぶさ」カプセル無事回収、分析へ



「はやぶさ」カプセル回収作業完了! 熱シールドも発見!
日本時間2010年6月14日16時8分、「はやぶさ」カプセルの回収作業を完了

ヘリコプターから撮影したカプセル本体の画像について
大気圏に再突入した「はやぶさ」カプセルについて、夜間捜索の際にヘリコプターから撮影したカプセル本体の画像


小惑星探査機「はやぶさ」、地球に帰還 (News)




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小惑星 イトカワの名称由来
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小惑星イトカワの名前は、日本の宇宙開発の父と呼ばれる「糸川英夫」からきている。
日本が発見したわけではなく、はやぶさの探査計画にあわせて名前をつけてもらったらしい。

いとかわ:はやぶさ (MUSES-C) の探査対象となったことから、宇宙科学研究所(当時)が日本のロケット開発の父・糸川英夫の名前を付けるようLINEAR(地球近傍小惑星探査チーム)に依頼し、2003年8 月6日に国際天文学連合により承認されて同協会の『小惑星会報』 (MPC) で発表された。Wikipedia)


中学生の頃、糸川英夫の文庫本を父からもらい、バイオリンをできる段階から初めて一曲弾けるようになる話や、
ロケット打ち上げ場所を確保するための苦労話。
ロケット部品の動作を保証するための部品の品質管理方法など、いろいろとおもしろい話を読むことができた。
自覚はないが、その発想、考え方は少なからず影響を受けているかもしれない。
もし、あのころあの本をよんでなければ、いまほどの粘り強さはなかったかもしれない。

そのときの本のタイトルは覚えていないが「独創力」か「逆転の発想」のどちらかだったと思う。

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日本のロケットは、ペンシルロケットから始まったが当時の自分はといえば、こんな物よりミサイルのほうがすごい。
日本はだめだなと、全然その価値を理解していなかった。

あのときの本はなにげなく、いろいろなことが書かれていたが、当時のことをおもえば発想力だけでなく
それを実現するための精神力は、すさまじいものがあったのだと思う。

ロケット開発のあゆみ~ペンシルからM-Vまで~


小惑星イトカワの姿



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はやぶさの小惑星探査計画
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はやぶさ (探査機) (Wikipedia)

はやぶさの計画については以下の動画でほとんどが説明されている。
表面に30分も着陸して、その同じ機体で、数年間も宇宙を旅して返ってきたというのはすごいですね。
まさにSFです。
そして、数多くの困難を、地球からの指示だけで乗り越える所など、アポロ13を思い出します。

はやぶさの大いなる挑戦!!〜世界初の小惑星サンプルリターン〜


はやぶさ君の冒険日誌 2010



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そのほか
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Jaxaのはやぶさページ

はやぶさのTwitterのアイコン


そして、これが モデラー成田さんのご友人の荻野さん(と思います)のインタビュー記事
すごい人ですね。
 第2話「立派に育って『はやぶさ』は帰ってくる」 プロジェクト・マネージャー NEC 萩野 慎二

成田さんのはやぶさに関するエントリ「奇跡の生還なるか はやぶさ

同、荻野さんが属するNECの「はやぶさ」ページ
(2010年6月24日追記:萩野氏のインタビュー動画があったので追加しました)

そういえば、プラモデルが出る。
記念すべき出来事でもあり、久しぶりに買ってみるかなと思ってさがしたが、初版は全て売り切れ。
幸い第二版が6月終わりにでるので、予約しておこうと思う。

2010年6月13日日曜日

My Job Went To India (1)

以前のエントリのタイトルにも引用させてもらった本「My Job Went to India

 ブログのエントリを書く間にみつけた書評などを読んでいるうちに、今一番自分の考えの方向性に似ていると感じ、即、Amazonで日本語版を購入した。
その本が木曜日に届き、さっそく読み始めました。

購入時はよくある、ノウハウなどの本だと思っていたが届いたのを見てびっくり。 細かい文字がぎっしり、これはかなり腰を入れて読まないといけないなと感じながら、最初のイントロダクションを読んでみると、見る間に引き込まれてしまいました。
中国やインドのIT業界における進行度も大変参考になります。
またオフシェアリングで両国が仕事をとれたのは、英語ができるからだそうです。
この点、日本は弱いですね。


今のところイントロダクションを含めて10ページほど、読んだばかりですが、 これからの状況は変わらないという点、個人もいろいろな経済の知識が必要であるということなどは、ほぼ自分の考え方の方向性は間違ってなかったことがわかりました。


違いがあるとすれば、私のほうは状況をネガティブにとらえ、この本の著者はポジティブに捕らえていたところ。
本自体はプログラミングとプログラマーについて書いていますが、 そのままCG/VFXアーティストに入れ替えても内容的には通じるようなことがらばかりです。

職種は多少違うとはいえ、アメリカのCG業界もプログラマの状況に非常に似ていると思いました。
そして、うまく先陣をきれば、この状況を乗り越えることもできるし、この逆境を逆手にとることもできるということです。
(ただし、CGアーティストとしてという意味ではないのでそのあたりはもっと読み進めて適用できるノウハウがあるかどうか見てみないといけません)

よく、成功法則を書いた本や、現代社会の傾向について書かれた本がありますが、どちらかというと一般論的で、この業界にそのまま適用できる内容の物はほとんどありませんでした。

この本を少し読んだ感じでは、少なくともプログラム業界をよく知っていて、その傾向も2010年までも見通してかかれています(出版は2005年)。
これがこのまま適用できるとすれば、CG業界も、そこに書かれているような危機的状況に陥る可能性が十分ある。


一部を引用すると、

2000年から2004年の4年間の間にアメリカのプログラマは17%減少。
21世紀の到来に伴いIT産業で働く人間は騎士から従者に格下げされた。
ピークから数年が過ぎてもオフシェアリングは確実に増加しており、2004年にはIT業界のアウトソーシングは37%の成長を見せた。

しかし、結局の所、企業をせめても何の解決にもならない。米国の企業社会は簡単には変わらない。
政府や大企業への非難は恐れや不安の慰めにはなるかもしれないが不毛でしかない。攻めるべきは、ほかでもない自分自身だ。(中略)労働組合を結成してデモをするのも敗北主義だ。(中略)
どれも問題の責任(および解決のためのアクション)を誰かにおしつけようとしている。


どれも耳の痛い話ばかりである。
CG業界が、プログラム業界ほどひどくなるかどうかはわからない。
もしかしたらもっとましかもしれないし、もっとヒドイかもしれない。
それは誰にもわからない。
しかしCG業界もプログラム業界と同じように、このままでは失業が増える方向へ進んでいることは否定のしようがない。
生き残るための対策は今からやっていくしかない。

これは久しぶりに、読み応えがある本で、緊急に必要な情報を手に入れることができそうな感じがする。
 CGアーティストとしての生き残りにはもちろんのこと、これからTDやプロデューサーを志す人は必読だと思う。

ハリウッドでの同窓会

今日は、同窓会へいってきました。
まぁ別に学校が同じなわけではないんですが同年代の集まりってことで「同窓会」と読んでるんですが、Digital Domainでモデラーをされている方と、最近リズヒューHに移籍されてご活躍の鍋潤さんと一緒に飲み会をしました。(というか一人で飲ませて寂しい思いをさせてしまいました。 鍋潤さんすみません。)

モデラーの方は、Tronのモデリングを担当し、現在はある映画のロボットをつくっているとのことでした。
うらやましかったのが、Tronでは、あのコズミックモーターズで有名なダニエル・サイモン氏がすぐ後ろにいて、一緒に仕事をしてたって話でした。
おまけにサインまでしてもらったということで、これはかなりうらやましかったです。

 ダニエル氏は、キャプテンアメリカでも自動車のデザインをやっていますが、Tronでは、ライトサイクルを始め主要メカのデザインやコンセプトデザインをやっています。

彼は、あのシドミードの再来とも言える人です。


私の一番好きなシドミードのイラストはこの巨大のロボットの馬(犬)のレース、すごい迫力です。




シドミードは手書きのイラストが主体で、アナログ時代とすれば、ダニエル氏はデジタル時代の申し子です。(もちろん手書きもやります)

Tronのメカは元々、シドミードがデザインしており、今回のダニエル氏の起用も納得できる物です。
(旧 トロン)

 (新 トロン)

 
ダニエル氏の作品はシドミードとはまた少し違うセンスなのですが、ファッショナブルで完璧です。
 緻密な表現がすばらしく、クルマのリフレクション、巨大感、さわやかなお色気を添えるレーサーなど要点が押さえられています。


氏のブログにはInspiration of the dayという情報も最近のせられるようになりました。
数ヶ月前にトロンのライトサイクルの高解像度画像が一瞬のせられました。
ほんとに一瞬で、数分でその画像のエントリは削除されてしまったので、おそらく版権的にまだ公開できないと思ってやめたのでしょうね。
タイトルもHirezPicとなってましたので、間違って掲載したものではなかったので後で気持ちが変わって「やっぱりまずいかも...」と思ったのでしょうね。




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話がそれましたが、飲み屋さんでは、やはり同年代の話、当時のTVや、鍋潤さんのビッグニュース(これはそのうちご本人から)、業界の話などで盛り上がりました。


また、以前からほしいと思っていた「ハリウッドCG業界 就職の手引き」を入手しましたので、近々、そのリビューも乗せたいと思います。

現実となったハイテク

このようなタイトルは、もはや見慣れて珍しい物ではなくなったが、私のようなおじさん世代には今も感心してしまうと言うかどちらかという感動に近いものが時々ある。

まぁ普通に紹介していては、おもしろくないので、ここでは多少マニアックな物にしたい。

小学生の頃にデンジンザボーガーというTVシリーズがあり、それに出てくるメカは、とてもハイテクでかっこよかった。
実は月曜日の6時頃だったかから放映していて、その日はちょうど習字の習い事があり、いつも見ることはできなかったが、タクシーで行くときはタクシーの待合室で見ることができた。
プラモデルもいろいろあって、秘密基地シリーズや、たしかいくつかにわかれていて、4つあわせると一体のザボーガーになるというシリーズもあったように思う。
(腕だけとか、頭だけの飛行機やクルマになっている。ただこれはザボーガーではなかったかもしれない。)


まず、メインのザボーガーというロボットはバイクにも変形できる。
小学生ながらタイヤがどういうふうに収納されているのか疑問は残ったが、なんとかなったのだろう。 (完全変形するザボーガーを作った猛者もいるが、さすがにプロポーションは多少犠牲になってしまう)

まぁ、このロボット自体は現在の技術は足下にも及ばない。
アシモも、ムラタセイサク君もバイクには変形できない。















あまり、関係ないですが基地がザボーガーと基本デザインが同じなのもいいですね。
当時は基地も変形するのかとわくわくしましたw

問題は、ザボーガーの頭から出てくるヘリキャットと、足下から出てくるマウスカー

見た目だけならこれは十分、現在の技術で可能ですね。
このサイズのラジコンって普通になってしまいました。


まず、マウスカーですが、半分だけで走れるのに、なぜ、わざわざ合体して大きくなる必要があるのか不明ですが、走行機能を持ったラジコンと言うことなら、現在の技術で十分可能ですね。
もっと小さくてもOKだと思います。
サイズだけならラジコンのチョロQのほうが勝ってますね。
ただ、先端にドリルがついていて土の中に潜れるんですが、これはまだ無理ですね。
そういえば、ロボット技術とかラジコンとかは進化してますが、土の中にもぐれるドリルの小型化の研究ってのは聞いたことがないですね。(何のフォローにもなってない...)


さて、ヘリキャットですが、アメリカの国防高等研究計画庁(DARPA)は、機能的にはこのヘリキャットと同じように偵察ができる超小型の無人飛行機の開発を進めている。
(ハチドリ型(AeroVironment社))

ヘリキャットは簡単に言えばラジコンヘリコプターですね。
有視界飛行に限定すれば、基本機能は実現していると考えて間違いないのではないでしょうか?
まぁザボーガーの頭のサイズにもよるますが、大きそうだし、たぶん大丈夫ではないかと思います。
市販品ではおそらく世界最小となる、マルイのIRCヘリminix
全長11.5cm、全幅25m、全高60mm



もっと小さいものでは、コンセプト実証機ですが、Picoflyer
全長60mmを実現しています。


これなら十分、頭の中に収まるんじゃないでしょうか?

偵察機能に関しては、映像と音声ですが、最近のテクノロジーを使えば何とかなりそう。
ザボーガー公開当時は画質もSDサイズですから、HDほどの性能は必要ありません。
アメリカの国防高等研究計画庁(DARPA)も超小型の無人飛行機開発に力を入れていますから
小型ヘリに搭載できるような軽量カメラも、すぐに現れてきそうです。

特にマルイのIRCヘリはジャイロを内蔵していて安定性に優れているために、
偶然性や、熟練はさほど必要ないってのもすばらしいですね。

大きくてもいいから、偵察機能重視ということであれば、いくつかの「Quadrotor」はすでに実現している。
「Quadrotor(4ローター機)」は昔、センサーで有名なキーエンスが20年近く前に出したジャイロソーサーといえばわかる人もいるかもしれない。
4つのプロペラを対角線上にならべたヘリコプターのことです。
キーエンスの物は当時としては画期的で。
ラジコンなのにジャイロを搭載し、室内で飛行できるほど小型、すばらしいアイデアだった。

ちなみにプロペラはむき出しだが、当たってもすぐに壊れたり外れるように工夫されている。
これも当時としては、よく考えられていた。

しかし、商品としては、結構高く、とても手が出る物ではなかった。
後に屋外でも飛ばせる「エンゲージャー」という機種が出たが、長くは続かなかったようだ。
残念ながら数年で発売中止となってしまい悔しい思いをした。
今では海外の会社が、X-UFOという類似製品をだしているようだ。

その後は最近まで4ローターのヘリコプターのことなど忘れていた。
それを思い出させてくれたのが以下の二社がだしている4ローター機である。


さてこの4ローター機、ドイツのMicrodorne社の開発したMAVはすでに販売されている。
ジャイロを備えているため、飛行は安定しており、カメラも内蔵している。
音声が録音できるのかどうかはわからないが、マイクをつけるのは難しいことではないだろう。
(ただ遠方の音が拾える指向性マイクが搭載可能かどうかはわからないが)

軍隊や警察用なのか、価格は公表されてない。


ほかにもDragonflyer社も似たような製品を出している。
こちらはバリエーションも豊富
荷物重量250g~1000gまでの機種が選べる。
値段は$8500からと少々高い。

ただし、同社の出しているToyバージョンでよければビデオカメラ搭載済みで、1500ドルから購入可能。(カメラ無しは900ドル)


iPhoneに不可能はないと信じる、iPhoneファンのためには、別の会社だがAR DroneというiPhonで操作可能な機種を開発している。



またこの4ローター機はいろいろな自作サイトも存在している。
いろんな情報があり、部品の販売もしているところなどもあります。
最近では技術も発達して、ジャイロでの安定性だけでなく、傾き補正、障害物検知など、頭脳の部分もどんどん発達しているようです。


QC copter
mikroKopter.de
Aero Quad
DIY DRONES

こんな小型のを自作する人や下のビデオのように、8ローター機を自作する人までいます。

Okto-Quadros from MK-Stefan on Vimeo.



まぁ、今回は4ローター機の情報をまとめておきたかったので、その関連情報が多くなってしまいました。
いつかは空撮やってみたいですのでw

ちなみに電人ザボーガーは映画化(来年公開予定)されるらしい(しかも二部作同時公開)ですね。

2010年6月12日土曜日

現在の仕事

先週からMethodで仕事をしてますが、Houdiniはまだ触っていません。
映画ではなく、CM部門に雇われたということもありますが、Maya+Vrayでの作業です。
この後にもいくつかCMのプロジェクトが控えているので、そのときにHoudiniに触らせてもらえるのかもしれません。


Vrayはほとんど触ったことがないので、最終的な部分はVrayアーティストに任せて、自分の担当はnClothと、破壊系エフェクトのシミュレーションです。
仕事としては今までやってきたこととさほど違いはありませんので、nClothのシミュレーションがうまくいけばOKでした。
しかし、 nClothでの作業はいままで、いつも不必要なストレッチ(伸長)と、スプリングの効きすぎになやまされ、それらをコントロールする方法を見つけ出していませんでした。

毎日のように変更がはいり続け、シミュレーションのトライ&エラーにかけられる時間は1~2時間、最初の4日ほどは、初めてチュートリアルをやったものよりもヒドイ物しか見せられませんでした。
その日のクライアントに見せるムービーを送らなくてはいけないので、ジョイントを使ったキーフレームアニメーションでごまかすのがやっとという有様でした。

クロスがコンストレインしてあるオブジェクトが、かなり高速で移動しているのと、実スケールでの作業になれていないためにおきたことですが。
実際には、まったくの初心者には無理だと思います。
しかし、プロデューサーにはその違いはわからないでしょう。

nClothは通常1ユニットが1mで計算されますので、モデルを1ユニット1cmで作った場合、nucleusノードのSpace Scaleを0.01にしてやる必要があります。
しかし、それをやっても、うまく行かない部分が多く。
急激なスピードでゴムのように伸び縮みしたり、ぐちゃぐちゃになってしまうシミュレーションと戦い続けました。



プロのエフェクツアーティストであるならば、これらは運任せではなく、すべてコントロール下に置いている必要があります。

プロデューサーの「こいつ大丈夫か?」というような、どことなく冷たい目線を気にしながらも、間に立ってくれていたおだやかで理解のあるVFXスーパーバイザーによって何とか過ごすことができました。

このままでは、仕事のチャンスを逃してしまうと危機感を感じたのと、プロとして全てをコントロール下に置くために、自宅でもDigital Tutorsのビデオを見直してみたりして、アトリビュートの要点をつかむことに専念しました。
最終的には、スケールもデフォルトの大きさのままでやることで大きく改善。
まだ理由はわかりませんが、どうやらSpace Scaleを0.01にするだけでは駄目らしいです。
伸長とぐちゃぐちゃになるのも、どのアトリビュートを調整すればいいのかをClothの挙動をみて推測ができるようになりました。
まだ完全ではないですが、 なんとかコントロール下に置くことができるようになりました。



そうやって作ったシミュレーションは初めて最後まで見せられる質のものでした。
それをプロデューサーに見せたら、安心したらしく態度が突然かわり、任せてくれるようになりました。

今は、やっと最終的な物に落ち着いてきたところ、今週中には仕上げなくてはいけないのですが、おそらく大丈夫そうです。

現在は高解像度メッシュでのシミュレーションを、練り直しているところですが、Substep値もさほど高くしなくても良いので、シミュレーション速度も容認できるので、これなら高解像度メッシュでもいけそうです。

これをあと1日か二日で終わらせて、あとは、地面のひび割れのエフェクトを作成です。
すでにひび割れは、テスト作業を終えました。
ひび割れ系のエフェクトは、前の会社ではブラストコードというプラグインを使っていたのですが、この会社にはそのようなプラグインはありません。







幸い、何度も使っていたおかげで、大体基本の作業はわかっていましたので、ポリゴン・プレーンを直接、ひび割れ形状に分割したモデルにして、そこから各ピースを手作業で作り出しました。

今現在の課題は、ひび割れ時に発生したデブリが落下したときの地面とのインタラクションです。
パーティクルとインスタンサーを使おうと思っていましたが、これでは回転が擬似的な物になってしまいます。
nParticleもインスタンサーの回転がサポートされたのは2011からで、会社で使っているのは2011ではありません。



nClothを使ったリジッドボディーにしようかと思っていたのですが、小さな不安定な動きが発生し修正が大変そう。



ちょっとこのあたりは、何か対策が必要ですが、まぁ何とかなるでしょう。
 
あとは、おそらく土煙にフルイドを使えと言われなければ、それほど苦労することはな胃かなと思っています。

毎日、プロデューサーに見せるために、movファイルを作成するのですが、この作成のために初めてNukeを使いました。
まだ、さほど複雑なことはしていないので、なれながらNukeを覚えるには良いかなと思います。

2010年6月11日金曜日

ライン作業に学ぶ

一番最初に就職した会社は、某車メーカーの内装部品やバンパーを作成する会社で、従業員はすべてあわせると700人を超える製造会社であった。

巨大な射出成形機が5~6台ならび、インパネや内装部品を組み立てるラインが広い敷地の至る所にある。
小型のフォークリフトが通路を行き交い、プレス機が動く音が聞こえてくる。
休憩時間は、段ボール箱を強いて腰掛けてジュースを飲む。
そんな感じの工場で、将来、自社の技術を生かして自社製品を売り出そうという魂胆で私は工業デザイナーとして雇われ、開発部門に属することになった。

しかしながら、開発といっても親会社からの要望にあう品質を作り上げるために、いろいろと調査をするだけで、自社製品の開発など到底すぐには望めない環境であった。
しかも、「教育実習」と称して現場のラインへほおりこまれた。



現場作業者との違いは、1ヶ月ほどで、現場をローテーションしていく。
目的としては、会社の作業全体を身をもって知ると言うこと、すぐには使い物にならない新人なので、人手が足りない現場の足しにすることの二点がある。

現場での作業では、様々な人がいてそんな人たちを観察していて人生の勉強になったと思う。
高卒に偏見はもっていないつもりだが、一般的に言われるように、高卒や中卒の人がたくさんいる。
大学出身者は地方大学でも、ここではエリート候補で、現場管理側の仕事に就く。
(現場管理とは、現場作業を効率よくできるようにライン設計や、日々の機会の問題を主に解決する人である)

そんな現場で働く人はほんとうにいろいろだ。

年齢を問わず以下のようなタイプの人がいた。

自分の仕事に誇りを持っている人
自分に自信がない人
仲の良い友達としか話さない人
趣味の話ばかりする人
にこにこして人が良さそうな感じで話しかけてくる班長(実は残業のお願い)
上司にヘコヘコする管理職群
親がその会社のお偉いさんというだけで、威張っている人
ぶつぶつ独り言を言ってる人。
指を切ってしまったのに、作業が止められないからと洗浄用有機溶剤の中に手袋なしで手を突っ込んで部品をとる人。
文句ばかり言う人
黙々と仕事を続けるまじめな人
妙に他人行儀な人
さっぱりしている職人みたいな人
優しいが、ほかとは孤立している人
つっけんどんな人
高飛車な人
表と裏の差がはげしい人


管理職側でも現場側でも、不思議と何らかの形でコミュニケーションが普通な感じがしなかった。
おそらく本当に普通だと思える人は、数人だけだったと思う。

それは当時学校を卒業したばかりだったからかもしれない、今見れば違うのかもしれない。
しかし、何かゆがんだ環境だったように感じていた。

そのおかげか、後に「こんな人がいる」と文章で書かれていても大体、イメージがわくようになったw



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流れ作業
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さて、こんな会社でも勉強になったことが一つある。
それは今でも、使うといいかもしれないなと思うことがよくある。



それが「QC(品質管理)」である。


現場管理の人は毎日、品質管理のために働いているのだが、現場でしか気がつかない小さな問題というのはたくさんある。
それを自ら気がつき、自ら解決させる方向へ持って行き現場の士気をあげていた。


よりよい理解のために、まず、現場作業という物がどういうものかを説明します。

工場では、
1.部品をとり
2.作業台(ベルトコンベアのように自動的に横へ移動していく)に置き
3.必要な部品を取り付け
4.パレット(収納コンテナ)に納める

という流れで作業を行います。

たとえば、インパネ(車のメーターやダッシュボード周り)は電装品や空調設備のパイプなど様々な部品を組み付ける必要があり、部品の取り付け作業は最初から最後まで見ると長時間で、いろいろな組み立て知識の必要な作業となります。

ライン作業では、取り付ける部品を、いくつかのステップにわけ、複数の人が順番に決められたステップの作業だけを行います。
それぞれの作業は簡単な手順でまとめられています。





最初の人は
1.プラスチックのインパネ骨子をとり作業台に置く。
2.プラスチックの欠陥がないかチェックし、外皮をかぶせる。
3.クリップナットを数個決められた場所に取り付ける。

クリップナットとは、以下の写真のようなもので、特定の場所に押し込むだけで取り付けられるナットである。
これにつかうネジは木ねじのような先がとがったネジを使う。
4.自分の作業が全て終わったことを油性の色鉛筆で見えないところ(所定の位置)にチェックを入れる。


次の人は
1.クリップナットにネジを差し
2.エアドライバ(空気で回るドライバ)でネジを締める。
3.外皮の外から空調調整用のフィンのパーツを押し込んで取り付ける。
4.自分の作業が全て終わったことを油性の色鉛筆で見えないところ(所定の位置)にチェックを入れる。



三番目の人は、
1.インパネが取り付けられている台を回転させひっくり返す。
2.部品が車の中でゆれないようにするスポンジ状のブロック(シール付き)を特定の箇所に貼り付ける。
3.電装のワイヤーを這わせて固定する。
4.自分の作業が全て終わったことを油性の色鉛筆で見えないところ(所定の位置)にチェックを入れる。



4番目の人は
1.空調設備のダクトパーツを据え、ネジで取り付ける。
2.自分の作業が全て終わったことを油性の色鉛筆で見えないところ(所定の位置)にチェックを入れる。



・・・・・という具合で完成まで作業が続いてく。
一つの作業は数秒から数十秒であり、その間作業台は目の前を右から左へゆっくりと流れていく。

これが流れ作業と呼ばれる所以である。






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ラインの設計
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流れ作業は、通常は、一連の作業を一列に並んで行えるようにしてあり、その設備はラインと呼ばれる。

このライン作業の効率の良さには正直関心した。

ライン生産方式では、作業員一人一人の仕事は多くとも数点の部品の組み付けだけであり、職人的な技量は求められず、全くの素人でも数時間のOJTを行えば事足りる。均一の工業製品を安価に大量生産するのに適した製造工程であり、作業員の熟度に合わせてベルトコンベアのスピードを上げてゆけば生産性は高まる。(Wikipedia)


ライン作業車は、自分が関わっている、ごく一部の知識しか持ってない。
しかし、そういう人が集まって、自動車、電化製品、最近ではコンピューターが作られているのである。

そう、車を設計し、ラインを設計する人は知識や知恵を必要とするが、
実際に作っている人は、何の専門知識もなく次の休みにどこへ釣りに行こうかと考えているおっちゃんや、どこの野菜が安いかが心配なおばちゃんが、最先端の自動車を作っているのである。

そして、新人でも、数分から数時間でその作業をマスターすることができる。



これは当時でも、すごいなと思った。

もう一つのすばらしい点は時間である。
一つ一つの作業時間は長くて数十秒だ。
これらが平行して行われることで時間が非常に短縮される。
実際に自動車工場では、数十秒に一台の新車が生み出される。
(最初の一台がラインを流れていくまでには時間はかかるがいったん全ての人に作業が行き渡れば、速くなる。)



参照:クルマやバイクができるまで(Honda)


このすばらしいラインの設計には、非常に手間がかけられ、綿密な計算がされている。
たとえばビス一本、テープ1cmにさえ値段が決められているのは想像がつくかもしれない。
しかし
●手を伸ばしてエアドライバを引き寄せる。
●ネジを締める
そいういった作業、ひとつひとつが細かに分類され、それぞれの作業時間がコンマ秒単位で、そして0.1銭単位で値段がつけられている。

そういう工程分析から、全体の作業計画から、一人一人の作業時間がわりだされベルトコンベアのスピードが決められる。

また部品を取り出すために取り出しやすい、位置や高さ。
コンベアに必要があるものは、それを据え付ける台の形状や高さまで、
最低限の労力と、最高の効率をめざして作られている。

そして、こういったすべての過程において、傷を一切つけず、行えるように配慮もされている。
また全ての部品棚が色分けされ、位置が決められ、なにがどこにあるかなどがはっきりとわかるようにしてある。


エアドライバがぶら下がっているのを写真で見たことがあると思うが、
●不要なときは元の位置に戻るように巻き戻しプーリーに取り付けてあり、戻る速度も速すぎず遅すぎず調整。
●作業者がとりやすく、すぐに作業に移れる場所
●製品をコンベアに載せたり下ろしたりするときに、まちがってぶつけて傷がつかない場所
動線を妨げない工夫)

などすべてにおいて最高の品質の物を、速く、しかも作業者の負担にならないように、細部に至るまで考えられている。


前述のみなれないクリップナットの形状もこれで理解できるだろう。
普通の六角ナットに比べると以下のような利点がある。
●片手で固定できる。(六角ナットはナットとビスを押さえる必要がある)
●部品単価が安い。(金属板をプレスするだけで作れる)
●穴にネジを似合わせるが簡単。(クリップナットは、木ねじなので先がとがっているので位置合わせは簡単)

ただ、クリップナット一つとっても、強度やサイズ、使いやすさがあり、他社の車を買い取り、隅々まで分解して、どんな技術を使っているのかを研究して、よりやすくよりやすい物を作る工夫を日々続けている。

絶えず、安い方法、効率的な方法を追い求め、日本の製造工場は世界一になった。
そして、その方法を突き詰めた結果、人件費の安い中国などの第三国での生産であり、そのやり方をマスターした中国は日本(日本だけではないが)から離れ自分たちの製品を作るようになったのである。
その結果、今や世界一の成長国家である。


話がそれたが、ラインの設計には作業者の安全も考えられている。
たとえば人が通る場所は緑色のペンキと白い縁取りの通路になっていたり、出っ張ったところや鉄筋の角、作業台の角にはスポンジ状のシートが貼り付けられている。
私の工場では、自動車本体は取り扱っていなかったが本社の組み立て工場を見学したことはある。
下の動画のように、溶接などはほぼすべてがロボットにより自動化されている。
これは品質、安全面、速度のすべての面で利点があるからである。







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QC (クオリティー・コントロール)
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これだけ綿密に計画され設計されるラインであるが、それでも実際に作業しているうちに欠点が明るみに出たり、もっと効率を上げる方法が見つかったりする。
それは、多数の現場を管理している現場管理者よりも、一つの場所でずっと働いている現場作業者の方が気がつきやすい。

そこでその「気づき」を、逃さないようにして、現場作業者自らが自分の現場での品質を向上させるための努力をするように考えられたのがQCと呼ばれる手法である。

これは、自らの環境に対して自ら働きかけて環境を改善できるとあって、現場作業者もやる気を持って取り組んでいた。


うちの会社では、品質管理部門の人が現場の人を対象に、定期的にQCで使う技法の説明会をしていた。

使われるのは、いくつかのグラフと、特性要因図、パレート図など、「QC七つ道具」と呼ばれる手法である。

ソフトウエア管理にも使われているらしくそれを説明しているサイトがあったのでリンクを掲載しておきます。
「QC七つ道具」リンク:
暮らしに役立つQC七つ道具(1) ―― 層別:「分ける」ことは「分かる」こと
暮らしに役立つQC七つ道具(2) ―― チェック・シート:事件は「現場」で起きている
暮らしに役立つQC七つ道具(3) ―― パレート図:「何」が「重要」なのか?
暮らしに役立つQC七つ道具(4) ―― ヒストグラム:「全体」の「傾向」をつかむ
暮らしに役立つQC七つ道具(5) ―― 散布図:「傾向」を「推理」する
暮らしに役立つQC七つ道具(6) ―― 特性要因図:「原因」を「整理」する
暮らしに役立つQC七つ道具(7) ―― 管理図:「傾向」を「監視」する

暮らしに役立つ新QC七つ道具 (1) ―― 親和図 : 「似たものどうし」を「整理」する
暮らしに役立つ新QC七つ道具 (2) ―― マトリックス図法:「行列」で「整理」する
暮らしに役立つ新QC七つ道具 (3) ―― マトリックス・データ解析法:「要素間関係」を「要約」する
暮らしに役立つ新QC七つ道具(4) ―― 連関図法:「関連」を「整理」する
暮らしに役立つ新QC七つ道具(5) ―― 系統図法:「方法」を「整理」する
暮らしに役立つ新QC七つ道具(6) ―― 連関図法:作業間の「関係」を「整理」する
暮らしに役立つ新QC七つ道具(7) ―― PDPC:「リスク」を「整理」する
暮らしに役立つ新QC七つ道具(8,最終回) ―― アロー・ダイヤグラム法:「時間」を「整理」する


実際の作業の一例を説明すると、各作業者が普段気になっていることを、発言してまとめていきます。
このブレインストーミングの段階で、他社を批判しないという原則が徹底して守られているのは感心しました。

さてそれらをもとに、特性要因図を作り、状況から統計を取りグラフにします。

参照1:ブログFastMBA
参照2:品質改善.com


たとえば、「傷がついている製品の数が全体の製品に対していくつぐらいあるか?」というグラフや
部品を取りに行く回数や、部品の補充にかかる時間をそれぞれの人ごとに統計を取ったりします。

そんな作業を進めていくうちに、改善策のアイデアが出てきますので、それを試してみます。
たとえば、
●部品をとりやすいように10cm棚をさげる。
●通路にあった、部品棚を移動する。
●製品を入れるケースに使っていないときはふたをしてゴミが入らないようにする。
などです。

それにより、問題点がどのように改善されるたかという統計をまた取ります。

これを、大きな物から小さな物まで適用していくわけですね。
中には品質管理部の人もびっくりするような大改善がされたりすることもあり、まさに「3人寄れば文殊の知恵」です。



こういった現場を経験したためか?!その後はどんな仕事についても、非効率的な部分、改善すべき部分が気になるようになりました。
以外なのは、残念なのは、どんな職場でも、改善点に気がついていても、文句ばかり言って改善しようともしない 人たちが多かったことです。
もし、QCのツールの一部でも知っていれば、自分たちの環境を自分たちで変えていけたかもしれないのにと残念な気がしました。

幸いQCツールはそのままソフトウエア開発に使われてきています。
これをCGの現場に適用するのもそれほど難しくないかもしれませんね。



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欠点
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さて、ライン作業方式の欠点は「単調作業」ということにつきますが、これはCGのパイプラインにも言えるようです。
自分はまだそこまでのCGパイプラインで作業をしたことがないのでわかりませんが、聞く話によるとそのようです。


製造現場のライン作業とCGと違う点をあげれば、一生懸命やっていれば、半日もすれば熟練して作業時間が余るほどになる。
幸いにしてライン全体の作業者のバランスを保つためにコンベアのスピードがアップされることはほとんどないので、多少ゆとりができる。
しかし、すぐに次の部品がながれてくるので、その場を離れることはできないし、本などを読むほどの時間もない。
ゆっくり流れるコンベアをじっとながめているだけなのだ。

中途半端に何もすることがないというのは、なれないと結構苦しい。
何より単調作業は、何も考えてはいけない。
今やっていることに意味を見いだそうとすると苦痛になるか、絶望的になるかだけである。

でもCGは手を休めることができず、その「単調作業をずっと続けなくてはならない」のだから、それもまた苦痛である。
製造現場ほどの単調さではないということが、せめてもの救いか。


現場作業中に何かを考えるなら、目の前とは違うことを考えるのがいいと思い、自分は作業中は考えをまとめ、ちょっと時間が空いたときにメモするようにしていた。
おかげで人生のことや将来のことなどたっぷり考えることができたうw


もう一つ、有効で生産的なことがある。
目の前にある製品や作業工程をどのように設計されているのか、どのように作られているのかを考えることである。
CGで言えば、いろいろなプラグインや、ツールの作り方や機能を分析することに似ている。


さて、ここまで細かな分析がされ、全ての統計が取られているのが工場の流れ作業である。
CGの作業は、ここまでの分析はされていないように感じる。
それはCGの進歩はめざましく、いくら分析してもすぐに役に立たないデータになってしまうからかもしれない。


しかし、こういった組み立てラインから、CGのパイプライン構築に生かせる知恵があるのではないかと思って、今回のエントリを書いてみました。

大なり小なり、パイプラインの構築は不可欠であり、これから必要になってくるでしょう。
そして、非人間的な単調作業が増えたときに、その作業とそこに意味を見いだせるような心の姿勢が必要となるのかもしれませんし、
それは仕事と割り切って、意味のあるCG製作は自分で趣味的にやっていく必要が出てくるのかもしれません。

すぐれたパイプラインは、驚くほど効率的になるのかもしれませんが、一方では非人間的な作業を増やすことになるのでしょう。
そのあたりのバランスをとる必要があるのか?それとも新たな道を見つけ出す必要があるのか?

こういったことも考える必要はあるのかなと思いました。




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最後に
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余談ですが、この会社は約一年でやめました。
原因は、いろいろとあるのですがそこにいても工業デザインの仕事はできないと思ったのと、将来性を感じられなかったのが原因です。

実際、「教育実習」は半年の予定でしたが、新車の発表を控え、忙しくなったのでもう半年が上乗せされました。


このままでは、いかんと思い会社を辞めましたが、この後、約1年いろいろと悩むところもあり、今で言う引きこもりの生活をしました。

ひきこもってはいましたが、以前紹介した横浜のデザイン事務所で短期ながら仕事をしたり、通信教育で立体製図の勉強をしていたので、今で言うニートよりは多少ましかと思いますw
そして、そのときの通信教育の先生の紹介で、工業イラストの会社で働くことになりました。

映画が好きでしたが、まさか自分がアメリカで働くことになるとは夢にも思っていなかった時代で、CGはまだまだ高価な時代でした。


さて、明日は子供のプレスクールの卒業式なので、もう寝ます。