日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2010年6月4日金曜日

フラット化するCG業界 「My Job Went To India」


 (「Will VFX for Food」: 「Will Work for Food」をちょっとフォトショでいじって作ってみました。「Will Work for Food」の意味についてはこちら


注意: 今回は結構、悲観的な見方の部分もあります。 前もって行っておきますが、全ては自分の想像で書いており、的確な市場調査による統計に基づいたものではありません。
二つステップぐらい先読みして、最悪の事態を考え、今やるべきことを明確にするということを目的に書きました。
これあから海外を目指す方、CG業界に入る方、闇雲に不安になるより現状を見据えて、自分自信でこれから先のことを考慮することは無駄ににはならないと思います。


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北田栄二さんが、ブログのエントリ「ここ最近思うこと。。。」で、最近のCG業界の厳しい状況に触れている。
残念ながら、ほとんどがかなり同感で、かならずしもCG業界の未来は明るいとは言い難い。

この業界の下辺で、フリーランスとして生きていると、その厳しさは骨身にしてみてよくわかるw
自分が好きでやっている仕事だからと、言い聞かせるが現実問題、生活できなくなっては意味がない。


経済的な面を考えて、よりよく生きていく必要があり、もしかしたら業界の骨組みを買えていく必要さえあるかもしれない。

そこで、これからの経済の傾向を先取りして、生き残るにはどうすれば良いかと言うことを考えてみた。
自分に思い浮かぶのは「プロシューマー」「フラット化する世界」というキーワードだ。




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プロシューマー(生産消費者)
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このブログでも、時々、アルビントフラーのプロシューマー(生産消費者)について触れてきた
メモ: 生産消費者
円谷プロ買収とニッチな映画とアルビン・トフラー


10年前は、インターネットにある情報と言えば、ほとんどがどうでもいいような内容ばかり、たまに有益な情報があると高額な費用が必要だった。
ところが、最近は、何かをやろうと思えば、Googleで検索すれば、そこそこの内容の情報を手に入れることができる。
これは「自分で満足するために財やサービスをつくりだす」プロシューマーにより支えられている。

厳密な意味で考えたとき、プロシューマーは「お金のため」でも「顧客のため」でもない、「自分の満足のため」と書いてある。

自分の満足がお金や顧客につながっているのであればそれはかまわないのだが、目的ではない。
それが収入になるかどうかは問題ではない。
これは、お金に苦労している人間にとっては厳しいところであるw

しかし、プロシューマは絶対に増加し続ける。
これは確かである。
「生産消費」と経済活動をうまく結びつけるのは、少し工夫がいるのだが、最近はなかなかうまいケースが増えてきた。

どれもに言えることは、やはり自分が満足できる「もの」や「こと」が出発点となっている。

あえて言うなら、自分に妥協しないで満足できるものというのは質の良いものになることが多く、それを求める潜在的なニーズは存在する。
結果的に収入につながるというわけである。

実はこれは本来の商売や経営、仕事の基本だ。
「ユダヤ人大富豪の教え」で有名な本田健の著作も、「好きなことをする」というのがメインの柱になっている。


プロシューマーという言葉を使うと目新しいが、本来の人としてあるべき姿と考えれば非常に理解しやすい。
プロシューマーになろうとするなら、徹底して妥協しない自分の満足を求める必要があるのかもしれない。
意外かもしれないが、普通の人で、なんとしてでも、どんなことをしてもお金持ちになろうと思っている人はそれほどいない。
生活に困ることがあるから、困らないほどお金が欲しいと思っている人がほとんどだ。

気になる人は是非、アルビントフラーの本と本田健の著作を読むことをおすすめする。

さて、このプロシューマーの考えをCG業界に当てはめれば、自分の作品を作りYoutubeやニコ動にアップする人たちがそれに当てはまるかもしれない。
最近では名前が売れてない作家が、Youtubeに動画をアップして、好評を得るケースもたくさんある。
それが、直接経済活動にむすびついているわけではないが、CG業界の一つの選択肢であることには変わりないだろう。



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フラット化するCG業界
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もうひとつのキーワード「フラット化する世界」
これはまさに現在のCG/VFX業界にもぴったり当てはまる。

現在、ハリウッドのCG作業は世界中にアウトソーシングされている。

そこにあるキーワードは「経費削減」である。
そして、アウトソーシングは確実に効果をあげる方法であり、すでに映画産業はそこに活路を見いだした。

総すかんを食らったハリウッドのアーティストは、苦境に陥った。
以前はCGをやっていれば、平均以上の収入はあったが、いまでは平均レベルにまで落ち込んできた。
ハリウッドでもVFXの組合を作ろうという動きが出てきたほどだ。
連日、様々な雑誌や、ブログ、Webサイトなどでこの手の話題がでるようになった。
このことを憂えたり、映画製作会社に交渉して、以前のような「豊富な仕事」「満足行く給料」を取り戻せるのだろうか?

答えは「No」であることはわかりきっている。
いったん単価が安くなった仕事が再び高価な単価に戻ることはない。


だれも同じ品質のものを高いお金をだして買おうとは思わないだろう。
映画製作会社も同じだ、ボランティアではない、制作費が安くてすむなら、そちらを選ぶのは企業として当然だ。
映画産業でのアーティストは、言い過ぎかもしれないが、工場のライン作業者と同じだ。

売れる新商品のアイデアを出せる人に企業が高給を出すのと同じように、
人が注目するVFXのアイデアを生み出せる人でない限り、映画製作会社もお金を出し渋るだろう。


では、アウトソーシング先のカナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、インド、中国などはどうなのだろうか?
そちらへいけば、以前のハリウッドのように豊かな生活ができるのか?

そういう国へいったことがないので、推測になるが、当面は大丈夫だろう。
しかし、それらの国の給料が高い保証もない。
利点としては仕事があるということぐらいか?
そういう国も、給料を上げることはできないのだ。


では、ここまで世界に分散化したCG/VFXの仕事は将来どうなるのか?
そのうち、どこの国で作っても、質のさほど変わらないCGができるようになる。
どこの国の人でも、COOLなCGが作れるようになっていく。
そしてこれからも、さらに分散化と単価の切り下げが進む。


ようするにCG/VFX業界で、満足のいく収入を上げられる時代は終わりが見えてきた。
世界のどこへ行っても、どんどん給料は安くなっていく。
好きなことをやってお金を儲けられる職業ではなくなっていく。
要するにどこの国へいっても、すぐに同じ状況になっていく。

より安全で、大きな船(職場)をさがして世界を旅するのは、もしかしたら滑稽な話かもしれない。



これが5年後に深刻な問題となるのか、10年後になるのかはわからない。
今すぐではないことは確かだが、同じぐらいそういう結末になる可能性がある気がする。

以上が、現在自分が考えているこの業界の末路である。
ただ、業界全てがそうなるかどうかはわからない。
ILMやドリームワークス、ピクサー、Wetaなどの質の良いものを作る大きなプロダクションはしばらく現状のままでいけるようにも思う。
(もしかしたら、持てる企業持たざる企業のように二分化した状態になる可能性もある。)

こういった理由から「ハリウッドVFX@日本」の計画では、ハリウッドの映像製作に関する様々なノウハウを吸収することを目的にしていた。
CGのスキルやパイプラインととらえていた方もいたが、それはほんの一部であり、プロデューサーやCGスーパバイザーの仕事のやり方を盗むことのほうが重要だと思っていた。
それにはアーティストに対する接し方、市場を重視した戦略の建て方を含んでいる。
またパイプラインに関していっても小手先の技術ではなく、パイプラインを構築するための根底にある黄金律のようなものを体で身につける必要があると思っていた。
ハリウッドの大手が持つCGパイプラインはだれもが指摘するようにそのまま今すぐ持ち込むことはとうてい無理である。
なにより、日本人ならそれ相応のものを自分たちで作り出すことも不可能ではない。
そのときになれば作ればよい。ただし、そのときになって作れるように、その概念と便利さを実地に照らして、十分、理解しておく必要がある。




こうすることで将来の日本の映像産業の根幹をささえるノウハウを手に入れられればと思っていた。
まぁそれにしては、行き当たりばったりの理論をふりかざしていたので説得力に欠けていたのは反省すべき点である。


参照: 
「フラット化する世界」
第18回 「フラット化する世界」のキャリア形成を考える

次のも非常に参考になる。
第23回 アメリカ人ITエンジニアもいなくなる?

猪瀬直樹の「眼からウロコ」 第23回 2008年は「フラットな世界」を乗り切るための改革を (2008/01/08)



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このような時代で長期にわたり生き残るにはどうすればよいのか?
自分なりに考えてみたのが以下の事柄。

1)フラット化したCG/VFX業界を利用する立場になる。

これは日本より単価の安い国を使って映像作品を作る方法がある。
アーティストの立場ではないかもしれないが、企業の生き残りには必要かつ有益かもしれない。

2)使われるアーティストではなく、プロシューマーのように映像を自ら作家となり、提供する立場になる。
フラット化することで世界の質の高いアーティストを、使って映像を作るのがより容易になるかもしれない。
そういう映像製作の専門会社を作っても良い。

3)今までと同じ、映像製作へ関わり方だが、収入体系を変える。
たとえば、今までは「CGを作って給料をもらっておしまい。」だったが、それ以降も、作った映像がヒットすれば、得られた収入を分配するシステムなど。



これからの映像業界はますますニッチなニーズが増えてくるだろう。
生活の末端に至るまでありとあらゆることに映像が必要とされるようになる。
そうなるとプロシューマー的な映像や、TV番組のような低予算映像の仕事は増加する。
3D映像はブームにはなるが、おそらく市場としては、2Dとの棲み分けになるので、3D映像独自のマーケットが現在の2D映像マーケットに加わってくることになる。

こうしたことで、「単発」、「小規模」、「低予算」の映像製作は増加する可能性もある。
それぞれがどの程度のものなのかはわからないし、単価がどの程度かもわからない。
しかし、こういった単発仕事を効率よく集めて、効率よく作るようにできれば、生き残れる可能性があるか。
これは今現在も各社が工夫している。
以前紹介したZOICのZEUSもその一つだろう。



「フラット化する世界」で言われているように、2000年以降は「個人のグローバル化」の時代である。
もしかしたら企業という形態ではなく、必要なときに世界各地から協力するチームのような形態がとれるかもしれない。




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引用したサイト「第18回 「フラット化する世界」のキャリア形成を考える」にも、よい解答がある。
実は、上記のアイデアを出した後に読んでみたが、いくつかは当てはまっているので、方向性は間違えていないようだ。

フラットな世界で個人として栄えるには、自分を「無敵の民」にする方策を見つけなければならない。(中略)無敵の民とは、「自分の仕事がアウトソーシング、デジタル化、オートメーション化されることがない人」を意味する。
第18回 「フラット化する世界」のキャリア形成を考える より引用


これを、もう少しかみ砕いたものが以下の部分


(1)「かけがえのない、もしくは特化した」人々
自分たちの商品やサービスを販売できるグローバル市場を持ち、グローバルな報酬を得ることのできる人々。例えばマイケル・ジョーダンやマドンナ、一流のがん研究者など、それぞれの分野で超一流の人々

(2)「地元に密着」して「錨を下ろしている」人々
特定の場所で仕事をしていたり、顧客との個人的な結び付きや相互交流があったりする人々。労働の知識や技術の程度に関係なく、地元の需要と供給によって決まる職種に従事している人々

(3)さまざまなミドルクラスの仕事をしていた人々
以前は代替不可能、外国とのやりとりも不可能と考えられていたが、いまでは代替も外国とのやりとりも可能になった仕事(データ入力、セキュリティ分析、経理関係など)をしている人々




このあたりから考えると、VFXスーパーバイザー、プロデューサー、TDなどは生き残れる可能性があるのかなと思う。

フリードマン氏は、多くの人が(3)の「旧ミドルクラス」のような仕事に従事しているままだと、(フリードマン氏の視点の軸足である)アメリカは大きな問題を抱えることになると指摘している。これを乗り越えるための「新ミドルクラス」に必要な人材として以下の8通りを挙げ、それぞれを説明している。
・偉大な共同作業者・まとめ役
・偉大な合成役(シンセサイザー)
・偉大な説明役
・偉大な梃子入れ役
・偉大な適応者(アダプター)
・グリーン・ピープル
・熱心なパーソナライザー
・偉大なローカライザー

(『フラット化する世界』より引用)



「フラット化する世界」の考え方は、CG業界にもおそらくぴったりだと思う。
CG業界のグローバル化について考える上で、おそらく何らかの解答をもたらせてくれるだろう。
そういう自分は、まだ読んでない(^^;)



そのほかの参考本:
My Job Went To India オフショア時代のソフトウェア開発者サバイバルガイド
まさにその通りwのタイトル。 
今回のエントリのタイトルに入れたのはこれです。
内容はかなり良いらしい。読んでみたい。
この本のリビュー(ブログ:このブログは証明できない。

追記: いまAmazonから注文しました。

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