ここ1年ほど、ほとんどテクスチャーとライティングをメインにやっている。
元々がそれで雇われたのと、それが気に入られたのでその仕事ばかり巡ってくるようになってしまった。
もともとがモーショングラフィックス系で、現実のリアリティーよりも若干派手目なものが求められることが多いので
あまり細部に気を遣わなくともなんとかなるのも幸いして、仕事にも余裕がありいろいろと今までの技術を反芻している。
といってもエフェクト系の凝った物はほとんどなく、
石や布といったテクスチャーで何とかなるものがほとんどで、たまに鏡面反射の多い物体などがある。
いまだに鏡面反射を仮想空間でそれらしく見せるのはなかなかうまくいかない。
空間が真っ暗で反射する物がないのにつやつやの鏡面反射のあるものを見せなくてはならず、
違和感がない環境を設定してやらないといけないのでどうしても試行錯誤が必要。
しかもコンプする人が上司でパス分け(リフレクションパスとかオクルージョン)になれてないので
一発レンダーで仕上げなければならず、それも足かせになっている。
さて、ここ1ヶ月半ほどはフルCGアニメーションっぽい作業をやってきた。
ある映画賞の受賞式で各賞の導入(「主演女優賞」みたいなのを)に見せる短い映像を作ってきた。
今回はコンプする人も違うので、好きにパス分けさせていただいたw
そもそも5秒のショットが12もあり、コンセプト段階から初めて3ヶ月での仕上げ。
しかし最初の1ヶ月は超ゆっくりコンセプトを練り、実質最後の二ヶ月がCG作業。
しかも残り2ヶ月の時点で締め切りが1週間、残り1ヶ月の時点で、さらに1週間早くなった。
自分が担当したライティングは全部で5ショット。
1ショット約1週間だが、うち2ショットはフルイド(Pond)のシミュレーション、1ショットは爆発のアニメーションとモデリングを含む。
また、意味不明のエラーをさけるため、すべてのショットのアニメーションはジオメトリキャッシュしてレンダリングファイルはリグ無し。
この作業は実質、半日~1日かかる。
最終的には最後のショットは4日しかなかったが最後の一日はコンプ作業に当てるので出来るのは追加の修正ぐらいで
実質的にはレンダリング時間を含めて3日。(3時まで残業したのが、二日ありますがw)
しかし、この最後のショット「夕方の海辺の崖の上でロボットが大ヘビをノックアウトする」ショットは意外にも一番、楽しんでできた。
内容的に楽しめるだけでなく、シェーディングとパス分けで、いろいろとリアリティーを上げる工夫を試すことが出来たってのが大きい。
ロボットと大ヘビ(シーサーペント)という対比的な質感にもチャレンジできた。
といっても、学生でもやっている人は居る程度の非常に基本的な事しかやってない。
実際、学生作品のRabbitkadabra!の足下にも及ばないw
Rabbitkadabra! from Rabbitkadabra! on Vimeo.
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さて、この最後にやったショットは、もちろんロボットが主役。
基本的なテクスチャーはすでに、他のアーティストが作ってくれているので(これが大助かりでもあり、それ以上手を入れられないというジレンマもある)、自分はライティングとそのライトに合わせてシェーディングの調整をするだけ。
とはいうものの、アニメーションをジオキャッシュにしたクリーンなシーンファイルを作ったり、をアニメーションで服がめり込んだりしているのをクラスタで修正したりという作業は自分でやる必要があります。
最終的にはこっちで全部、尻ぬぐいをしてやる必要があるのですが、直すにはリグやアニメーションの修正が必要なものはそのままにしておきました。
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さてこの作業で決めた鉄則は
1)メンタルレイによるレンダーで各パスのレンダリング時間は10分/フレーム程度
(長くても15分、これはうちのレンダマシンの実用的、限界能力)。
2)メンタルレイ・シェーダーは遅くなるので使わない。(基本BlinnとLambertを使用)
3)テクスチャーには極力手を入れないでシェーダーでリアリティーを出す。
(フォトショを起動しているとメモリ問題で、Mayaの反応が遅くなったり落ちたるする事がある)
4)IBL、ファイナルギャザーは使わない。
参考にしたのは、最終的な自分の作品とは似ても似つかないのですが
コクピット内はガイキング:
(といっても光の具合と操縦席のごちゃごちゃ具合だけ参考。椅子と操縦桿以外のコクピットはただのスフィアに近くデティールは皆無。パイプを追加してあとは適当なテクスチャーとバンプマップだけしかできなかったw)
塗装の感じはこのマジンガーZ:
(反射の具合、オクルージョンなどの参考、あくまで参考。
汚れなどのテクスチャ系はやる時間なかった。)
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さてこのスケジュールではパス分けしないで、一枚物でキレイに見せる物を作ろうとすると試行錯誤のレンダリングにも時間がかかりすぎるし、最終的なレンダリングにも時間がかかりすぎる。
これはスケジュール的にも無理、微調整をMayaでしかできないとレンダリングのやり直しに時間がとられすぎてレンダマシンの時間が余計にかかる。
パス分けして微調整はコンプで行わないと無理。
パス分けしていれば一つのパスをレンダしている間に他のパスを作ったり。
パスのレンダーを他のマシンで実行できるので時間の有効利用も出来る。
ロボットのレンダリングのために作ったのは
●ビューティー(基本的なカラーとスペキュラ、シャドーがのったもの、反射は適当、環境反射は無し)
●リフレクション(完全な鏡状態で環境の反射を含む、Usebackgroundを使用)
●オクルージョン
●スペキュラ
●フレネル(もどき、SamplerInfoを使って擬似的に作った物)
●グロー(目などの光るところのみ)
コクピットはガラスになっているのでそこだけリフレクション、スペキュラ、フレネルを別レンダ。
できあがりはリアルと言うにはおこがましいですが、時間の割にはそこそこのものは出来たなと思います。
まずはBlinnを中心にスペキュラと色に気をつけてビューティーパスをレンダ。
そのレンダ中に他のパスを設定して別マシンでレンダ。
そんなこんなでなんとか間に合いました。
偶然にも以前の会社で一緒に働いたコンポジターが最後の1週間は参加しており、かれが自分のコンプを担当してくれることに。
その会社ではパス分けは当たり前だったので、安心して任せることが出来ました。
---<課題>------
ただ課題もいくつか残りました。
課題1:フレネル・パスはガラスには使えたがロボットのボディーには役に立たなかった。
(天に面した曲面はそれらしくなるのだが、地面や斜め下に面した曲面が明るくなりすぎる)
課題2:オクルージョンパスを使うと黒くなる。
これはこのショットに限らずだが、オクルージョンパスは黒と白でレンダリングしているせいか、全体が黒く汚れた感じになる。
コンプで透明度を50%にしたりカラーマットを作って物別にオクルージョンのカラーを変えてみたりしているが
根本的な解決策がそれでいいのかどうかがはっきりしない。
---<反省>------
プロジェクト終了後は定時で帰宅できたため、明るい夕暮れ時に車に乗ることができ、
まわりの車を観察する機会を持てました。
そこでいろいろと反省したり気づいたりしたのでそれもまとめてみます。
1)太陽光は基本的にオレンジ系、環境(空)の光で青い光が空間には充満している。
太陽光は夕方になるとオレンジ色が強くなる。
2)そのため強い光が当たっているところはオレンジ系。その光が届かない影の部分はブルーが入っている。
3)車のボディーの曲面で屋根などの天を向いているところはエッジが白いグラデーションが強くかかるが他はそれほどでもない。
自分の作ったフレネル反射(もどき)のパスは全方向に均等にグラデーションがかかっている。
これが使えなかった理由の一つだが、根本的理由はフレネル反射とは何かと言うことを理解してないことにある。
曲面の縁となる部分が白くなる効果だと思っていたが根本的に間違っているらしい。
映り込む環境にもよるのだと思うが使いこなすには、このグラデーションがだせないとリアリティーは出せない。
これは次回で追求してみる。
(車の反射については以下の写真を参考)
4)車のボディーに見える反射は一様ではない。
映り込んだ単一物体でも明確な部分とぼやけて暗くなっていく(ボディー色に近づいている)部分がありグラデーションがある。
自分のロボットの反射は一様であり、これがリアリティーの欠如を招いている。
もしこれを反射パスとグラデーションのパスでコンプで作り出せるなら早いのだが。
あと反射パスにバンプマップ入れ忘れた。しまったw
追記:完成作品は公開されたらまたおって公表したいと思いますが、クオリティーは自分なりにはがんばってますが、そんなにフォトリアルなわけではないので期待しないでください。
追記(2011/06/23):動画が正式に公開されたのでリンクをはっておきます。
担当ショットは、白鳥とパンダとのっぺらぼうと魚とお城のショット
メインの作業はライティングとシェーダー調整。
Fluidとお城の爆発アニメーションとカメラもやりました、
後は上記ショットの背景モデリングですね。
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