日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2012年8月10日金曜日

質問:「VFXアーティスト? 映像作家?のどちらを選択すべきか」


2年ほど前に「「映像作家」になることについて」というエントリを書いたのですが、それをご覧になった学生さんから質問を頂きました。
ときどき頂く質問なので、ちょっと考えをまとめてみました。
(というか、いろいろやりながら書いていたのでまとまってないかも知れません (^^;) )
 


Q: 「VFXアーティスト」になるのがよいのか、「映像作家」になるのがよいのか? 選択に迷っています。

A: 難しい質問ですねw 逃げるわけではないのですが、
これは自分自身にしかわかりません、そして自分が知っているはずです。
まぁそれがわからないので質問しているんだと思いますが、自分自身に耳を傾けて聞き出すしかないですね。


VFXの映像も、映像作品も、考えるだけではできあがりません。
またスキルアップをするだけだけでも、映像作品はできません。
「こういう作品が作りたい」という目的があり、それを行動に移すからできるのです。
そしてその「行動」の部分に決まり切ったやり方はありません、目的の映像を作るための効率の良い方法があるだけです。


そんなことはわかっているというかも知れません。
一般的なことですが、CGや映像の学校に通うという選択をした人には
学校に行ってコンピュータやソフト、カメラの使い方を学べば、なにかすごい作品が作れるようになるんじゃないか?
という漠然とした希望をもって入学し、卒業しても先生の指示でやった卒業制作が精一杯という人が意外と多いのです。
その卒業制作で自分のやりたい作品がつくれたのなら良いと思いますが、だいたいは漠然と習った映像制作のステップに従いながら思いつきで、こうしよう、ああしようと作っていっただけの物だったたら、その貴重な学生生活の時間はなんだったのかとがっかりすることになるかもしれません。


「よし女子高生が不安に思っていることを光の動きと色で示す映像を作るぞ!」とか、「渋谷にいるスーパー老人をテーマにしたショートフィルムを作るぞ!」という具体的な目標は行動に結びつきます。
「VFXアーティストになるぞ!」とか「映像作家になるぞ!」という目標もつのは楽しいことですが、自分は今これとこれとこれをなんとか作ってみたが、もっとうまく、もっと沢山いろんな作品を作りたいからその道を選択したいというふうであるのが理想的だとは思います。
(VFXアーティストでも、ハリウッド映画などにあこがれて自分もそういう作品にかかわりたいというのは、
立派な目標だとは思います。ハリウッド映画で働いている日本人のほとんどがそうかもしれません。)


有名な映画監督を含め、映像作家として有名な人達は「映像作家」になることだけを目標にしたのではなく、
自分の作りたい映像作品があり、それをずっとやりつづけるには「映像作家」になるのがよいから目標にしたのだと思います。

重要なのは、やりたい(行動に移したい)事であり、それに関連する行動です。

スピルバーグは、どうやれば映画監督になれるのかということにも悩んだかも知れないですが、それよりも自分が何を作りたいものが先にあり、それをどうやれば作れるのかを考え実行し続けて今の地位にいます。
日本でも庵野秀明とか、宮崎駿とか、マンガ家の多くもそういう人が多いと思います。
ティムバートンは元々アニメーターでした。
ハリウッドのVFX業界で働く人の中にも、自分の暇な時間を見つけては、自主制作映画を作る人もすくなくありません。
VFXアーティストだと、自分の時間を使い仕事では出来ないような表現を追求する人も居ます。

最初は稚拙だったり、真似だったり、素人っぽかったりですが、どんな批判されても成功している人達は、
それをやるのが楽しくてしかたがない。だから継続して次々とあたらしい作品を作り続けます。

「スピルバーグのジェラシックパークみたいな映像が作りたい。」とかでもいいので、やりたいことがあり、
絵コンテのやり方は知らないけど、とりあえず広告の裏に自分の撮影したい映像のアイデアを書いてみた。
カメラ無いんで自分のコンデジで撮ってみた。
CG習いたてなんで、へたくそだけどとりあえず恐竜入れてみた。
半年かかったけど何とか出来た。でもなんかつまらんな、次はもっとすごいの作りたいなぁー。
よし次はこうしよう。
この継続で、だんだん自分の考えを入れてオリジナル性がでてきて、世間に認められるというパターンは多いと思います。
ただ1年2年で、それができるひともいるし何年もかかる人も居る。
好きだから、やりたいことだから継続してやれるんでしょうね。


なんか話がそれてしまいましたが、作りたい物があるなら作り続ける事でおのずと道は開けてくるってことですね。
そして職業名で選んでも、作りたい物がなければ、達成出来ません。
職業で選ぼうとしても多分無理です。

まずは自分がなにが作りたいのかを見つけましょう。
この道を志すきっかけとなったことはなんでしょう?
どんなものに影響を受け、どんなものを作りたいと思ったのでしょうか?



ヒント:

「職種」で選択するってのは、ちょっと乱暴な言い方ですが、
小学生が「(日本で一番偉いから)総理大臣になる!」ってのとあまり変わりません。
小学生が総理大臣のやることを知っていてそれがやりたいから、言っているとは思えないですよね。

でも「大きくなったら屋台の金魚すくいのお店の人になりたい!」ってのは
たぶん、なんか屋台で働くことにおもしろさをみつけたんだろうなと推測できますよね。

ついでよくあるのが「パイロットになりたい!」
これはどうでしょうね?微妙です。
飛行機は飛ぶ物であることは知っているし、操縦桿を握ってコントロールする物であることぐらいは知っているでしょう。ようするに行動とその行動が生み出す物はしっているわけです。
ただ仕事としての「パイロットの業務」ってのをすべてしっているわけではありません。
おそらく「VFXアーティストになりたい」「映像作家になりたい」ってのはこの辺りのレベル出はないかと思っています。(自分を含めて)


この段階から一歩進めて、どうすれば選択できるようになるんでしょう?

映像作品ってのは多種多様な物があります。

映画
モーショングラフィックス
実写映像(フィクション? ノンフィクション?)
アニメーション(CG? 人形? クレイ? 手描き? 2D?)
(最近はやりの)プロジェクションマッピング

どんなものが自分が好きなのか、とにかくいろいろ見てみる。
そしてやりたいことを、やってみる。
行動することで、しか見えてこない物もあると思います。
考えるだけ、自分の気持ちを見つめるだけでは見えてこないのです。

作品を作るといっても大作である必要ありません、自分のいまのスキルでできるけど作りたい物でも良いと思います。
そうした作るという行為を通して、好きな物、そうでないものが少しづつ見えてくるとおもいます。
自分が本当にやりたい事というのは、作るという「行動」をし続けないと、見つからない物でもあるのでしょう。

そういう行動をしつづけることで、自分がやりたいことは、VFXアーティストの仕事だったのか、一本の作品としての映像を作ることなのかがみえてくるのでしょうね。


そして本来であれば、この道を進む前に自分の好きなことがある程度わかっているはずです。
それはなんだったのでしょう。




メールにも書かれていましたが、いろいろとこの業界で働いている方達と接触して、話を聞いたり現場を見せてもらうのは、非常にその助けとなると思います。





補足:
VFXアーティストといえども1ショットだけ、CGだけを考えていればよいわけではありません。
CGのことも幅広く、学生の間には学びきれないほどの大量の知識があります。
映像作家と言っても、どんな映像を作りたいのかによって、やりたいこと学ぶべき事は違ってくると思います。
両方とも学ぶべき事はたくさんあり、学生生活で学べることは一部だけだと思います。
限界がある中で、絞り込む方がより効果的になる訳なんですが、もう一つの選択肢もあります。

それはあえて決めずに、両方やるという事です。
学生のうちに両方出来るとは限りませんので、仮にどちらかを選択する事になるかとは思いますが、
それで将来のすべてが決まってしまうことではない。
自分次第でそれは変えることもできるのではないでしょうか?

ただし、就職してお金にならないと生きていけないので、とりあえず食って行けそうなレベルにまでいけそうな法を選択する。
そして、自分のやりたいものを作り続け、数年後になるかも知れませんが、仕事をやっていてふと自分の方向はこっちにしようと思うときが来るかも知れません。

その当たりも、自分次第です。
もしかしたら、そういうときは来ないかも知れません。

やりたいことを実行に移してやりたいものを作る。
その連続の中でしか見つからないのだと思います。


今は無料のソフトも沢山あり、PCも安いですし贅沢を言わなければ、VFXでも映像作品でも、作れる環境はあります。

その環境で、学校で教えてくれることをまっているようなら、もしかしたらそれが問題かも知れません。
多くの学校では、自分のやりたいことは教えてくれません。
絵コンテや、鉛筆画も含めて、ソフトの使い方など、ツールの使い方を教えてくれるだけです。