日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2013年12月19日木曜日

プログラミング言語勉強中

※12月9日:書籍情報と各プログラミング言語に関する画像を追加し、一部内容を変更しました。
また今回からAmazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

このブログ内で紹介した書籍で気に入った物がありましたら、このブログ内の書籍名のリンク(Amazon.co.jpへのリンク)からAmazon.co.jpで購入していただけると、数パーセントが私の収益となります。
ブログを続けていく励みになりますので、ご協力していただけるとうれしいです。
協力を望まれない方は、その限りではありません。

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ここ数ヶ月でプログラミング言語について、勉強しています。

自分のプログラミング言語の経歴というと学生の頃にBasic、そして10年ほど前にCASLIIを勉強したことはありましたが、いずれもさらっと一通り書籍を読んで勉強し、後は他の人の書いたプログラムを入力(いわゆる写経)をした程度です。
ここ数年はMelをちょこちょこ使っていますがこれは厳密にはスクリプト言語ですね。


今回は、CASLII(アセンブラ言語)の勉強し直しから始め、C言語、Processing、Sunabaという感じで勉強を続けています。
それぞれに良いところがあり、おもしろいところがあり、CASLII以外は並行して勉強を続けています。
ある程度区切りがついたらScratch、C++の勉強をする予定にしています。
ただ今更プログラマーになろうとは(なれるとも)思っていません。
(なれるのなら良いですがw)

プログラミングの勉強をする理由は色々ありますが大まかに
①プログラマ的な思考法になれる
②プログラミング対する抵抗感を無くす
③CGのスキルアップ
④電子工作、工作に使う
⑤将来の子供の教育
⑥コンピュータをより使いこなす
⑦論理的思考を鍛え、生活に役立てる

CG以外の目標があるのは、意外に思われる人も居るかも知れませんが、
プログラミングはそもそもコンピュータを使うための技術であり、CGはその中の一つの分野に過ぎません。
自分にとっては用途をCGに限定してしまっては、プログラミングの魅力が半減してしまって長続きしなくなることが目に見えているからです。

なので、あえて多くの目標を含めることで動機が続くようにしています。
もちろん欲張りすぎているので進歩していくスピードは遅くなるであろう事もわかっています。

②の「プログラミングに対する抵抗感を無くす」は自分にとって非常に大きな物です。
プログラミング的要素が多いCGに対する抵抗感にも関連しているからです。
抵抗感という言い方をしていますが、無意識下でおきる反射的な抵抗感も含んでいます。
これはCGの勉強する上で多くの機械の損失と、理解不能を招き、結果的に時間のロスになるからです。
それを駆逐することを目的としているので、単にプログラミングを勉強すればいいと言う物でもなく、その抵抗感が一つ一つなくなっていくことを、記憶ではなくて感覚として身につくことを早めることを目標としています。

子供に教えるというのは、やはりこれから先(というか現時点においても)、プログラミングは生活の中で重要な地位を占めていきます。
プログラマーにならずともその思考方法、そして電子機器がどのような原理で動作するのかを知っておくことは、仕事をする上でも重要な要素となる可能性があります。
もちろんコンピュータに関係無い仕事につく可能性もありますが、それらにコンピュータを活用できればより効率的に出来ます。
むしろプログラミングを学ぶと言うよりも、その延長線上にある「いかにそれを生活に活かしていくか?」ということを教えていく事を重視しています。
実際に子供が勉強する年齢に達したときに始めていたのではおそすぎます、よりよいサポートをするには自分自身が、いまから試行錯誤/体験していくことが必要ではないかと思います。

ではCGに関してはまったく意図してないのかというとそうではありません。
むしろその逆です。
CAではVFXの仕事は少なくなっており、より優秀な人でなければ仕事はとれなくなってくるでしょう。
そのためにスキルアップは欠かせません。
プログラミングの勉強が役に立つ事はあっても役に立たないことはないでしょう。
今まで理解出来なかったアルゴリズムを理解するだけでも、CGソフトを使う助けになります。



<CASLII>
まず最初に手を付けたのは「CASLII」でした。
アセンブラ言語はCPUの内部の動作、メモリ動作を強く意識する言語です。
これを最初に選んだのは、以前一度勉強したことがあり、その時の疑問を今解決することで
プログラミングにおける自信を回復する一助とすることでした。
また、MelやGUIのソフトを触り続けていたことで失われた「ハードを意識する」感覚を呼び戻すこともこの言語を選んだ理由です。
ただCASLでいろいろなプログラミングができるようになることは目標ではなく、
あくまで「疑問を無くすこととハードの動作を理解すること」だけのための勉強です。
CASLは情報処理試験用に作られた仮想コンピューター用のアセンブラ言語なので
その当たりが非常にシンプルにできており、最近は無料のエミュレータもあり
コマンド一行ごとにCPU内部の動作がどうなっているのかを目で確認しながら勉強できるという利点があります。
たとえば、今回は以下のWCASL-II-シミュレーターをつかいましたが以下のような表示が出来ます。

メモリ、ALU(演算装置)、FR(フラグレジスタ)、GR(一般レジスタ)など、ハードで実装されているものがアセンブラ言語の命令でどのように動作するのか(変化していくのか)を目で見て確認することが出来ます。
こういったコンピュータの内部動作を実感しておくことは他の高級言語を勉強するときに内部動作のイメージがしやすいので、ストレスが減ります。


Webにあるチュートリアルなどで一通りの動作を勉強しました。
チュートリアルは上記シミュレータを提供しているページにあるチュートリアルを行い、
その後、検索して見つかった練習問題をいくつかやりました。
http://www.ics.teikyo-u.ac.jp/wcasl2/
さらっと一通りのことをやるだけなら、だいたい1週間ほどでできます。
がっつりやりたいなら情報処理試験関係のサイトや書籍がたくさんあります。


<C言語>
どうせやるならC++だろう?という意見もきかれますが、いろいろ相談した結果
C言語をまずやっておくほうがよいということになりC言語から始めました。

利用したのはWebサイト「苦しんで覚えるC言語(通称:苦C)」です。
(書籍も販売されているようです 「苦しんで覚えるC言語」  )

C言語はコンパイラとよばれるソフトが必要で、これは現在Microsoftから「Visual Studio Express(以下VSE)」という無料の開発環境が提供されています。
こういった開発環境はバージョンが違うと動作や操作方法がちがったりでチュートリアルによっては初心者はプログラミングを学ぶと言うこと以外のところではまってしまいます。

その点「苦C」は独自の開発環境が無料で提供されており、書かれているとおりの動作が確認できるので、非常に助かりました。




















ネット上で無料で利用できるC言語入門サイトというとこの「苦C」と「猫C(猫でもわかるC言語)」が有名なようですが「猫C」のほうはVSEを使用しての説明なのですが、ややバージョンが古いものを使用しているので、そういったことを気にしないで済む「苦C」を選びました。
( 「猫C」も書籍版が販売されています。「猫でもわかるC言語 」 書籍版は未確認ですがバージョンがアップデートされている可能性はあります。)

ただ将来のために、少しずつ馴れておくために並行してVSEも使用しました。
苦C開発環境で実行できたものをVSEのほうで使ってみて、動作しない場合は原因をネットで調べて、違いを補正しました。
これにより自分のプログラミングが間違いないことを確認しながら、VSEがどのように一般的なものと違うのかを理解することが出来ますから、あまり時間を無駄にせずに済みました。

C言語の前にCASLを勉強したことでメモリを意識するポインタについては理解しやすかったです。
C言語をやることで、良かったのはMelに対する理解度が高まったということです。
Mel自体がC言語を元に作られているので、当然なのですが、MelとC言語の共通点や、そうでない部分が理解出来ると、Melがなんだか特別な物には見えなくなってきます。
以前のような抵抗感はかなり少なくなったのは事実です。
こんなことならもっと早くにやっておけばMelの上達も早かっただろうと思ったほどです。

苦Cは第一部と第二部があるのですが、とりあえず終わったのは第一部だけです。
というのは終わり頃には、理解よりも記憶することに気をとられすぎていたのでこのまま進めても仕方がないと思ったからです。

どちらにしても経験から、どうせ一度やったところで覚えきらないのはわかりきっていたので、今回はここでおわりにしました。
Webから学ぶということは可能なんですが、やはり書籍のほうがじっくり取り組めます。
今は「定本 Cプログラマのためのアルゴリズムとデータ構造」 を購入して届くのを待っています。



<Processing>
Processingはビジュアルアートのためのプログラミング言語です。





















Processing」で検索すれば静止画も動画もたくさんみつかります。
どちらかというとVFXというよりはモーショングラフィックス系の映像が多いですね。
参考:「Beautiful Motion Graphics Created With Programming: Showcase, Tools and Tutorials

Houdiniのチュートリアル「VEX Wrangle Workshopを見ているときにそのチュートリアルで使われているある「方程式」は「Generative Design」 という本を参考にしたと言うことで紹介されていました。

しかもこの本「すげーいいから」とお勧めといっています。

Processingの存在は以前から知っていたのですが、これで「そうか!」とひらめきました。
Houdiniなどをやっていてこれはモーショングラフィックス系の動きをだすには便利だろうなとおもっていたのですが、そのアルゴリズムというか、そこでつかわれる方程式をひとつひとつ独力でさがして、学んでいくのは大変だなとおもっていました。

しかしProcessingならその道が短縮できそうだとおもったのです。

その理由はProcessingは簡単かつ非プログラマーの方にも広く使われ、どちらかというとモーショングラフィックス、もしくは複雑なプロシージャルな形状を生み出すためにつかわれている事例が山のようにあると言うことです。


もう一つは、映画のVFXのみに絞るのであれば、直接的には役に立たない可能性もありますが、やらないよりはやっていた方が理解は深まります。
LAで生き残るにはモーショングラフィックス系の能力は役に立つと思います。

それらのスキルアップを早めてくれるという期待もあります。


Processing自体、他の言語を勉強したことがあれば非常に簡単です。
Melスクリプトより簡単な気がします。(まだ深いところまで流行ってませんのでわかりませんが)
なので基礎の勉強は、すぐに終わりました。
利用したのはProcessing公式サイトのチュートリアル
 もう一つはこちら「Processing入門講座
Processingは他にも数多くの入門サイトがあります。

勉強していると、画像の処理の仕方とか昔懐かしいベーシックを思い出して楽しいものでした。

一通り触ったので、今は一旦中止して、買った本「ジェネラティブ・アート -Processingによる実践ガイド」 が届くのを待っています。
先ほどおすすめといわれた「Generative Design」とは違います。
理由はGenerative Desginは英語のみ。ジェネラティブアートは日本語があるからです。
またAmazonでも、プログラミングではなくそれを使った表現に主眼があるという旨のことが書かれていたからです。
Processingの文法的な物はおそらく独学でも問題なく、むしろそういった点を学びたいとおもっていたからこちらの本を選びました。
またこの本を読了できたら、Processingにもなれたころだと思うので英語の「Generative design」に手をだしてもよいのではないかと思っています。
それ以前に手を出したらただの金の無駄になりそうなので...。


どちらにしても、Processingは画像処理におけるアルゴリズムや方程式を学ぶために勉強を続けようと思っています。


<Sunaba(砂場)>
この言語を知ったのは平山尚氏の著作「プログラムはこうして作られる―プログラマの頭の中をのぞいてみよう 」からです。
「初心者がプログラミングを勉強する」という限定された用途においては非常に良くできた言語だとおもいます。
プログラムの入力にはWindowsのメモ帳を使い、実行はダウンロードしたSunabaにドラッグ&ドロップするだけです。













アセンブラ言語においてはCASLが非常にわかりやすいものでしたが、C言語などの高級言語においては、このSunabaはCASLに匹敵するぐらい、シンプルかつわかりやすい入門用言語ではないかと思います。
このプログラミング言語についてはサイト「プログラミング言語Sunaba」で説明されています。
プログラマ人生の最初の100時間を過ごすための言語です。 100時間経ったら他の言語に行く前提なので、極めて低機能です。 

正直、日本語で入力するプログラミング言語は以前に触ったことがあるんですが、初心者がじっくり読んでいくにはわかりやすい面もある反面、入力はしづらいんですよね。
ぱっと見もわかりにくいし。でもこの本を読みながら、さわってみてるとなるほどなという感じがしました。

自分は、かなり良い本だとは思うのですが、中途半端に「変数」とか知っているとちょっと抵抗感がある表記もあるかもしれません。
念のため他の方の書評も。>リンク


前々からこのブログでも「変数とは何か?」とか普通の人はこだわらないようなことを突っ込んでいろいろ調べたりしました。
というのも専門用語の概念をつかみプログラミングの本質の部分をうきぼりにしたい、それを身に付けたいという考えがあったからです。

この本は、まだ途中までしか読んでいませんが「変数」「Forループ」などをそういった言葉をつかわないで、その概念を説明しきっています。
正直言ってプログラミングの入門書でそんなことができた本はこれ以外にありません。

よく「やさしいC言語」「はじめてのプログラミング」「これでわかる○×」とかそういった本がありますが、だいたいイラスト多めで簡単そうに見えるけど実際には専門用語がいきなり説明抜きででてきて初心者は戸惑うことも多々あります。
そういった本でプログラミングを難しいと感じ、挫折した人にはお勧めです。
正直、自分はその手の本で何度も挫折感を味わいましたが、この本を最初から手にすることができたら簡単とは言わないまでもずいぶんと助けにはなったと思います。

逆にそういった入門書でも問題が無かった人には逆に回りくどすぎるでしょう。

この本は専門用語を使わずにプログラミングに必要な言語を説明しています。
たとえばForループで入れ子をするには、どういう順序でかんがえていけばいいのか「For」も「ループ」という言葉も出てこないのに、手取り足取りという感じでひとつひとつの思考手順を説明してあります。
「変数」とは箱みたいな物でという説明がないどころか「変数」という言葉も数学での例を示すときを除き出てきません。
通常、先生や講師がそこは自分で考えるべき!というところもしっかり説明してある感じです。


個人的には、画期的な本だと思います。
出版元にはこの本の第0章がPDFで無料公開されています。



<これから>
こんなに短期にいろいろな言語に触っていると混乱するんでは?
と思われるかも知れませんが、とりあえず一通り触っていくこと(チュートリアルを一通り追えること)だけに絞っており、その言語でずっと作り続けているわけではないので、問題はありません。

むしろ様々な言語をさわることで共通点と違いがはっきりとしてきました。
これにより「プログラミング言語」そして「プログラミングという行為」自体への理解が深まり抵抗感が少なくなりました。
とりあえずは目標の一部は達成しつつあります。

もちろんここでの理解は概念的な部分で「実際に動作するプログラムがかける」ということは違う次元のことです。
ちゃんとしたプログラミングが出来るようになるにはまだまだ時間がかかると思いますが、
これは自分には必要なスタートラインです。


さて、これからしばらくは「プログラムはこうして作られる」を読み終わるまで進めていきますが、合間を見てScratch、Aruduino言語、その後はC言語とProcessingの勉強に戻り最終的にはC++の勉強に進みます。

Scratchは子供向けのプログラミング言語で、コマンドがブロックになっておりそれを組み合わせてプログラミングをするものですが、少し触ってみた感じでは、それぞれの要素の関連性を感覚的に理解するには非常に良いと思いました。
自分が今までのプログラミングの勉強でできなかった感覚的な理解を深めるために一度触っておきたいと思っています。













(上の画像は「Scratch始め方ガイド」より引用)

AruduinoIDEは、最近の電子工作でよくでてくるマイコン「Aruduino」をコントロールするための言語で、Processingベースと言うことなのでさほど苦労はしないのではないかと思っている。

Dec29/2016追記 : 
Arduino言語はProcessingを元にしているので似ていますがベースの言語は違います。
 JAVA >>> Processing言語
 C++  >>> Arduino言語
Arduino言語はC++言語コンパイラに独自のライブラリを追加し、簡単に記述できるような工夫がされているものらしいです。そのためC/C++の記述を使うことができます。
ベースとなったProcessingの言語がJAVAであり、ArduinoIDE自体がJAVAで作られているためにArduino言語もJAVAという誤解されているようです。

ファイル:Arduino IDE - v0011 Alpha.png
(上の画像はWikipediaより引用)
ただ目的は、電子部品のコントロールなので、他の言語とは多少違う使い方があることを期待している。
これもプログラミング言語に対する理解を深めるには役に立つし、何よりいろいろと楽しそうだ。



また、これと並行してMayaでのR&D、Houdiniの勉強も進めたいと欲張っていますw




2013年10月26日土曜日

258 days later


近況報告をかねて、
## R&H倒産から今まで ##

<<電話>>

2月10日日曜日、夜8時ごろ。突然の電話がかかってきた。
R&Hの人からで明日は来ないでねの一言。
1週前の全社ミーティングでも会社の危機は伝えられ、倒産の話も社内に飛び交っていた、給料も支払日には支払われなかった。
そのタイミングで、この時間の電話。

電話の主も倒産することについては何もふれなかったが、明らかに日曜日のこの時間に電話をかけてくるのはおかしい。
すぐにいろいろとサイトをしらべてみるとどうやら翌日月曜日に、民事再生法を適用するらしいことがわかった。

・・・レイオフを覚悟した。


<<レイオフ>>

民事再生法の書類がすぐにそろえられるとは思えないので、弁護士と相談して前々から準備してたのだとは思う、実行の時はぎりぎりまで待っていたのだろう。
しかも皆に知られると都合が悪いのか、DDの時もその日まで誰にも知らせられることはなかった。
実は、前振りはあった。
実は契約期限は2月までだったのだが、その後も継続して欲しいと担当からメールがあった。ただし、契約書に関しては更新が間に合わないので、数週間はそのまま継続してでやって欲しいと。
契約書の期限変えるだけなのに変だなと心の片隅に少し引っかかったのだが、まぁ大企業でもこの業界ならそれもあるかと思い、快諾した。
実際の理由は、倒産するかしないかの瀬戸際だったということだろう・・・点が線でつながってきた。

そして翌日月曜日にChapter11のファイリングが公式発表された。
個人的には今あるプロジェクトは無事終わりまでやるだろうと高をくくっていた。
むしろDDの倒産があり、そうでなくてもアーティストがあふれている時期だった、自分達より早めプロジェクトが終わる人達はすぐに職探しをしなくてはならないので大変だろうなと思っていた。
でも、現実は逆であった先にレイオフされたのは自分の参加していたプロジェクトの方だった。(各スタジオにプロジェクトを終わらせるための借金をおねがいしていたのだが、自分のプロジェクトのスタジオは、それを拒否したのである)
そして、自分の参加していた「300」は他の会社にまかされることになった。

土曜日にちょうどよい感じになったシミュレーションのレンダリングをセットして、月曜日にそれを確認しようと思っていた。
未だにそのレンダリングがどうだったのか気に掛かりますw

こうして初めての大手プロダクションでの本格的な映画プロジェクトへの参加は突然の幕を閉じることになった。



<<行動>>
さてこういうときはどこからか仕事の話が来るのを待っていてのんびり構えていては生きていけない。
まぁ元々、2月までの契約だったし、延期がなくなっただけである。
発想の転換をすれば気が楽だ。でも最後の一ヶ月分の給料が出ないのはかなりきつい。

しかも家賃を含め、何もしなくても出ていく出費は存在する。
今すぐ仕事を始めても最初の給料が入るのは早くて2週間後である。
すなわち1ヶ月半は収入無しでやって行かなくてはならない。
しかもすぐに就職活動を初めて、明日から仕事が出来ることなど、複数の会社でフリーランスワークをしたことがある人でなければ、まれである。


我が家は、緊急態勢をしき、まずは押さえられる出費はすべて抑えるようにした。
これは数字の問題である。
しばらくは買い物などできるだけクレジットカードを使い、月々のクレジットカードへの支払金額は最低支払額にした。
保険は子供だけ加入。
先が見えないので9月からの新学期は子供の学校を出費がかからない学校に変えることにした。
そしてネットを使っての職探し、まぁわかっては居たけれど、

・・・職はなかった。



<<救済>>
その後、以前の勤務先の人が心配して電話してきてくれ、1ヶ月半ほどのプロジェクトに参加することができた。
その間にZOICとDDに応募。
DDの返事は悪い物ではなかったので期待していたが、どちらもすぐに仕事というわけではなかった。しかしZOICは早めに仕事があったのでこれも何かの縁と決定。

まぁもとのフリーランスに戻ったというか、短期の仕事で食いつなぐ本格的なフリーランスとしての経歴がはじまった。
もう1社、以前の勤務先で1週間程度の仕事を間にはさみ、@Keiyoneoka氏(←Twitter名)のご厚意で日本からの仕事をすることも出来た。
最近も知り合いからのつながりで日本からの仕事をすることが出来た。

今までの8ヶ月間、そうやって何とか生き延びてきた。
日本からの仕事がなければ、仕事がなかった期間は最長で連続一ヶ月に及ぶ。

まぁ本来のフリーランスのような状況に戻ったわけですが、一ヶ月先はどこで何をしているのか、全く見えない状況はずっと続いています。
ひょっとしたら仕事がないかも知れません。

平均すると大体、一件、2~3週間ほどの仕事なんですが、仕事している間は世間に仕事が無いってのは嘘のような感じで忙しい。
大手でずっとやってきた人に税制優遇措置で危機に陥るという話をしても、なかなか伝わらなかったのも理解出来ます。

これ正直、クビにならないと自分のこととしては実感できません。
自分の会社がつぶれるかレイオフされない限り、大手が一つつぶれたぐらいじゃわからんのですw
特に正社員で長年やっている人には伝わらないと思います。

今でも他の国でやっている人は、日々の多忙さにおわれ、何かやばいことがLAで起きているぐらいには感じても、さすが将来のことを真剣に考えるほどの実感はないと思います。
イギリスやカナダで国からでたことがない人などはウハウハぐらいじゃなぢえしょうかw
今回はLAでしたが、実際の所、その数年前にはサンフランシスコの会社がよく倒産してましたね。
最近ではカナダのPixarが閉鎖、そろそろカナダにも飛び火したんでしょうか。
バンクーバーどうなの?という感じですね。



<<レイオフの嵐>>
R&Hの後にLA近辺で起きたことと言えば、
DWAさらに大量解雇
SonyImageworksもけっこう解雇(orカナダ支部へ)
DDもLAを縮小(アメリカ国内ではCMをメインに製作)
HydraulxもLA縮小、アーティストはほとんどおらずカナダなどの支部で制作。
ついでにゲーム業界ではEAも大量解雇。
他にも数社あったような気がしますが憶えきれないぐらい解雇、解雇の連続でした。

さすがにLAには行き場を失ったアーティストがあふれかえり、みな真剣に椅子取りゲームを始めたみたいです...。
まぁこんなんなっても、「いつものことでまた夏になったら仕事が沢山出てきるよ」と若干冷や汗流しながらも楽観視している人もいましたが。
さすがに今はそういう人達も焦っているのではないのでしょうか。

自分の知り合いも、こちらでの仕事はあきらめて、サンフランシスコや、イギリス、カナダなど他国に仕事を求めて出て行ってしまう人も増えてきました。
その数もけっして少なくありません。
LAにいても映画だと仕事はほとんど無いですからね、特にミドルクラス以下の人にはよっぽどラッキーでないと無理だと思います。シニアクラスでも大変ですからね。
これ実は今年初め頃に、ちょっと推測してたんですが、見事はずれました。
https://twitter.com/melonVFX/status/294311585931993089
https://twitter.com/melonVFX/status/294312319150874624
10年どころか、今年がそれでしたw



<<移住か?>>
可能ならば、大手の仕事がある場所へ行くのは良いと思います。
今までの事から考えるのは、こういうときは早めに発想を転換してリスクを背負った方が
後々よい事につながります。
時間がててば経つほど、大手の仕事に入り込むのは難しくなるし、プロジェクトで活躍する場も(スキルにも寄りますが)メインのところから脇役になってくる。
ミドルクラス以下なら経験も積めるし、経歴になるし、何より楽しいし。
やっぱり映画の仕事は技術にしてもアート面にしても優れた人の作業に直に触れることができるので向上心がかなり刺激されるんですよね。はっきり言って楽しいです。
仕事も大量にあるところなら嫌になるほどおもしろい仕事が出来るので良いんじゃないでしょうか。


まぁどうやって統計とったのか知りませんがLAに数千人いたVFXにかかわる人達の人口は、今や数百人に減少したという話もどっかで(ツイッターだったかな?)で見たことがあります。
今、LAに居残っている人はどんな人なんでしょうね。
実際に本人から聞いたことと、推測した事をとりまぜてみると
1)家を持っている。
2)子供の学校のため、親が反対するなど家族の理由
3)Visa/グリーンカード関係で外に出たくない
4)その他の理由(CG以外にアーティストとしての活動をしているとか)
5)海外に住むは嫌。LAが好きなので海外には出たくない
6)めんどくさいから。別に映画の仕事がメインでなくても仕事あるならそれでいい
7)年間半分ぐらいはたらければ、別に食っていけるから良い
8)その他
こんな感じでしょうか。


自分は色々な理由から、今海外へ出るのは自分にとってメリットが少ないと思えるからです。
上にあげた以上に問題もあるんですが、他にもいろいろな理由があります。
10年後に何がしていたいかということを考えた時、今より少し向上したぐらいでは、意味がないんですよね。
CGを捨てるという意味ではなく、CGも含めて飛躍的に向上したいん。
それには企業に振り回されて、お金を失う働き方はしたくないというか。
今は税制優遇措置で持っていますが、それもいつかは限界に届く可能性がある。
そうするとまた他国へ移っていく。それが2-3年の周期で起きたら、金銭的には、はっきり言ってかなりキツイ物があります。

まぁ劇場映画の経験ができないってのは非常にデメリットなんですが、すべてをなげうってまで、その経験をためていくメリットが今現在のスキルセットでどれだけの意味があるのか?っていう疑問もあります。

まぁLAにいて劇場映画に関われる可能性は0か?といわれるとそうでもないです。
限り無く低いけど0ではありません。
まぁそれに2%ぐいらいの望みは持っていますw

他にも、いろろな理由を考えた上での結論ですが、判断材料がすべてはそろっていないうちでの決断ですし、未来永劫、現在の考えに固執するつもりもまったくありません。
納得できる材料があれば、明日でも正反対の判断を下す可能性は120%ですw

あと、なんかマイナス材料が増えて、不可能と言われれば言われるほど燃えて抜け道をさがすのが楽しいってのもありますねw (趣味かよ!)




<<将来>>
このVFX産業の過渡期はしばらく行き場を求めてさまようような気がします。
ではLAでのVFX産業は、元に戻るのでしょうか?

個人的には、実際LAの仕事の状況は少しは改善される可能性な低いながらも皆無ではないとは思うのですが、この状況が長引いてあと5年もすれば他国に立派なパイプラインとアーティストをそなえたプロダクションができてしまうでしょう。
そうなると競争力という点では不利になります。

改善されるかもしれないとい言っても、それに期待してLAに残り続けているわけではありません。

起きていないことは、99%あてしていませんw

LAでVFX業界に対して期待はしてない、というか期待は持てません。
特に映画産業に関しては。



今、仮に国内の映画スタジオが各国の税制優遇措置を利用していることは国際商取引法に違反しているということになり、規制がかかったとしましょう。

実際にその動きはでています。(カリフォルニアの人は必見、是非参加しましょう)
追記:これは国際商取引法に違反しているということ告訴するための物ではありませんが、海外の仕事への流出を押させようとする活動です。
http://vfxsoldier.wordpress.com/2013/10/07/how-you-can-help-demonstrate-domestic-vfx-industry-support/


それで状況は改善するでしょうか?
多少なりの改善はあり得るでしょうが、元のようにいつも映画の仕事が切れ目無くつづくという在りし日の状況には戻らないと思います。

スタジオも馬鹿じゃありません。
そもそも少なめの予算で、もっと大きな予算規模の作品がつくれるというおいしい状況に馴れきっているので、そこから正常な姿に戻れるのかというとそもそも無理な気がしますw

きっと、あの手この手を尽くして、安い海外の会社を利用する方法を模索するでしょう。
彼らは腕の良い弁護士を雇っています。
弁護士は法の抜け道の専門家でもあるので、必ずやうまい手段を見つけて安くできる地域へ仕事を流し続けるでしょう。

税制優遇措置ではなく低い人件費でうごいているインドや中国のスキルがそれまでに飛躍的に向上していれば、そちらへ仕事が流れていく可能性もあります。
(ここでいうスキルは個々のアーティストだけではなくて会社としての生産に関係する全てのスキルを含みます)


まぁそれでも、うまくいったとして。
他国で処理できる限界があるので、いくつかは国内のVFXプロダクションに流れてくるようになる可能性はあります。

各国のプロダクションが作るハリウッド映画という現代のVFXレースに、やっと本場カリフォルニアのプロダクションが参戦できるのです。
ドーピングは無しです。
公平で、正常なレースが始められるようになるわけです。


さて仕事がLAに戻ってきたとしても、すぐに以前とおなじ状態で同じクオリティーのVFXが生産できるわけではありません。
多くの会社は、主要なメンバーを手放したり海外支部へ送っています。

国外へ出て行った優れたアーティストが戻ってくるには時間もかかるでしょうから、当面は国内に残っている人達でなんとかやりきる必要があります。

まぁ大抵のVFX会社は、海外に支部をもっているのでそちらでやるならさほど問題はないのかもしれません。
国内で再度アーティストを大量に雇うというリスクをとれるのかというと難しい可能性もあります。
数年経てば、それまでのマシンもチープな物になってしまいますから、新たに買いそろえるだけの予算も必要です。
R&HもDDも縮小してしまったのを元のサイズに戻すのは難しいでしょう。。
某会社では仕事がとれてもあたらしいアーティストはLAでは雇えないと聞きます。

まぁこう考えるとカリフォルニア内のVFXプロダクションが会社としては生き残ることはできても、アーティストにとって仕事があるかというのは、少し別の話になるかもしれません。

ただ良くも悪くも何が起きるのかがわからないのがハリウッドでもありますw



<<生き残りをかけて>>
暗い話題が続きますが、実はCG=ハリウッド映画という考えから一歩はずれると、そこには仕事が皆無というわけではありません。
CG自体にはまだまだ可能性がありますし、これから増えてくる仕事もあるでしょう。
贅沢言わなきゃ食いブチはあるよって事です。

当面、LAで生きていくためにはその道を積極的にたどるのが得策でしょう。

それはフリーランスでも生きていくための方策と言うことになります。

まずは短期でも雇ってくれるところをみつけ、そこで結果を出し信頼を得ます。
次の時も声をかけてくれたら、しめた物です。

こういった所をトータルで5つぐらいを目標にします。
自分は現在、LAで二カ所、日本で一カ所ですかね。
あと二カ所ぐらい、そういったお得意様をふやすことができれば、ほぼコンスタントに仕事ができると思います。

LAにはもう大手は少ないですから、こういうフリーランスの仕事は、ジェネラリストになりがちですが、スペシャリストでも皆無ではありません。
よほど小さい所では、一つのプロジェクトで最低でも1週間、長ければ1ヶ月半ぐらいでしょうか。
仕事としては、CM、TV、ミュージックビデオが多いですかね。

このように短期だと二カ所だけでは間(休んでいる期間)が開いてしまうことがありますので複数箇所、必要になります。
ただ自分のようなミドルレベルだと、911で呼ばれることが多いので、忙しいんで疲れてしまいます。
911ってのはプロジェクトが締め切りに近づき動員される追加要員のことです。
911はもともと日本の110番と119番を一緒にした物で、警察、消防署への連絡に使われる緊急通報用の電話番号です。
要するにプロジェクトが一番忙しくなった時期に、そのプロジェクトを終わらせるためによばれるので、仕事量もはんぱではありません。
こちらでは基本的に残業はほとんど無いのですが、それでも残業が続くこともあります。

もうちょっと安定したところを探すなら、ゲーム業界ですかね。
これからは映画制作にもリアルタイムの技術は増えてくると思うので、良い勉強になるかも知れませんw
意外と知られてないような会社でも、結構な人数を雇っているところがあります。
自分も良いところがあれば狙っています。
長期で安定していれば時間がもてますので勉強時間もとれるし、気分的にもゆとりが出来ます。悪くない選択肢だと思います。

日本からの仕事は、こちらで仕事がないときにやることもできますし、睡眠時間を削ることを覚悟すれば掛け持ちも不可能ではありません。
こちらの会社ふたつから誘いがあっても、期間が同じなら一つは断るしかありません。
しかしながら、日本の仕事は自由に時間が使えるので、上記のように睡眠時間が減ることや徹夜を覚悟すれば不可能ではありません。
その場合、スケジュール上、一日ほど前倒しして計算した方が良い事があります。

あと日本にこだわる必要もありません。
知り合いはサンフランシスコにいますが中国の仕事を自宅からやっています。


2013年5月6日月曜日

プラグイン: PhonexFD & FractureFX

ここ10日ほど、FractureFXをずっと使っていたのだが、最近のプラグインは一昔前に比べて完成度が高くなった。
以前は、Mayaで破壊というと、Blastcodeぐらいしか無かったように思うが結構制限が多く手使いずらく、結局は破片だけ作ってあとはそれをパーティクルインスタンスに変換して使うという方法に落ち着いてしまった。

FractureFXは元となるジオメトリさえしっかり作ってあれば、多少、重いがシミュレーションをプロシージャルな方法でコントロールできる。
シミュレーション後にテクスチャを作るのも自由にできる。
今回使ってない機能もあるので、いずれはもっと極めてみたいと思わせるプラグインであった。
FractureFX: http://www.fracture-fx.com/



さて今日からはPhoenixFDでFluidシミュを始めることになった。
昨日までやった破壊のシミュレーションにダストを付け加える段階でこのプラグインを使う事にした。
実際に触ったのは今日一日だけなのだが、基本的なアトリビュートはおそらくどのFluidシステムもそんなに変わらないし、むしろMaya純正のFluidより少ないぐらい。
デフォルトの設定でなかなか良い感じのシェーダーがついており、素人ならキノコ雲つくってにんまりすることだろうw

今回は炎は殺し、煙の機能だけを使うのだが、大まかなな動きを作るのはさほど時間がかからない。
あまり巨大な物を作ってないのもあるのだが、スケール設定が容易で、コンテナを3倍ぐらいにしてもほとんど速度が変わらないので作業がしやすい。

慣れていないせいもあり、細かい微妙な動きを作り出すのにはすこし時間がかかったが、それをささえてくれたのがGPUプレビュー。
PhoenixFDに組み込まれているシェーダーはなかなか良い感じなのだが、ビューポートで見ると細かい三角の集まりとして表現されている。

GPUプレビューのチェックボックスをONにするとこれがたちまちきれいなFluidになる。
もちろん、さほど高い解像度ではないのだが、シェーダーが優秀なのか、あまり高い解像度でなくともそこそこのデティールがでてくれる。
GPUプレビューのすごいところは、MayaのLightの影をリアルタイムで反映してくれること。
ビューで見ながらLightの向きを変えると影がその移動に応じて動き、即座に雰囲気をつかむことが出来る。
ローレゾであればレンダリング画像もさほどかわらない。
ちなみにPhoenixFDのレンダリングにはV-rayが必要だが、PhoenixFDを使っているだけならV-rayの設定もほとんどいじることはなかった。

全体の印象としては、細部のコントロールに関しては、大手プロダクションのインハウスツールとまでは行かないが、その分、自動で処理してユーザーの手を煩わさないでそこそこのものを作れるようになっている。劇場映画ほどのクオリティーを必要としていない物を作るには向いていると思う。
自動で処理される分、どこかCGっぽさは残ってしまうのは仕方がないのかもしれない。
ただこれはまだ一日しか使ってないのでよくわからない。劇場映画のクオリティーに十分対応できるほどのポテンシャルを秘めているのかも知れない。




炎や煙だけでなく、水も泡までつくれるらしいので、この手軽さでできるなら、最近クオリティーがあがってきたTVのプロダクション需要には充分こたえてくれるのではないかと思った。

PhoenixFD: http://v-ray.jp/phoenix.shtml




2013年2月23日土曜日

VFXオスカー・デモンストレーション

 明日、2013年2月23日(日曜日)、VFX業界初のデモンストレーションが行われます。(詳細はこちら


このエントリは、より多くの日本人の方、そして業界関係者だけでもなく一般の方にその意味を少しでも理解していただくために、若干説明をしておきたいと思い書きました。
広く広めて頂ければ幸いです。



そのデモンストレーション「Piece of the Pi Protest」を呼びかける、Faebookのサイトで使われて居るのが下記のバナー(?)です。


 ここに書かれていることを訳してみました。(誤訳があったらすみません)
 ライフオブパイ(Fox)、スノーホワイト(ユニバーサル)を合わせた全世界総収益、約10億ドル。
リチャードパーカー(虎)に生命を与え、アカデミー賞にノミネートされたこれら二つの視覚効果の大部分を作ったリズム&ヒューズ社は、最近破産申請をしたところです。

これらのエフェクトを作るために夜も休日も働いた多くのアーティストは仕事を失い、Foxとユニバーサルの配給する新しい大作映画のために働いた数週間の給料(残業と休日出勤代を含む)は未払いのままです。

改善の時がおとずれました。

**25周年記念のR&Hのマーク


 このバナーに使われて居る虎の写真は今年のアカデミー候補でもある「ライフオブパイ」にでてくるリチャードパーカーという虎です。
映画の1シーンで、獰猛な虎が弱り切って 主人公のパイがアタマを持って膝に載せてもされるがままとう状態で涙を誘うシーンでもあります。
そして弱体化し破産したR&Hのイメージがかぶります。




一般の方のためにもう少しわかりやすく説明します。

 明日、2013年2月23日(日曜日、この日はハリウッドのコダックシアターで恒例のアカデミー賞受賞式が開かれます。コダックシアター周辺の道路は閉鎖され、入り口にはセレブが入場するための赤絨毯がひかれ報道陣に埋め尽くされます。

華々しいこの受賞式は多くの監督や俳優達に与えられる賞だけでなく、視覚効果(VisualEffects)に関連する賞も授与されます。

  ここで、一般の方にわかりやすく説明すると、「視覚効果」とは英語で「Visual Effects(ビジュアルエフェクツ)」、省略形で「VFX(ブイ・エフ・エックス)」という言葉が使われるのが一般的です。
最近ではコンピュータを使って映像を作るのでCG (コンピュータ・グラフィックスの省略形)という言葉が、ほぼ同意で使われることもあります。
以下文中では「VFX」 を使います。

昔はVFXが使われるのも、実際には撮影不可能なものを作ることがメインでしたが、最近では様々な面で使われ、VFXなしには映画を作ることは出来ません。
大きなセットを作る代わりにVFXで建物や環境を作ってしまうこともあり、映像からはどこがVFXなのか、素人からするとなぜそんなところをVFXでやる必要があるのかわからないようなものまでコンピュータで作られています。
それほど映画制作にはなくてはならないものであり、そして最近の巨大ロボットや宇宙船、宇宙人やら怪物がでてくる驚くべき映像は映画の興行収益さえ左右する物です。
 
 このVFXは映像では1秒ほどでも、その映像を創り上げるためには多くの人の手を必要とし、多くのコンピュータでの作業が必要です。
数秒の映像でも数人から数十人が数週間かかりっきりになるのです。
それを1.5~2.5時間の映像分つくるとなれば、ちょっと考えただけでも多くの人が必要とされることはわかると思います。


 さて、今年の視覚効果関連の賞は、ライフオブパイ、スノーホワイトがノミネートされて話題になっています。

この二つの映画の、VFXはある一つの会社が作成しました。
それがリズム&ヒューズと呼ばれるVFX会社です(以下「R&H」 )
昨年、生誕25周年だった、この業界でも老舗の大プロダクションです。

そのR&Hが、今回のアカデミー賞の受賞式を待たずして、倒産してしまいました。
詳しい説明はここでは省略して簡単に説明すると、大金が流れる映画制作業界も、VFXでは、
その大半が人件費などで右から左へ流れていく状況で、会社を維持するのが難しくなってきているのです。(詳しくは以前のエントリをご覧下さい。「VFX事業はなぜ儲からないのか?」)
多くの収益があがった映画でも、それに対して多大な役割をしたはずなのに、そのおこぼれには預かれず売上のほんの一部で救われるほどの金額も得られず倒産してしまう。
それが現状です。


  R&Hだけでなく2012年には、これも大手プロダクションのデジタルドメインが倒産しています。


こういった苦しい状況を改善すべく、何らかの活動をすべきではないかという意見は数年前からでており、多くの議論が交わされました。
ただ議論が交わされるものの、なにも目立った行動はありませんでした。


しかし今年は違うようです。

R&Hの倒産をうけ、おいつめられた多くのVFX関係者が団結して、今回のアカデミー賞会場近くでデモンストレーションを 行う予定です。


2013年2月23日(日曜日) 1-4:30pm Hollywood Blvd & Vine St.
その他にも3:39-4:30pmの間は 上空をメッセージの書かれた段幕を引っぱって飛行機が旋回する予定です。(詳細はこちら
メッセージはこちら: BOXOFFICE + BANKRUPT = VISUAL EFFECTS VFXUNION.COM
 (チケット総売上+ 倒産 = ビジュアルエフェクツ vfxunion.com)


ロサンゼルスでここまでVFXの仕事がなくなったのも、このように抗議活動をするのもVFX業界始まって以来のことだと思います。
ちなみに組合で守られている多くの映画業界の職種の中で唯一、組合がないのもVFX業界です。
 今のロサンゼルスのVFX業界は、その組合ができる前に滅んでしまいそうなほどの状況です。



個人的には今回のデモは、今までこの問題は知らなかった人に知らしめるということ以上の効果があるとは思いませんが、それは必要な事だとも思います。












2013年2月13日水曜日

VFX業界の衰退と原因

すでに公にされていますので、もう話しても大丈夫かと思いますが
ご存じの通り、先週の金曜日にR&Hでは全社ミーティングが開かれ社長からはじめて現状の説明がありました。
全社ミーティングは社長自らが現在会社で起きていること、これからの予定などを皆に説明するのですが、社長が時間があれば大体毎週金曜日に予定されています。
まぁ今まで出てなかったので、今回が初めてでしたがほぼ全社員がいたのではないかと思うほど沢山の人であふれかえっていました。
もともと派手なジェスチャーなどしない、おちついた社長なのですが、この日は口も重く、大体すでに皆が知っていたこ

とを社長自らがオフィシャルな形で語ったという感じです。
話し終えた社長はうつむき加減で次の言葉を探しているとき、その唇はわなわなと震えていました。
(それが年のせいかどうかはわかりませんが、自分には感情の高まりと思えました)
昨年25周年を迎え、長年のこの業界での功労がこのような形になり、多くの社員に危機感をいだかせる、社長としてこのような屈辱的なことはないでしょう。
その姿をみておもわず涙が出そうになりました。
実際泣いていた人も居ます。

その夜、家に帰ってある動画を見つけました。
現在のVFXがここから始まったと言っても過言ではない場所と人々を撮影した8mmの映像です。
https://vimeo.com/5494280
5757 from David Berry on Vimeo.

もちろんこれ以前にもSFXはありましたが、突出していたのはこの会社です。

ILM

小中学の頃はSFXブームでもあり、多くのSFXのメイキング映像がTVでも流されました。
スターウォーズのメイキングも良くTVで流れていました。
その多くは楽しそうで、活気があり、いつかそんな仕事がしてみたいと思わされる物です。
自分の人生もこれで大きく変わりました。
おそらく映画「スターウォーズ」をみただけでは人生は変わらなかったでしょう。
メイキング映像をみたことでそれが人の手によって作られることの楽しさを知ってしまったのですw

しかし、この動画は、初めて見る物でした。
今では、この業界では、もう神様的に有名になった人達がぞろぞろ出てきます。
皆若く、重労働を物ともせずに楽しみながら働いている。
そんな感じが画面からも伝わってきます。

見ているうちに泣けてきました。
すぐに職が無くなるかも知れないという自分の将来を思ってではありません。

LAがVFX業界でトップクラスの力を持っており、それが今、老衰したかのような瀕死の状態です。
昼間のジョン・ヒューズ氏の姿とかぶってしまい、その無気力になってしまったVFX業界を悲しく感じたのです。


その後、VESから以下の表明があったというのがTwitterで流れたのですが、
あとで気がついたらこれ2011年の5月の記事。
それから2年経過してたしかに、いろいろ業界で話しは盛り上がったけど、結局スタジオとの交渉に至ることはなく、スタジオ側からのコメント一つ引き出せていない状況です。
そして先月行われたVESアワードでEric Rothはこの業界の問題を解決する方法を知っている人がいれば教えて欲しい、みなと共有して欲しいとまでいいました。

・・・そこからわかることはかれが言ってた解決策はどこにいっちゃったんでしょうか?

そしてその解決策は、VFX業界内だけで議論したところでなんの解決にもならない。
VFX業界からスタジオ側へ話を持ちかけ、交渉して改善しない限りなにも解決しないというのが現状です。
この問題は税制優遇措置とは全く関係ありません。
税制優遇措置はどこがあれが、破産するのをすこし先延ばしに出来るだけのことです。
いいかえれば、VFXのプロダクションが生き残るにはもう国のお金に頼らざるを得ないのが現状です。
(もちろん非常に安い賃金で運営できるなら別ですが)


そして問題は明確にされており、解決するためにやるべきこともわかっているのです。
しかしだれもやろうとはしてません、議論が交わされるだけです。
ブログ上やミーティングでいくら議論をしても解決には結びつきません。

唯一VFXSoldierだけが、金を集め弁護士を雇い行動を起こしています。


とりあえず2011年の5月にEric Rothが送ったオープンレターの記事を翻訳しました。
いつものように適当翻訳ですので、誤訳がありましたらご指摘感謝します。



http://www.deadline.com/2011/05/visual-effects-society-exec-director-eric-roth-slams-movie-industry-for-terrible-treatment/

VES(全米視覚効果協会)のエグゼクティブ・ディレクターであるエリック・ロスが映画業界のひどい仕打ちを酷評

これはVESのエグゼクティブ・ディレクター「エリック・ロス」が2400人のメンバーに今日おくったオープンレターです。
この非常に重要なクリエイティブな技能に対する映画業界のひどい仕打ちを非難する物です。


名誉ある協会として、VESはVFXアーティストのすばらしい仕事を促進してきました。
しかし今のところ、我々の職業のビジネス的側面を導こうと達がある物は誰も居ません。
だれも、代表者の居ないアーティストとプロダクションのために意義のあるやりかたで声を上げる事が出来ないのです。

だれにとっても、ビジュアルエフェクツ業界の状態が不安定であることは驚きではないでしょう。
アーティストとビジュアルエフェクツの会社は少ない収入のためにより長い時間の仕事を強いられ、削られたスケジュールのもとで、よりすばらしいVFXを提供し、
我々の仕事から他の人達が沢山の利益を得ている間、多くの財政的負担を担ってきました。

その結果として、ビジュアルエフェクツとエンターテイメント業界内でのその役割について沢山の議論がかわされてきまいた。

アーティストの関心を表明するためのVFXユニオンの設立を望む声もあり、VFXプロダクションが今日の複雑な経済をよりよく切り抜けるために取引組織を創設しようとしている一方で、沢山の人はVFXアーティストはつけ込まれており、多くの他の人達は、VFXプロダクションは維持できないほどの激しい競争と利ざやにしばられていると感じている。


国際化の増大は、ビジュアルエフェクツの制作プロセスをより一層不可欠な物にしていきました。
多くの人はもし我々の業界における現在のビジネスモデルが長期にわたり持続可能な物だろうか?と思っています。
実のところ、増加する数々のブログはなぜアーティストはひどい残業時間を仕事が終わるまで健康保険も無しに何週も何ヶ月もつづけることを強要されるのか、そしてVFXプロダクションはそのパイプラインを保ち、営業し続ける(と希望している)のためだけに損失を強制されます。


我々の創造生がすばらしく驚くべき革新的な映像を作るほどに、VFXプロフェッショナルはその業界でのビジネス面では自分自身のお粗末なマーケティングをするのです。
手短に言うと、我々の努力、タレントを集めた力、強く統一された情熱、全体のものとしてこの業界統一した声などをだれも活かすことができないのです。


VESは集団としての交渉力は持ってないかも知れません。しかし23の国にまたがる2400のアーティストの声の力を持っています。- そしてVESの取締役はそれを今使う時だと決断しました。
我々は変貌する国際的な業界とその中の我々の居場所についての難問に立ち向かうためにVFXに関わる全ての人

にとって必要で関係することを訴えることの出来るただひとつの実行力のある組織です。

特にトップ50の映画のうち44本がいつもビジュアルエフェクツに支えられていることを考えたとき、我々が助けている多くの人は沢山の収入を得ています。しかし、それは平等に共有されるわけではなく、我々に支払われるよう配慮されるわけでもありません。(http://www.imdb.com/boxoffice/alltimegross).



VFXアーティストへ(コンピュータギークや、ナードではありません)、最終損益においてビジュアルエフェクトがはたす役割を正当に配慮した額を受け取っていません。
そしてそれは明白ないくつかの方法で現れています。


・クレジット - 我々はスタッフロールで不完全なリストでしか表示されず、しかもあるべき場所よりずっと後のほうなのです。

・ベネフィット - アメリカでは、健康保険または眼科保険、または年金制度が準備されていないことがよくあります。
アメリカ外では、国民健康保険が適用される国民でないなら、健康保険の対象とならないことがしばしばです。
または自身の年金をためるための時間もなく、余剰金を受け取ることも出来ません。
我々は労働組合(ユニオン)では組合化されていない唯一の部署です。
そしてそれゆえにセットにいる他のだれもが得ているような利益を受け取ることが出来ないのです。


・労働状況 - もしあなたがフリーランサー(通常、全ビジュアルエフェクツ労働者のほぼ半数がフリーランスであるといわれています)なら共同交渉によって守られていないので、あなたは締め切りに間に合わせるために週70-100時間の労働を数週間から数ヶ月強いられるでしょう。
その特権(アメリカでの)のために、あなたは1099をファイルするべき独立した契約者として分類されます - そのため雇用者がしはらうべき税金まで自分で支払うことになります。
(所得税のうち、社会保障保険に関しては通常、雇用者と被雇用者が半分づつですが、フリーランサーは個人事業者とみなされ、両方を自分で支払うという形にされることがあります)


世界中の中小VFX事業者の多くは生き残りに必死です(またはすでにやめているか。(RIP  Café FX, Asylum, Illusion Artsなどなど))。
今までこの業界のほとんど全ての人は、数年前からあるこの話を知っているでしょう。
どこかのスタジオのエグゼクティブは「映画を1つ作っている中で一つぐらいのVFX会社を倒産に追い込めなかったら、かれは自分の仕事をやっていない」と言ったそうです。

個人の考えはどうでもよいのです、VFXアーティストの利権はもはやムシされえるものではありません。


これからの数週間/数ヶ月。
VESは取引とVFXのブログ、バーチャルタウンホール・ミーティングVFXアーティストの権利章典、VFXのCEOフォーラムなどで取り上げることによって、アーティストやプロダクションとスタジオが直面している問題にスポットライトをあてます。


解決策はあるはずです、我々はそれを見つけます。

我々はスタジオがきちんとした利益をもたらしてくれることを望みます。
我々はこれまでに一度も変わらなかった財務環境でプロダクションが生き残り成長することを望みます。
そして、アーティストが毎日行っているその仕事と同等の額をその高いクオリティーの仕事と共に維持できることを望みます。

上記に述べた全ての問題がさらけだせるように、VESはこの業界のすべての関係者と組織化のための会合を率いていきます。

我々はVFSです。一つ上の段階へ進むときがきました。
VES2.0はここにあり、そして導いくときです。


Eric Roth
VES Executive Director



ハリウッドVFX業界 就職の手引き

書籍版 Kindle版は左枠上のリンクよりどうぞ







2013年2月11日月曜日

VFX事業はなぜ儲からないのか?

ついにR&Hが連邦倒産法第11章の適用をうけ倒産の手続きに入るようです。
正式発表は月曜日(現在、日曜日の深夜)になるようですが、
バラエティーのサイトをはじめ、主要なサイトではそのニュースで持ちきりです。
http://vfxsoldier.wordpress.com/2013/02/10/rhythm-hues-chapter-11/
http://www.variety.com/article/VR1118066034/
http://www.fxguide.com/quicktakes/rh-chapter-11-update/?utm_medium=twitter&utm_source=twitterfeed

自分もどうやらレイオフのようです。

業界内にも戦慄が走っています。

というのはR&Hは純粋に映画/CMなどの独立した、VFX請負業者だからです。
SonyやDesineyは上にスタジオがあり、ILMは大きなグループの一部門です。
しかしR&Hは純粋にスタジオから仕事を請けるだけで、まったく上層/他部門など頼るところをもっていません。
また無理なプロジェクトを立ち上げたわけでもありません。
業界でも大手とも言えるR&Hの破産は(少なくともLAでは)このVFX請負業が成り立たなくなっている。
ということを示しているからです。


詳細はさけますが先日のスコットロスへの質疑応答の記事がこの業界の実情を説明していると思います。
以前から少しづつ訳していたので、まだ未完ですが公開したいと思います。

いつも通り、翻訳に難ありですが、原文と合わせて読んでみて下さい。
ここ、翻訳間違いじゃないのか?というご指摘は大歓迎です。
Twitterでもこのブログのコメントでもどちらでも使ってどんどんご指摘下さい。

原文へのリンク: http://provideocoalition.com/mchristiansen/story/why-is-the-vfx-business-failing-questions-for-scott-ross


以下の文章で、ファシリティーは大きめのVFX会社を指し、ブティックは小さなVFX会社をさしていますが、まとめてVFX会社としています。
スタジオとは「 20世紀Fox、ワーナーブラザーズ、コロンビアピクチャーズ(Sony)、Disney」などの映画自体を制作する会社を指します。
(VFX)プロダクションとは「ILM、Imageworks、R&H」などのような、CGをつかいVFXを作る会社を指します。
スタジオはVFXプロダクションのクライアントであり、仕事は多くのVFXプロダクションが入札する形で決められます。


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VFX事業はなぜ儲からないのか? スコット・ロスへの質疑

DigitalDomainの創設者であり元ILMの取締役は「とても単純さ実質収益だよ」とすべてを話してくれた。


Q: 今週初めに述べた質問(別の記事で「なぜ最も成功している時期にVFXのビジネスは利益があがらないのか?」を書いていた。)から始めたいと思います。 2013年のVFX業界には何が起きているんでしょうか? 欧米の経済全体で多くの業界に起きていることと何が違うんでしょうか?

ひとつの大きな違いはビジュアルエフェクツの会社はハリウッド映画がもつ6つのクライアントのためにショットを作っているということです。これは非常に大きな違いです。 実際の自由市場経済は売り手が新しい買い手を見つけようとするときには全く異なる様相を見せます。


Q:もしRhythm & Huesのように資金繰りの問題を抱えたとき、VFX会社のどこかに過失もしくはビジネスの経営手腕が悪いと言ったことがあるのでしょうか? それとも単に彼らが生きてくために充分な資金がスタジオからは流れてこないのでしょうか?

ビジュアルエフェクツ会社は自転車操業で、仕事がない期間は多大な影響を与えます。
私は元々1980年からビジュアルエフェクツとポストプロダクションの仕事をしてきました。
そして支払いのサイクルとコントラクトは、私が始めた頃からより一層、面倒なことになるばかりでした。

ビジュアルエフェクツのビジネスモデルはフィルムビジネスの他のビジネスとは著しく異なります。
- つまりアベンジャーのクレジットがあがってきたときおそらくカメラ部門は6人ですが、ビジュアルエフェクツにさしかかったとき1000人もの名前があるでしょう。


さて、だれがこのビジネスでは象徴となっているのでしょうか?

ビジュアルエフェクツの会社は-クリエイティブとテクニカルという- 二面性を持っていますが、ビジネスを支える物ではありません。 だれがビジュアルエフェクツのクリエイティブ面での象徴かって?
そうですね「デニス・ミューレン」はそうでしょうね。
誰がテクニカル面での象徴かというと、ジョナサン・アーランドのような人でしょうね。
じゃぁだれがビジネスの象徴なんでしょうね? その人は名士ですか? 


Q:報酬低下の圧力はどこからきたのでしょう? オフショアですか?

その圧力は四方八方からきます。まるでいくつもアタマを持つヒドラのようです。
ビジュアルエフェクツは固定された競売値で、しばしばまだはっきりした計画や青写真がないまま運営されます。
すべての会社、全てのレベルで、かれらの仕事は安く入札します。
そして相対するクライアント側は ---そうですね、ゴジラみたいなもんです。

VFXサービスのビジネスは完全に底辺を泳いでいます。
高度に専門化された知的財産(Intellectual Property)とノウハウが必要とされる大量の仕事があります。
ハリウッド・レベルの役割を果たすためには大きな障壁があります。

ハーバードの経済学者が語る大金持ちになれるという仕事があります。
近年でも大きなVFX会社を運営するのは、大きな航空会社を保ち続けるような物です。
- 根本の理論は、飛行機が飛んでいるとき、半分の収益を得ていたとしてもそのビジネスではお金を失っているという物で、それは飛行機が地面にとまり、もっとお金を失うよりはましなのです。


Q:より小さな会社 -ブティック- は世界でも最大のVFX会社達「ビッグ8」に重大なプレッシャーを与えていますか? 
それらは有能なトップレベルの人達が主に行くところでしょうか?

これまでにビジュアルエフェクツのオスカーが授与された人達をみると、小さな会社はほとんどありませんし、
もしいたとしても、いずれにせよ大きな会社と共に仕事をしていることが良くあります。
私がこのビジネスを始めた80年代半ばは、一つの町に2つか3つの仕事があっただけですが、実際にあったのはILM1社だけでした。
もしビジュアルエフェクトでチケットを売り、アカデミー賞を獲得したいなら、それがその場所でした。
その領域は拡大しましたが限られた数の会社が大きくなっただけです。

それを有能な人達から見ると、たとえば私がベテランのシニア・コンポジッターだとしましょう。
- より守られ、サポートされる、それら大会社の一つにいるのは、より小さい会社で運営していく雑事にさらされるよりはかなりましなことです。
もちろん、ロブ・リガ-トは独立してVFXオスカーを獲得できたでしょうが、メジャーな会社からのよそ者として運営するわけではありません。


Q:最大手の会社達(ILM、Weta、Sony Imageworks、R&H、Digital Domain、MPC、Framestore、ダブルネガティブ)はハリウッドに仕え、
最大手のスタジオ達(わずか6社)の脅しをうけ、「あっそう、じゃこの映画は中国とインドにやるね」と数年前に言われたとしたらどうなるでしょうか? いまなにがおきることになるでしょうか?

かれらはやり方を変える銃弾を放ち、窓を閉じたのです。そしてかなりの時間が経過しました。


「新しいスターは我々が創り上げた男性や女性のイメージです」

訳注:この部分の訳は以下のようになるのではないかとご指摘いただきました。
@miyukimaruyamaさんありがとうございます!
「新しいスターは我々の業界にいる人々(男性や女性)が作り上げる映像(イメージ)なのです。」
原文:The new stars are images that men and women in our business create.

本当になり得る事を前提に
総収入トップ20のうち20本、トップ50のうち48本の映画はVFXが映画が経済的に成功する鍵となることを証明しています。
それらの各フィルムは、おそらく30%のショットは撮影するのがかなり難しいでしょう。
それらのショットはライン・タレント(スターやディレクター、脚本家でさえ)よりも顧客を引き寄せる物なのです。
新しいスターは我々のビジネスが作り出した男性や女性のイメージなのです。

「新しいスターは我々の業界にいる人々(男性や女性)が作り上げる映像(イメージ)なのです。」
原文:The new stars are images that men and women in our business create.
 そしてスタジオはそれらに相応の対価を払わないようことにしました。


もし私が妄想的統合失調症の帽子をかぶったとします、
映画スタジオはそんな感じです。しってますか?
マイケル・オーヴィッツ(元ハリウッド代理人、現実業家。ハリウッドの最強代理業者Creative Artists Agency(クリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー)の創設者)によって、ドアの中に閉じ込められたのです。
彼らは核心のコントロールを失い、大金を脚本家やディレクター、タレントに支払い、「もう二度とこんな事はしないぞ」と決めたのです。


どうしても私には理解出来ないのは、なぜ8つの大手プロダクションのリーダーが国際取引組織を形成し、今すぐミーティングを開き互いに「我々はこの問題をどうやって解決すべきなのか?」という話し合いをしないのか?ということです。


Q:プロダクションがその現実に目覚めるには何が必要なのでしょうか?

そうですねビッグ8の会社のうちの5社が、現在の標準的な運営手順ではやっていけません。

SonyとILMは考慮に入れられません。彼らはスタジオによって所有されています。
我々はR&Hが置かれている状況を知っています。
Wetaは信用できません。彼らは二つの主なクライアントから資金を得ています。
;実際の所、私がILMに足を突っ込んだときにの多くの事を思い起こさせます。
フィルムメーカーのオーナーが仕事を終えたとき(<= 訳不明)
次に起こるのはピータージャクソンが一歩下がり、ジェームスキャメロンが彼らの一番のクライアントになるでしょう。

DDは少し異なります。現在、中国とインドに所有されています。
長い期間にわたり取引組織はかれらに有益で、世界的な競争をフラットにするでしょう、
しかし彼らは、そこまでには達していません。

ロンドンの大きめの会社は今のところは、太って幸せに見えます。
それは変わるでしょうが、彼らにはおそらく取引組織が国境を越えて有益になることは見えてないでしょう。



Q:どんな人がすばらしいVFXアーティストを作る事が出来るのでしょうか? どんな方法で? 
もしあるならどんなパーソナリティーのタイプは最も繁盛しているVFXの顧客とうまくいかないのでしょうか?


もしあなたが、VFXアーティストは生き残る能力を持っているかと聞いているのなら答えはYESです。

ビジネスの現実に適用できるのかということでしょうか?
20年以上前に、私はAVEC(Association of Visual Effects Creators, 「With」という意味のフランス語)と呼ぶビジュアルエフェクツの取引組織を始めようとしました、
不幸なことに被害妄想の人達のおかげで、組織は決して運営されることはありませんでした。
2度のミーティングがもたれましたが、そのころの大手VFX会社(ILM、BOSS、APOGEE、DreamQuest)は互いをまったく信用せず、AVECはすぐにSANS(「Without」という意味のフランス語)に変わりました。

ほとんどのビジュアルエフェクツアーティストとテクニシャンは葛藤回避型であり、
そのビジネス文化は「1日24時間働くよ。別に給料はいらないよ、だって俺はスターウォーズの仕事してんだぜ?!というものです。


Q:各地のポストプロダクションに対する助成金は会社の運営を助けていますか?それとも傷つけていますか?

認識すべき重要なことは助成金は、直接それらの会社にとってはまったく利益とはなりません。
スタジオが助成金をうけとっている間、彼らは6~7桁の予算をリモート運営を確率するために費やしています。
基本的に、その場所で機能するかどうかは、契約条件によります。

一方では、二年前。バンクーバーは盛況でした。しかしいまはSave BC(ブリティッシュコロンビアは予算の都合でポスプロへの助成金の中止を考えています。SaveBCはそれを継続させようという活動)の人々であふれています。
ニュージーランドでは、税納者はそれぞれ$10をロードオブザリングの助成金のために支払うことを決めました。
その国の、全国民のための映画のチケットと同額です。
なぜどの政府も、その映画が成功した際の収益を得る権利なしに、スタジオが彼ら自身のプロジェクトを完成させるためのお金を払うのでしょう。


Q:労働者の状況を改善するには何が必要なのでしょうか?

「もし私が魔法の杖を持っていたら」

もし私が魔法の杖を持っていたら、こういったことをやりたいです。
1.全ての税助成金、税制優遇措置を取り除きます。もしできないなら、スタジオではなくVFXプロダクションにそれを提供します。
2.取引組織を作り、特定のスタジオの特定の個人からでたものではない、AICPのモデルに沿った一つの声にまとめます。このグループは値段を変える事は出来ませんが、「支払いのスケジュール」「48時間のApproval Window-クライアントはこの時間内に承認するかどうかを決めなくてはいけません。それ以後の変更は規定を超えた物になります。」「Kill fees -VFXスタジオは現在、仕事の一部がキャンセルもしくは変更された場合、その数ヶ月分の仕事時間に報酬をもらっていません」のような標準的な基準を設けます。
3.プロダクションが補償するというモデルを、コストに加えて総収入からの固定額または成功報酬に変える。
VFXプロダクションは現在、劇場映画に非常に簿利益で偉大な貢献をしています。


--------------
最後の部分については@IchigoIchieFilmさんの訳がわかりやすいです。
https://twitter.com/IchigoIchieFilm/status/299741631664488448

これ以降の内容については時間の関係もあり割愛させていただきます。