日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2011年2月3日木曜日

ここ数年のハリウッドの仕事状況を考えてみた

2009年~2010年、ハリウッドで働くアーティストは非常に厳しい状況でした。
これらはフリーランスにとっては非常にきつく、Visaサポートされ正式雇用されている人達でさえ、会社を移籍する必要がでてきたほどでした。
それらがどのような物であったのか、ネットから情報を集めてみました。

多くの仕事がアメリカ国外へアウトソースされ、仕事が大幅に減少した。
仕事が減少したのはアウトソースだけが原因ではなく、
2007年11月2日から始まった全米脚本家組合ストライキは、2008年2月12日までの3ヶ月間にわたり続いた。

このストライキがどのような経緯を得て、映画の制作に支障を来したのかわからないが、その後の二年間に制作される映画が減少するようなきっかけとなったことは間違いないらしい。
TV番組は台本が無く、制作ができないという事も起きた。


そして今度は、全米映画俳優組合(SAG)と映画テレビ製作者連盟(AMPTP)との交渉が長引き、それが影響を与えたという話がある。
2008年6月30日にAMPTPとの契約がきれ、新しい契約を巡っての交渉が長引いた。

SAGは、契約切れ前の駆け込み撮影があったと以下の記事の最後に書かれている。
参照:Asahi.com「スト機運揺さぶる不景気」

そのため7月~9月の撮影日数は映画が前年比38%減、CMは24%減とある。

そしてストはおきていないものの、同年12月24日時点でこの交渉はまだ決着がついていない。
参照:「米映画俳優組合、ストライキ決議を延期」


米映画俳優組合内部でもストへの賛成派と反対派にわかれていた。
全くの創造だが、この契約書が無い状態では、きちんと働いている俳優も居るし、なかなか製作者側の意図したとおりには働いてくれない俳優も居たのかも知れない。

2009年4月19日、9ヶ月ぶりに歩み寄りがみられ、ストライキは回避された。
米映画俳優組合、今夏ストは回避。ハリウッド製作者側と暫定的合意




これをエフェクトに絡めて考えてみる。
ここではハリウッドで主流の実写に合成されるエフェクトの仕事で考えてみる。
エフェクトはポストプロダクションなので、まず撮影された映像が必要となる。
要するに撮影が終わっていることが前提となる。

まず2007年11月~2008年2月の脚本家組合のストで、脚本がない状態になる。
しかし、すでに脚本が完成している作品もあり、それらは制作は続けられる。
実際、うちの仕事はスト前に脚本が完了していたので制作で進められていた。

問題となるのは、それらがすべて出尽くした後である。
まったくの推測ですが、おそらく2008年の後半は、脚本が不足した状態になっていたのかもしれません?(本当に、まったくの推測です)
ストが終わり2月から仕事に入ったとしても、すぐに脚本が出来るわけではない。
数ヶ月、映画などでは場合によっては1年以上かかるケースもある。
ストの間に途中で止まっていた脚本を継続するにも、監督が他の仕事をしていると評価できず、さらに保留になり延期される可能性もある。
また間が長くあいたことで、なかなか調子が戻らなかったり、すっかり別のアイデアに変わって書き直したりするケースもあるだろう。
ようするに業界のエンジンがかかるまでに時間がかかる。

実際の所トランスフォーマー2でさえ、このストライキから悪影響をうけたらしい。


TVなどはぼちぼち脚本ができはじめても、数年かけられる事もよくある映画は、2008年半ばの時点では完了した脚本が少なかった可能性がある。
しかも2008年の半ばには俳優組合の契約切れがあり、今度は俳優の手配ができなくなる恐れがつよくなってくる。

少なくとも上記のデータからすると7月以降の撮影日数は38%減である。

俳優組合との契約が成立しなければ、いろいろと面倒なことがありグリーンライトがつく(撮影許可がおりる)プロジェクトも少なくなる。
スタジオは曖昧な状態ではGoサインをだせず、様々なプロジェクトが中途半端なところで止まることになる。
これによりさらに撮影される映画が減少することになる。

またこの年9月に世界金融危機が顕在化した。
おそらくこの時点ですでに多くのスタジオでは資金繰りが悪化していた可能性がある。
資金繰りが悪化するとますます、いろいろなことにストップがかる。
特にいろいろな懸念があるときはそうだ。
海外へのアウトソーシングに拍車がかかり始めたのもこの頃なのかもしれない。

そして2009年4月に俳優組合のストが回避されても、そこから俳優との契約やいろいろな準備に取りかかるのではすぐには撮影は始まらない。
その準備に2~3ヶ月かかったと仮定すれば、おそらく2009年の後半には撮影される作品も増え始めた可能性がある。
その間、資金繰りの悪化から海外へのアウトソーシングは継続されたと見る方が妥当だろう。


2009年は撮影されたものの海外へアウトソーシングされたものも多い。
それ以前からのアウトソーシングでより安定したパイプができていたのかもしれない。

そして2009年も半ばになると新しい脚本もできはじめ、俳優もすべて元の調子に戻ってきたと考えてみる。
そしてそれらのグリーンライトが点灯し撮影に数ヶ月が費やされ、ポストプロダクションに回り始めたのが2010年の初め頃。
ちょうどBattleLAやグリーンランタンのポスプロが始まった頃である。

しかし、2008年の金融危機により悪化した状況はスタジオの映画に描ける予算の削減にかなり影響し、2009年にグリーンライトが点灯した作品でもポスプロにもろに影響し、アウトソーシングに拍車がかかったといえるかもしれない。(再度断っておくがすべて自分の勝手な推測。想像です。)


この新しい状況での映画作りになれてきて、どう対応していけばよいのかが見えてきたのが2010年ではないかと思う。
そして、新しい脚本も次々に上がり始めて徐々に映画の本数も増えてきたように思う。
その撮影が終わり、現在2011年始めにおいては大手のハリウッドプロダクションが、大量の採用をし始めたと見ることが出来る。
また年始は求人情報が増える時期だが、過去二年に比べても今年の現地求人は多い。
イギリスやオーストラリアなど他国の求人が減っているようにも見えないので純粋に仕事量が増えている可能性がある。


また一方でアウトソーシング先や海外へ支部を作った会社にもいくつかの問題が起きはじめている。
インドや中国ではその質の悪さを指摘する声を聞く。
インドのアーティストの環境は劣悪で、無料奉仕を強要される場合も多く環境改善が望まれつつある。
カナダは自国のアーティストを採用するよう圧力をかけ始めた。

こういった点から、現時点ではまだハリウッドで人を採用するのが得策と見始めた可能性もすてがたい。



いずれにしろ、予算の話をのぞけばスタジオは今、本調子に近いと言える。
 その延長である今年の製作状況がどうなるか、VFX組合が設立された場合どう影響するかが今年の見所だろう。
 今年の状況次第では、これから後数年の傾向が決まるかも知れない。
VFXの組合の話も出てきており、ハリウッドで働くアーティストにとって必ずしも悪いニュースばかりではないがまだまだ気は抜けない。

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