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2010年8月2日月曜日

「CGアーティストが勉強すべきこと」を読んで

Mayaマスターとして有名な林田宏之氏のブログ「林田ブログ」に掲載された「CGアーティストが勉強すべきこと」というエントリを読んでから、ずっとなにかすっきりしないもやもやがある。
いつも林田氏のエントリを読んでいて納得できないことはないのだが、今回は違った。

エントリの内容がわるいとか間違っているとかではなく、自分に原因があることはわかっているのだがそれが何なのかがわからない。

それは、自分がCGを始めてから、ずっと心の片隅に残っていたことと関係しているように思う。
林田氏はCGアーティストとして勉強すべき事として、特撮技法について知ることだと書いている。

これについては、実は最初、ピンとこなかったというか戸惑った。
それは見当外れなのではなく、読むべき本として推薦されていた本が、すべて自分が読んできた本であったからだ、
今年の春に一時帰国したときも実家に保存してあった初期の日本語版シネフェックスのほとんどと、中子真治氏の「SFX映画の・・」シリーズは全巻は未だにあり、なつかしくなって「SFX映画の世界」をこちらに持ってきたところだった。

実際、これらの本は、当時出版されていた本の中では一番詳しく現場を紹介しており、

自分にとっては、林田氏がこのエントリで述べていることは自然すぎるほど、当たり前のことであり、あえてこれを特別なこととは思ってこなかった。
だから、林田氏があえて、このことをCGの基礎として述べている意味がわからなかった。

同じ世代と同じように、多くのロボットアニメや、特撮TVなどをみて育ち、スターウォーズでSF映画にとらわれた。
小学生だったので、小学生向けのそういったSF怪奇映画を特集した本などをよんだり、映画雑誌ロードショーなどを最初は読んでいた。

そして、TVでそういった映画が放映されるときは必ず見た。
最初はスターログに出会い、徐々に毎月定期購読するようになり、徐々にSF映画の舞台裏にのめり込んでいった。

中学生になると、宇宙船という雑誌も定期購読に加わった。
SF映画はかならず映画かTVで見たし、雑誌に載っていた記事もタイムリーな内容で理解が進んだ。
徐々に一般にも特撮が普及し、TVなどでも特集番組がくまれたりした。
映画公開に合わせた特集本なども発刊され、それには舞台裏の話がのっていたり、映画の目新しい写真が出ていたりするので、それらも漏らさず目を通していた。(参照:劇場用映画パンフレット研究所

まぁそういった本はあまりにも詳しすぎて映画を見るときに楽しさが半減するので、発売されても映画を見るまでは見ないようにしていたがw

マンガ少年別冊 すばらしき特撮映像の世界 (参照)を手に入れたときはちょうど夏休みだった。美人のお姉さんに英語の家庭教師してもらっていた。
たしか、この本には海外のお店のコンタクト先が出ていたので、そこで授業が終わった後に、この本を持ち出してこのお店にコンタクトするにはどうすればよいのかを聞いたりもしたw。
中学生にもなってこんな子供っぽい本を持ち出すなど、ばかな子供だと思われたかもしれないが、やさしく対応してくれたことは今でも感謝している。

また中学生の頃には、新聞配達で貯めたお金で、当時10万近い、ビデオデッキ(VHF)を購入。
映画やアニメだけでなく、ワイドショーなどで紹介される数分という予告編を録画しまくった。

林田ブログには、「雑誌で読んだ内容を確認する」と書かれていたが、そんなことは意識にさえのぼってこずに自然にやっていた。

このころには、自分が将来やりたい仕事はプラモデル屋さんか、特撮のミニチュア・モデラーであった。

高校生のある夏、スターウォーズの最新作が公開されるという情報が入ってきた。
「ジェダイの復讐」である。
スターウォーズに狂っていた自分は、「ジェダイの復讐」の公開がまちきれず、少しでもジェダイ特集が書かれている本は全て目を通していた。
オリジナルの予告編が録音されたテープ(音のみのカセットテープでビデオテープでは無い)がもらえると聞いて、ジャパン・スターウォーズ・ファンクラブの会員にさえ入会した。(参照:劇場用映画パンフレット研究所

劇場公開までは、このわずか数分のテープを何回も繰り返し聞き、そこから聞こえる音や声で場面を特定しようとしたほどだ。友達にも聞かせたりして、しらけられたりもした。(当時の友人にはアニメファンしかいなかった。SF映画に狂っているのは自分一人だけだった)
公開が近づくにつれて、TVでも様々なショットが紹介されはじめた。

その「ジェダイの復讐」公開前だったか、公開後だったかはおぼえていないが、決定的とも言える本、日本語版シネフェックスが発売された。(画像掲載元:ブログ「お楽しみは映画 から」)

高校生の夏だったと思う。
創刊号は、「ジェダイ日誌」と題されたILM特集で、ちょうど「ジェダイの復讐」の公開に合わせた発刊であった(と思う)。
内容はそれまでに読んできた雑誌とくらべて何よりも濃い内容であった。

岡山市の、ある大型書店で初めてその本を見つけたときは、どこか熱いものが腹の底からわき上がってくる感じがした。
これは買うしかないと思った。

それからは、ほぼ毎号購入していた。
高校生には高い本だったが季刊誌だったこともあり、昼飯代をやりくりしてなんとか購入することができた。
舞台裏の楽しさがつたわってきて、毎回一生懸命よんでいた。
本によっては何度も読み返した記事もある。
いまでもいくつか記事の内容は覚えている。
今でもこの表紙を見ると、暑い夏の時期、扇風機を回しながら読んだことを思い出す。


もちろん、こういった雑誌以外にもTVシリーズの特撮特集本なども目を通していたし、日本特撮を特集した本。
大特撮」といった本も読んだりしていた。

林田氏のブログを読んで、どうせ上げるなら是非日本の特撮本もあげてほしいななどと思ったりしたw。

中子氏の「SFX映画の○○」シリーズもこのころから発売された。
このころには特殊メイクに興味を持っていた。
シリーズは、「SFX映画の世代」で終わりだったが、この最終刊は、実際にサルの頭部の作り方が詳しく写真入りで説明されており、内部のメカニカルな構造の作り方まででていた。
これを読んだ頃には自分にもできるのではないかと思うほどだった。(参照:TS変身願望


この頃は特殊メイクばやりで、シネフェックスでも「グレイストーク」にあわせたリックベイカー特集があった。

しかしフォームラバーやオーブンという日本にはなじみのない物がネックとなり、特殊メイクは一度も触れずに終わった。
しかし、これがきっかけで有機体のモデリングに興味を持つようになり、当時の模型趣味とあわせて、粘土による造形をやったりもした。


最近のシネフェックスは、CGばかりで内容も専門的な内容がつよく、読んでいて面白味に欠けるが、当時のシネフェックスは本当にいろいろな話がありおもしろかった。

ちょうどその時代に生きていたので、内容的な物はほとんど理解することができた。
今の学生達は、こういったものをあまり知らないのだろうか?
それさえも、自分にとってはまったくといっていいほどリアリティーがない。
その状況を知らないだけにますます林田氏がわざわざこういったことを書いている意図が理解できなくなっていた。

またCGも、いろいろな人が知恵を出し、いろいろな技法を駆使して作られていると思っていたので、違いが見えなかった。


また自分がCGをやっていて、当時の知識がそれほど役に立っていると感じていないというのもあるかもしれない。
あまり意識できないのだ。

ひとつだけ違いを感じることがあった。
CGの世界しか知らない人と仕事をしていて感じたことは、他の人は満足するような映像でも、自分はほとんど満足することができない。
これは林田氏が述べている内容から来ることなのか?
それとも自分が完璧さを追い求めているからそうなるのかはわからない。
それとも、そもそも自分がそれほどの質を求められるプロジェクトに参加できていないことからくるのか?

だからいつも自分の作った物には満足をしていない。
いくら他人に良いできだと言われても、大体いつも良くて50~65%程度、よくて75%程度の満足感にとどまる。
自分で作った物をすごいだろう!自慢して言うことができない。

逆に他人が作った物でもそうだ。
さすがに大手プロダクションがつくったVFXは、すばらしい95%ぐらいの満足度はある。
しかし、どこかあらが目についてしまったり、違和感を感じてしまう。
あと5%が埋まらない。

これは、実写とCGの違いなのだろうか?
VFXにおける不気味の谷なのか?

これが林田氏のいう特撮世界を経験し、知識をもっていることからくることなのだろうか?
そもそも、林田氏のあげた本を全部読んでいたからといって、林田氏が言うセンスや知識を自分はみにつけているのだろうか?

この満足感が得られないというところが、私のCGに対する不信感にもなっている。
それは技術を上げればなくなってくるのか?
知識を増やせば軽減されるのか?
まぁそもそも特撮だとCGほどの完成度はないはずで、このように求めているのは完璧主義すぎるのかもしれない。
今回の林田氏のエントリはその解答のようでもあり、関係なさそうにも感じる。
初心者向けのアドバイスであり、基本の基本をのべているだけなのか?
これだけでは、さほど十分でないということなのか?

それとも、自分は、それが当たり前になりすぎていて見えなくなっており、なおかつ完璧さを求めすぎており、自分の実力やかかわっているプロジェクトがその理想を達成するためには、離れすぎているのか?


これは今現在、自分の心の片隅で、いつもくすぶっている疑問であり、解答を追い求めていることのように感じた。

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