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2010年10月20日水曜日

「流体」とは (その1)

エフェクトと切っても切り離せな物に「流体(フルイド)」がある。

狭義では「フルイド・シミュレーション」とそれを実現するためにソフトに実装された機能をさすが、「エフェクト」というとらえ方をするとその手段は問わず「流体」を指す。
要するにパーティクルで作っても、Clothを使っても、はたまたジオメトリにリグを仕込んだり、ブレンドシェイプ、テクスチャーアニメーションをしても結果的に「流体」を表現することであれば「エフェクト」という言葉の範疇においては「流体」ということになると思う。

エフェクトと関わるにおいて、この「流体」とは必ず関わることになってくるわけだが,その言葉の定義においては意外と曖昧であることがわかり、ここで明確にしておこうと思った。

さて、Wikipediaで「流体」をみると以下のように定義されている。
流体:静止状態においてせん断応力が発生しない連続体の総称である。


わかるようでわからない。そもそも「せん断応力」が理解出来ていない。


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(「剪断」の定義)
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せん断(剪断)」の、Wikipediaでの定義は以下のようなものがある。
せん断(せんだん、剪断、shear)とは、はさみなどを使って挟み切ること。


英語のShearは、
(髪を)切る、(羊の)毛を刈る、(ケーブルが)切れるというような意味があり。
複数形(Shears)で、大ばさみ、植木ばさみ、といった意味を持つ。
語源は古期英語の「切る」
。(参照:Excite辞書「Shear」


羊の毛を刈る作業を「Shear(単数形)」と呼び、それにつかわれるはさみは「Shears(複数形)」である。

ちなみに「ハサミ」を意味するもうひとつの英語「Scissors」の語源はラテン語の「切る道具」という意味である。 (参照:Weblio 「Scissors」

どちらもハサミ一丁を表すのに複数形を用いるのは興味深い。
おそらく二つの刃を一つの道具にまとめたところから来るのであろう。


日本語の「剪断」の「」の字は、中国語で「切る」を意味する言葉であり「ハサミ」は中国語で「剪刀」と書く。(参照:BitEx中国語「剪」


そのほかデジタル大辞泉の「剪断」の解説は以下のようになっている。
剪断:[名](スル) 1 断ち切ること。「綱を―する」

文字通り、「断ち切る」ことを意味している。
余談だが、興味深いのは、綱、ひも、毛、髪といった細長い物を切ることに使われている。


さて、先ほどのWikipediaの「剪断」の説明の続き。
工学においては英単語shearの訳語として、・・・
ここに書かれているのは工学用語としての英語であるが、「Shear(単数形」であり、「ハサミ」という道具ではなく、「切る」という行為そのものに関連していることがわかる。

続けて定義を読むと
物体内部の任意の面に関して面に平行方向に力を作用させた状態を指す。
とある。

この説明の「物体内部の任意の面」というのは????であったが、以下の図で一気に解決。
(画像は「匠ホームズ」の建築用語集「剪断力」から引用

物体内部の任意の面」とは「はさみで切るような力」が加わったときに、そのはさみの刃の面と平行な面で「切断面になる面」の事である。

ちなみに、引用元の建築用語集で「剪断力」の定義は以下のようになっている。
剪断力(せんだんりょく):部材を切断しようとする力で、水平部材には均一な剪断荷重がかかっている。
(ここで言う水平部材は、地面に対しての水平であり、上記の図のとおりです。)

以上から「剪断」とはただ切るのではなく、ハサミで切るように、すれちがう二つの方向の力によって切ることだとわかる。


また、デジタル大辞泉の「剪断」の二番目の定義。
2 物体内部のある面に沿って両側部分を互いにずれさせるような作用。

もう一つ、岩石学事典の解説
体積変化を伴わない歪の一種で,物体内の平面が一様な角度だけ傾くような変形

そして、元々のWikipediaの説明
「物体内部の任意の面に関して面に平行方向に力を作用させた状態を指す。」

以上のことからすると、
1)この力が作用している状態
2)この作用そのもの

を「剪断」と呼んでいることがわかる。

ようするに必ずしも切るのではなく「切るという行為に含まれる物理的特性(力とその作用)を剪断と呼んでいる」のである。

CGでは、せん断(Shear)は切るという行為よりも、(その力による変形=せん断変形)のほうがお馴染みである。
Shearはその変形の度合いや、Shearが発生する力に関係する値を示すアトリビュートである。
せん断というと「切る」というイメージがつきまとうが「切る」行為に関連する力のかかり具合とそれと同じ力のかかり方も「せん断」 という言葉に含めていることがわかる。




「剪断」はハサミを使わなくてもおきる現象である。
その例のいくつかを下にあげておく。

鉄板などをつなぎとめるボルトにかかる作用(参照元:CRANE-CLUB)




パンチなどによる穴開け加工など(参照元:野口製作所



プレスによる切断など(参照元:Metal Otaku




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さて次の言葉は「応力」である。
(続く)

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