日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2010年10月21日木曜日

エフェクト関連の知識習得に関する線引き

昨日から「「流体」とは」というシリーズのエントリを書き始めていますが
これを書いている裏にある理由を説明します。

まぁいつも通り自分の勉強課程のメモでありますが、要するに発想の過程についても少し触れておくことで、何かもっとつかむ物があれば(もしくは不要な物を見つけることができれば)と思ったからです。
また、すべて自分で勝手に考えたことですので、理論に間違いがある可能性も考慮して読んでください。



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現在ジェネラリストからエフェクト・スペシャリストへの転換をはかっているわけですが、どちらにしてもプロフェッショナルである以上、しっかりとした知識と経験に裏付けされた仕事をする必要があります。
CGで表現をする際に必要な事は、アート面と技術面がありますが、特にエフェクトはその程度は別としても、様々な機会に技術的理論に直面します。

ソフトの設定を表面だけ覚えたのでは限界がありますし、ソフトが変わると戸惑う事になります。
特に、こちらでは大手プロダクションに行くとクロス、ヘア、リジッドボディー系は独自のソフトやプラグインを使っていることが少なくありません。

またエフェクトをよりよいものにするには、ソフトを使いこなさなければソフトが作り出す偶然に頼った絵作りしかできなくなってしまいます。
ソフトを使いこなすには技術的知識が不可欠なのです。


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中学数学から再度勉強し直し、物理学、力学、流体学などを学び、プログラミングまでのスキルを身につけることは、根本から自分の知識体制を構築することになり、完璧なプランだと思います。

反面、時間がかかり、必ずしもアーティストとして直接、必要となる知識ばかりとは限りません。
様々な科学的理論をシステム上に実装するようなことが目的でなければ、なおさらでしょう。

もちろん、そういったしっかりした裏付けがあると鬼に金棒でしょうが、ソフトで望むエフェクトが作りたいというだけの目的には少々Too Much感があります。
そのため、そのようなプランで初めても心に残る抵抗感は、焦りに変わり、いつのまにか辞めてしまうことになります。

また、もう若くはないので残された時間も少ないですから、のんびりやっているわけにもいきません。


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さて、エフェクトをやる以上、技術的理論はさけて通れないのも事実。
どこまで勉強してどこをはしょるべきか、このあたりの線引きが、長年の悩みどころでした。

では 
どうすれば効果的な勉強ができるのか?
どんなことに重点を置いて勉強すればよいのか?
を自分なりに考えてみました。

まずCGと科学的、数学的な部分には以下のような関連性があります。

科学的理論(概念) ソフトに実装 ソフトの操作 <作品の完成>

どうしてこうなるかというと、
CG(のエフェクト)はすべて現実世界に起きることを研究して公式化し、それをコンピューター内で計算によって再現しているからです。


●科学的理論が数式と共に確立し
●それをプログラミング言語とアルゴリズムを使いソフト内でシミュレーションを可能にする
●そのソフトを使って作品を作る。

という流れになっており、それぞれに必要となる勉強は異なってきます。

いままで自分がやってきたのはスクリプトも含めて、最後の部分が主です。

(お断り)ここでは理論的なことに的を絞っており、「現象の観察」に関しては含めていません。
「現象の観察」は「科学的考察」と「作品作成」の両方で不可欠な基礎的な物ですが、今回は動きに関する理論的な面だけに的を絞っています。
従ってコンポジットのテクニックもここには含まれません。
またプログラミングもしくはスクリプトの知識がどの程度、影響を与えるかと言うことに関しても、あまり考慮に入れていません。


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次にその科学的知識との深さについてそれぞれの段階を考えてみました。
裏付けはなく、まったくもって自分の思いつきであることはお断りしておきます。


レベル1)ソフトの操作方法、アトリビュートの設定などをある程度知っている。
→エフェクトのコントロールがある程度可能。 
(チュートリアルの受け売りやまる暗記で対応可。望みの物を作るには試行錯誤が長い)

レベル2)科学的理論を知っており、それがどのように使用するツールやアトリビュートに実装されているかを知っている。そのツールやトリビュートの限界がわかる。
(自分の意志で的確な判断が出来、的確にソフトを操作して望みの物が作れる。試行錯誤が短い)

レベル3)科学的理論、公式を理解しており、プログラムの知識を持っている
(それをプログラムとして実装可能)


より高度なレベル(レベル3)は、下位のレベルを包括していることがわかります。


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Mayaでエフェクトを作っていて思うのは、「もう少し知識があったらな~」ということですが、上記のように分類すると、レベル2までの知識があれば、ある程度ソフトが使えるのではないかと思いました。

無理を言う監督やVFXスープ、プロデューサーの要望に素早く応えるには、ここまでのレベルであればよいのではないかと思います。

このレベル2においては以下の能力があれば良いのではないでしょうか。
A)科学的理論を理解していることで、ソフトのどこを操作すべきかの目安がつけられる。
(たとえばVelocityやDampingというなど)

B)ソフト(実装と操作系)を理解していることで、どの程度の値を追加すればよいかがわかる。
(たとえばDampingには0.99や0.98とかの値でよいとか)

C)ソフトのUIからでは操作できない部分をMelで操作する。
(ParticleExpressionなど、数学的裏付けが必要なスクリプティングは除外)


(余談ですが、MayaってすべてがUIから操作出来るようになっているわけではないんですよね~。中途半端というか職人的というか。)


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ソフトを科学的裏付けにまでさかのぼり理解していれば、的確に操作でき、限界もわかるので出来ないことを試行錯誤するという無駄を回避出来るはずです。

そして重要なことは、このレベルにおいては「科学的裏付けを理解する」というのは必ずしも公式を理解するということとイコールではなくてもよいのではないかと思うのです。


そもそも「数学的公式も含め科学理論を100%理解しなくてはすばらしいエフェクトは作れない」というのは間違いとは言いませんが、一個人にあてはめて考えるのは的違いな感じがします。
それは組織でやることです。
そう考えると、するとそれはただの劣等感からきた考えかも知れません。

たしかに科学的理論を100%理解するには数学的公式を理解している必要があるのですが、微分、積分も、変換行列も理解出来ない自分にはハードルが高すぎます。

ここであきらめるわけにも行かないので、どの程度の理解が必要かをもう少し考えてみます。

●ソフトのどこを操作すべきかがわかる程度
●ヘルプに書かれていることが理解出来る程度
●いろいろなソフトでの共通点と違いがわかる程度


この程度でも、アプリの操作においてはスキルをかなりアップできるのではないかと期待しています。
要は、自分の現在の知識レベルに合わせて、不必要に深入りしないということです。

次に考えるべき事は「このレベルで必要な事は何か?」ということです。


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勉強において最重要なのは、様々な単語、特に技術用語を自分なりに明確にすること。

これは科学的裏付けの説明を読んでいるときだけでなく、ヘルプを読むときにも大きな助けとなります。
表面的な知識にとどまり「理解した」と勘違いしていると後で混乱してきます。
それは結果的に、ソフトの操作の迷いもしくは何を操作したらよいか「わからない」という結果につながります。
これは技術用語に関係なく、単語全体に言えることです。
一つ一つは小さな物ですが、きちんとその文脈で使われている意味を理解していないと、全体の意味が把握できなくなってしまいます。

人間の持つ英知の断片は、数多くの単語にそれぞれ詰め込まれています。
言葉は、組み合わせることでさらに大きな知識を構築するブロックのような物です。
崩れたブロックで建物を建てない方がよいことは想像できます。

単語、専門用語の理解→科学的理論(概念)の理解
単語、専門用語の理解→ヘルプの理解


結果的にソフトの理解が深まり、操作能力も上がるというわけです。


何気なく、ソフトの機能やアトリビュートの名前を暗記し読み飛ばしていると、理解が表面的になり、暗記するべき事も増えてしまいます。
きちんと用語を理解していれば、Melを勉強したり、APIを理解するのにも助けになるでしょう。

何より、独自の発想と決断がうまれ暗記したチュートリアルの知識に頼る必要はなくなるかもしれません。

他のソフトと比較して実装のされ方の違い(ソフトの能力の違い)を知るのにも助けになります。


補足すると、単語だけを先に勉強して理論を勉強しろというわけではありません。
どちらも平行して起きてくるというか、理論を勉強しようとして、もしくはヘルプを読んでいてわからない用語にぶつかる。
そしてそこで調べるというのが普通だと思います。

また、一つの用語をあまりに難しく説明しているようなら(たとえばWikipediaの説明など)、もっと簡単に説明してあるHPなどを探すべきです。
そのあたりは柔軟にすべきで、辞書にたよらずとも理解出来ることはあります。
図や動画が理解の助けになることもあります。

最も重要な点は「自分が理解した」と言うことです。


鍵となるのは、理論も用語も「明確にすっきりと概念が理解出来る」まで、わかりやすい説明をさがすということです。


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どのような科学的知識、理論から勉強していくべきか?

現時点ではまだそこまで考えていません。
もしかしたら、特にに順番を決める必要は無いかもしれません。

不思議とそういう専門知識がしっかりとするにしたがって数式への抵抗がなくなってくるので、将来、そいういうことを勉強するときの抵抗感は少なくなっているとは思います。
もしかしたら、最初から数学などを勉強するよりは近道になるかもしれません。

また、結果的にそういった用語の理解レベルに合わせて「エフェクト」という領域においての精神的自由度があがり、結果的にスキルに反映し、作品に反映してくるように思います。


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今回は、エフェクトやるならフルイドは外せないよな~と考えていたときに「流体」を明確に理解していないことに気がついたことから調べてみようと思い立ちました。

その結果をまとめたものです。

決して「流体」について知っているから書いているのではなく、知らないから調べた。
そして、それをまとめただけです。

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