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2010年5月15日土曜日

サンダーバードと現在のCG

昨日のエントリで、最後に「『サンダーバード撮影風景』 THUNDERBIRDS 」というYoutube動画を紹介しましたが、これには、現在のCGでも有効な考えが述べられていましたので再掲します。
 


「2:28」で、SFX監督デレク・メディングス氏に「現実味を出すには?」という質問をしているところです。(デレク・メディングスは後に映画スーパーマンや、007シリーズのSFXも手がけた。確かにテイストが似てますね)
答えは、「人が気づかない細かな処理をする」

これは今のCGにも十分いえることだと思いました。


このビデオでは、例として、
車が画面を横切るとき、必ず後ろから一定量の砂埃が発つようにする。
車輪は別々に駆動させ、オモチャみたいに車体を跳ねさせない。
72コマの高速度撮影、120コマの場合もある
船の場合、船尾の装置が航跡を作ってくれる。
などを上げています。


まず車についてですが、確かに舗装された道路を走っているのによくホコリが発っています。
これはサンダーバード記念すべき第一話の「SOS原子旅客機(原題:Trapped In Ths Sky)」を見るとよくわかります。
0:33 救急車と消防車の発進シーン(Youtube動画

きわめつけは、下記の映像のエレベーターカーを使ったファイアーフラッシュ号の着陸シーンです。


それまでにもTVの特撮物で、車が走るシーンなどはありましたが、オモチャが走っているようにしか見えませんでした。
しかしサンダーバードではこのような小さな部分がリアリティーに差をつけることになりました。

それでも子供だからといって、現実との違いはわからなくなるほどではありませんでした。
もちろん、リアリティーは向上し、日本の特撮物とは桁違いです。
日本の特撮物は子供ながらに子供だましとわかっていた裏切られたような感じがしたものですが、サンダーバードは、その部分も十分配慮されていましたのでこれはうれしいことでした。
しかし、あくまでそれまでの物に比較してということです。
実際のところスケール感との関連で、過剰気味ともいえます。

今にして思えば、子供といえど人間の目はごまかせない物だと思いました。
子供ながらに、そのことは理解していましたが、それが逆に良かったのかも知れません。
オモチャを使った遊びでも、そのリアリティーを想像しながら遊べるので、楽しみがましました。


まぁこのようにサンダーバードのリアリティーはいわば誇張された物であったわけですが、それがミニチュアや人形との相乗効果で非常に良い味をだしていたと思います。
またミニチュアであるが故の、煙や火といった自然現象とのミスマッチも、想像で補う必要がありそれがおもしろさを出していたのかも知れません。
個人的には、わけもなく頭がぐらぐらしたり、どういう感情を表現しているのかわからない魚のような目つき、表情が変わらずに口だけが動く人形には愛着は今ひとつもてなかったのですが、SFXショットがそれとの対比で非常に良いアクセントになっていたように思います。

これが「謎の円盤UFO」になってしまうと、SFX部分が多少浮いてきます。使い手もそれをわかっているのでしょうね、SFXは最低限のものに押さえられているように思います。

(それにしてもこのオープニングはかっこよかった。)


まぁこういったSFXの表現で加えられたリアリティーというのは、いわばマンガやアニメの誇張表現と同じで、誇張表現であっても、それがおもしろさの味になっていたのだと思います。
サンダーバードの良さはこの部分にあったと思うので、これを実写+CGでリアリティーを持たせようという試みは、いわば作品のアクセントとコントラストを取り除いたようなものになり、おもしろみが減ったのかも知れません。

実際、実写版サンダーバードはおもしろくありませんでした。
(というか実写版は、リアリティーが減っているような感じもしますが・・・(^^;) )
おそらく新作のターボチャージド・サンダーバードも同じだと思われます。
(参照リンク:ブログ「混ぜるなキケン!」


スターウォーズを見て「おおっ」となったのはこの誇張されたリアリティーをさらに拡張し、実写映像の中で、その誇張表現がうまくバランスをとっていたたからかも知れません。

スターウォーズ6、7,8は好きではないのですが、これも同じ理由で、あまりにも整合性がとれすぎたリアリティーであるからかもしれません。
SFXの中にある、荒さやミスマッチからくるおもしろさは、もうこれからの時代は望めないのでしょうか?
コララインやアートアニメが好きなのも同じような理由からかも知れません。

この部分はうまく説明できないのですが、CGになって実写素材との融合がすすみ、整合性がとれすぎている。
いわば、すっきりきれいにまとまった印象を受けます。
SFXで存在していた、物理的な制限がなくなったことにも関係しているかもしれません。



それにしても、サンダーバードや当時のアニメのおかげで、ミサイル、鉄砲、爆発大好きな子供で育ちましたねw

うちの子も、テレビ見せてないのに、火とか炎、爆発とかが大好きで、絵や写真があると、異常な興味を示します。
男の子だからしょうがないのでしょうかw?

またこうして考えてみると、今まで自分の原点はスターウォーズだと思っていましたが、サンダーバードのほうが原点のような気がしてきました。
たしかに映画というメディアに興味を持ったのはスターウォーズですが、映像の原点としてはサンダーバードのほうかもしれません。


しかし、この国際救助隊っていう題材は後にも先にもサンダーバードだけですね。

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おまけ
キャプテンスカーレット
(0:20あたりの爆発シーンはやばいほど細部がよくできています)


他にもおもしろそうなサンダーバードのメイキングものがありました
The Making of the 21st Century
Part1
Part2
Part3
Part4


この本も読んでみたいです。
サンダーバードを作った男―ジェリー・アンダーソン自伝

最後にUFOつながりで、
矢追純一 UFOスペシャル part123456789101112131415

4 件のコメント:

  1. 私も最近、バリバリVFXの映画を観ると、綺麗すぎて逆にリアルに感じないことが多々あります。
    どちらかと言うと、リアルに見えるCG映画を見せられている気分というか…Melonさんの仰る通り、「あまりにも整合性がとれすぎたリアリティー」ってのがぴったりだなーと感じました。完璧すぎて、ありえないと思えてしまいます。

    私のバイブル的な作品はBack to the futureですが、いま見てもやっぱりリアルなんですよね〜。w

    これからのVFXでリアルを目指すなら、現実の物だからこそある汚さ・不恰好さ、こういったものを取り込んでいくことが必要になる!…という時代を切望してます。
    求められなくても、私はむしろどんどん取り込んでいきたいと思っていますが・・

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  2. Serraさん
    コメントありがとうございます。
    現時点でもVFX(CG)も、いろいろな誇張表現を取り入れているのですが、なにか昔のSFXの時代と比べるとポイントがずれていて、なんとなく生理的に受け付けない物になっている感じがしますね。
    CGならではの表現は、多少軸がずれているのかもしれません、まだまだSerraさんのいうように、どんどんいろいろな現実に存在する物を取り入れて試行錯誤していきたいですね。

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  3. こんにちは。
    今度の作品で実写合成をやろうと思っているので、大変参考になりました。「現実味を出すには?」「人が気づかない細かな処理をする」うーん大名言ですね。額に入れて飾っておきたいです(笑。

    埃の表現はCMディレクターの中島信也監督が日清カップヌードルの"Hangry?"のCMでリアリティを出すために使ったそうです。あると無いでは全然ちがう、そうです。やはり神は細部に宿る、のですね。。

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  4. Hachiさん
    「Hangry?」なつかしいでえすね~。
    そういえばホコリありましたね、思い出します。

    CGでも映画とTVの大きな違いは、TVは必要最低限、映画のほうは無駄にデティールに凝るというのが普通ではないかと思っていますw
    まぁ、映画やプロダクションによって違うとは思いますが、たとえると、映画では画面に出てこないところまで作り込んだり、モーションブラーでみえなくなるのにディスプレースメント、バンプマップ、HDRIレンダーなどを使うとか。
    弱小プロダクションにはとてもできないことでも、大手だとやったりしますねw
    なんか現実味を出すにはということとは、ちょっと違うんではないかと思うようなこともたくさんありますが...、日本では黒澤明があけもしないタンスの中に服を入れておいたとか、有名ですね。

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