そのエントリに関連して@Kei YoneokaさんよりTwitterで結構いいご意見をいただきました。
Keiさんは3dsMaxメインのエフェクトアーティストですが、いろいろなエフェクトのTipsやトライ&エラーをご自分のサイトでも公開されていて、以前から参考にさせてもらってます。
さて、今回そのTwitterでの意見によって、新たにみえてきた部分があり、その情報を盛り込んでおきたいと思い継続したエントリで残すことにしました。
こう書くと、なんかすごいことに気がついたかのように感じるかも知れませんが、ただ自分の管理能力のなさ、なまけぐせに気がついただけです。
すでにご存じで実践されている方はたくさんいらっしゃると思いますので、公開するのは恥ずかしいほどです。
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まず@Kei Yoneokaさんご本人に確認をとりまして、ご厚意で、そのときのつぶやきを掲載する許可を頂きました。その内容をそのまま以下に掲載します。
その1
エフェクトは自分なりの考察持ってますがMelonさんほど深くないですね^^;自分もCGやってる人にエフェクトを勧めたいんですが、その理由の一つに「寝てても頑張れる数少ないジャンルの一つである。」ということがあります。これはどういうことかというと、、、
その2
とにかくエフェクトでシミュレーション系の物は非常に重くて、結果が出るのに数時間かかるということがあります。でもこれを待って結果が出たときは経験値が溜まるわけで、寝てる間にシミュレーションをかけておけば次の日には失敗するにしろ成功するにしろ何らかの学習をすることになります
その3
これを1年毎日続ければ365回、毎日は無理だとして2日に1回だとしても180回くらいのヘビーなトライアンドエラーができます。これだけやればシミュレーション系ソフトのパラメーターの意味などをほぼ大体を把握することができます。これを日々の業務に当てはめれば相当効果があがります。
その4
これが自分の言う「寝てても頑張れる」という意味です。これはアニメーターやモデラーみたいに手を動かしてなんぼみたいなジャンルではできないことですね。(重たいマテリアルやライティングを試すってことなら同じですか)というわけで、エフェクトは非常に時間を有効活用できると個人的には思います。
まず、「失敗するにしろ、成功するにしろ何らかの学習をする」というのははっとさせられました。
自分刃、うまくいかないシミュレーションは失敗としか考えない傾向があり、 そういうとらえ方をするとやっている作業の他大半は失敗と言うことになってしまい、非常に苦痛な作業になってくるんですね。
Keiさんのように捕らえることで同じ作業にも前向きに取り組めると思います。
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さて、もうひとつが本題ですが、じつは前回のエントリ「エフェクト関連の知識習得に関する線引き」ではあえて結論を出すのを避けていた部分に、触れられたなと思いました。
それぞれのソフトには個別の癖がありますが、その故となる理論は共通することも多々あり、場合によっては数式まで同じ物をもとにしていることがあります。
しかしながら実際にプログラミングしてソフトウエアという形に実装していく段階で、理論をどうプログラムにするかというアルゴリズムの部分で個々の開発者の考えによる違いがでてきます。
これはシミュレーションを実際に作っているときに、ソフト毎にいろいろな違いを生み出します。
前回説明したように、裏にある科学的理論が理解出来ることでアトリビュート名の由来や働きを推測することはできるようになります。
しかし、すぐにそのソフトを使いこなせるようにはなりません。
あくまでソフトウエア習得のための下準備が出来たような物です。
具体的にどれぐらいの数値を入力すればよいのかとか、どのようなときにそのアトリビュートを使用すべきかということは以下の流れで習得するしかないと思います。
1)ヘルプを読む
2)繰り返しソフトを使う
そのソフトがどのような実装のされ方をしているのかがわかれば、これらを効率的にすることも可能でしょう。しかし実際にはそのアルゴリズムまで公開されているのはまれでしょうし、公開されても理解出来ないというのもあります。
これは本格的な理論や数式をさける自分のやり方の限界でもあります。
さて、話を戻しますが、以上のように「繰り返しソフトを使う」というのは非常に重要で、ここでヘルプには書かれていない、ソフトの癖というか、特徴をつかむことになります。
これがうまくできなければ、なかなかおもうような結果が生み出せません。
結果的には使い物になるアーティストと、そうでないアーティストの分かれ道とも言えるでしょう。
この部分は、公開された情報が少なく、様々なチュートリアルやサイトによる情報でみんな四苦八苦して情報収集する部分でもあります。
実際にソフトの特徴をつかむまでには、値を変え、何度も繰り替えしシミュレーションをしなければわかりません。
しかし、この部分を合理化し、回数を出来るだけ少くすることで、ソフトの特徴をつかむまでの期間を短くすることができるということになります。
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さて、自分がシミュレーション関連のソフトをどのように習得してきたかということをもう一度、分析してみました。
ステップ1)ヘルプをよみ、ツール、アトリビュートの機能を理解する。
ステップ2)コントロールしたい部分がどのツールを使い、どのアトリビュートを使用すればよいかの見当をつける
ステップ3)目的にあったものができるまで、ツールの設定、アトリビュート数値の変更などを繰り返します。
シミュレーションの作業でアーティストにとって、未知の部分があると暴れ馬のようになり、コントロールすることが難しくなります。
これをうまく自分のコントロール下に納めるには、「ステップ3」を繰り返すことしかありません。
しかしながら自分の場合は、仕事で、数多くのことを試して結果を作り出してきたにもかかわらず、ほとんどその記録をとっていませんでした。
体感的に覚えている部分はあるのですが、後にそれを生かすとなると何割かは忘れているため、また一部は四苦八苦することになり、時間の無駄に感じていた部分もあります。
いいわけをするならば、各プロジェクトで設定値が違いすぎるので、そのまま使うことはできないとか、記録する時間が無いとか、どのように記録すればよいかわからないということもありました。
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そして上記の@Kei Yoneokaさんのつぶやき(その3)を読んでいてはっと気づかされました。
「ヘビーなトライアンドエラーができます。これだけやればシミュレーション系ソフトのパラメーターの意味などをほぼ大体を把握することができます。」
ようはこれまでの自分のやり方では、なんとか把握したものを失っては取り戻すことを繰り返しており、蓄積にはあまりなっていなかったのです。
実はこれは仕事においては致命的な間違いです。
どんな仕事でも、自分が行ってきたことの記録を取りそれを後で利用できるようにすることは通常の世界では当たり前のことです。
自分も前の仕事ではそうしていたはずが、ことCGということになるとすっぽり抜け落ちていたのです。
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次に考えるべき事は具体的にどうすれば、そのソフトを把握できるまでの時間を短縮できるかということです。
シミュレーションするときには、パラメータ(アトリビュートの数値)を変えた物をいくつも実行して、目的に合うものができるまで続けます。
この際に
1)どのパラメータを
2)どの程度変更したかを記録し、
3)その結果
がわかるようにしておけばよいということになります。
シミュレーションで苦労するのはどのパラメータをどれほどいじればいいのかを見抜くことです。
上記のテスト記録があれば、目的の効果を生み出すためのパラメータとその数値の見当がつけられます。
また不用意に同じ失敗を繰り返す事も防げます。
一つの人生で同じ試行錯誤を二度繰り返す必要がなくなります。
特定のパラメータにしぼって、比較のために数値を変えたいくつかのパターンを用意してやると良いでしょう。特に不要と思われるほどの数値でも、特徴をつかむためにわざとやってみる事も必要かも知れません。
実作業においては時間が無いため同時に複数のパラメータを勘でいじったりするので、実際にどのパラメーターがどのぐらいの影響を与えたのかは漠然としたままなんとか出来あがったということも少なくありませんでした。
そのため記録もしにくく、記録したとしても使いにくい情報になりがちともいえました。
アトリビュートをひとつかふたつ絞り、
変更もサンプル としてわかりやすい変化にする。
という事に気をつけて、シーンを作るためでなく、
そのアトリビュートやツールを理解するためのシミュレーションを実行し、記録することでこれはなしえるのではないかと思いました。
これによりヘルプファイルで読んだだけではわかりにくい特性を知ることが出来る。
そういえば、エフェクトアーティストの動画にはそんな感じで比較している動画を時々見ます。
ただ資料をきちんと残そうとすると、動画を作ったり、それを編集したり、アップロードしたりという時間が必要になります。これまた本末転倒となる可能性もあるので、そのあたりをどうするかという課題は残ります。
何らかのフォーマットを作る必要があるかも知れません。たぶんさほど難しい物ではないでしょう。
こういうことは、通常のエフェクトアーティストにとっては当たり前のことなのかも知れませんが、自分は、はずかしながら今までやっていませんでした。
これからはヘルプを読むときなどに、アトリビュートの理解を深めるにはこの方法を生かせたらと思っています。
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最後に前回のエントリからの考えを見やすく(見ずらい?)図にしてみました。
あまり考えずに作ったのでなんか変な感じもしますが、とりあえず修正した方がよい箇所がかわるまでの暫定版です。
左欄は自然現象がコンピュータ内でシミュレーションにおきかわるまでのステップを関連知識をもとに階層に分けたものです。
下位の物が上位の物をささえています。
そのため上位のものは下位に依存して存在していると言えます。
ただし、これはあくまで概略であり、実際にはそれぞれ相互に複雑に絡み合っている部分があり、明確に分類するのは難しい面はあると思います。
右欄は左欄の項目を習得/理解するために必要な事です。
太字はその段階で重要性の高さを示しています。
色分けですが水色はエフェクトアーティストに必要となる部分を表しています。
肌色の部分は主にTDやプログラマーの分野です。
見てわかるとおり、私のやり方では「4.アルゴリズム」「5.数式」の部分が飛んじゃっています。
そこからも、最高の方法ではないと言うことはわかると思います。
私のやり方は、あくまで数式アレルギー、プログラミング知識ほぼゼロでもエフェクトアーティストとしてベストを尽くせるようにするために考えた物です。
前回まで述べてきたことは、「6.科学的、工学的理論」に属します。
チュートリアルなどで勉強することは、だいたい「2」,「3」の領域です。
Keiさんの述べていたことはこの領域に属すると思います。
これをしっかりとやることは、理論を固めるよりも、より早いスキルアップにつながると思います。
ただし理論を固めることはその力強いバックボーンになり、その力を乗算してくれると思います。
余談ですが「7.自然現象」に関しては、
●現実世界での現象の観察
●高速度撮影された動画の観察
●本:特殊効果アニメーションの世界、エレメンタルマジック
●そのほかの自然現象の観察について述べた物(Webなど)
などが役に立つのではないかと思っています。
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