2009年6月16日火曜日
自分は何をやりたかったのか(パーティクルとは)
((このエントリは元々「パーティクルとは(仮題)」というタイトルで、書きかけだったものです。))
最近、particle に関して、もう少し根本から認識をしておいたほうがいいと感じる。
そうしないと、Melスクリプトや小手先の技術を追うことに一生懸命になり、仕事の目的を見失いがちになる。
また、あることがらに関して「プロフェッショナル」であると言えるには、その専門領域のどのようなこともコントロールできる自負がなくてはならない。
そのためには、細かなことまでコントロールできるスキルにくわえ、それをどのような時に適用できるかという知恵が必要になる。
その知恵は知識としてケースバイケースで身につけることもできるが、根本の考えを知れば、自分で考える力が付く。
さて、自分の専門は、(今のところ)VisualEffectsだ。
ビジュアルエフェクツでは、程度の差はあれど、パーティクルを扱うことはさけては通れないと思っている。
また、Mayaでパーティクルシステムを、自由にコントロールできるようになるためには、Melスクリプトの知識が必要とされる。
今のところ、パーティクルの必要性に追われて、それを自分の専門領域として受け入れ、Melスクリプトの学習を進めている。
もともとが仕事で、扱うショットにパーティクルが必要とされるものが多く、必要性におわれてやり始めている。そのせいか、受け身感がぬぐい去れない。
自分で「これがおもしろいからパーティクルをやっている」というのが今ひとつないのだ。
モデリングに比べるとより数学的指向が必要とされ、味気ない作業が続くのも一つの理由だろう。
しかし、実際の所「なぜパーティクルを使う必要があるのか?」という、もう一人の自分からの質問に答えることができないでいる。
自分が最初のスターウォーズを見てうけた衝撃とその後、いろいろなSFX雑誌を読みあさった時のわくわく感。
SFXの仕事を心ざしてこの業界にはいろうと努力したその衝動。
現在のパーティクルを扱うためにMELスクリプトを勉強している自分と、その頃の自分の間に空白がある。
そのせいか、いつもMelスクリプトやパーティクルを勉強するときにどこか戸惑いがつきまとう。
今回はその空白をうめ、その戸惑いを少なくなるようにしたいと思っている。
しかし、どこからとりかかれば良いかわからないので、手元にあるキーワードから掘り下げて、よりその源に近づく、いつものやり方で、やっていこうと思う。
まず「パーティクル・システム」とは何か。
日本語にすると「粒」を扱う仕組みとういことになる。
「粒」を扱うことで、何が出来るのか?
「火」、「水」、「光」、「煙」、「霧」、「粒」、「ゴミ」、「デブリ」、「個々が別々の動きをするかたまり」、「布」、etc。
こういった複雑で流動的な動きをする形を作ることができる。
こういった自然現象からパーティクル・システムへ至るまでをもうすこし詳しくたどってみると
1)ある「複雑な動きをするもの」を細かな部分にサンプリングして観察する。
2)その「個々の部分」を点に置き換えて、その動きを再現することを考える。
3)その「個々の部分」の動きを再現する。
4)その「個々の部分」の見た目を再現し、全体としてまとまった物にする。
という流れになるのだと思う。
「3」までは、どれも同じで、点が個別またはグループとして動いているにすぎない。
この時点では、「水」も「炎」も「光」も同じ点でしかない。
大きく変わってくるのは「4」のステップだ。
ここで最終的なイメージになるわけで、それを実現するにはいろいろな手段がある。
「メタボール」、「イメージ(スプライト)」、「軌跡」、「カラーリング」、etc。
この部分をしらないと、せっかく作ったパーティクルを実際に使える物に昇華させることは出来ない。
そしてこれらのことの根本にあり、忘れてはいけないのが動機だ。
すべての行為の元となった動機は、「煙」や「炎」などを映像に加えて、ストーリーを語らせることにある。
ここで注意すべきことはここには「パーティクルを使う」などというものは含まれていない。
別に実際の炎や煙を撮影して、コンプで仕上げてもいいわけで、必ずしもパーティクルでなくてはならない理由はない。
パーティクルを使う理由は主に二つ。
1)現実世界で再現不可能(コントロール、規模など状況によりその理由はいろいろ)
2)再現するには、お金がかかりすぎる。CGでやったほうが安上がり。
もう一つ加えるとすると、
3)撮影後に変更もしくは追加が必要なことに気がついたが、金銭的、そのほかの理由で再撮影できない。
3番目は2番目の理由に含めてもいいかもしれないが、最近ではこれも欠かせない理由になっている。
元々は金銭的なものかCGでしか再現できないもののみという観点であったが、ソフトの質もオペレータのスキルも上がり、最近では安価にリアルなものが作れるようになり、映像をよりよくするためのツメの手段としてつかわれることが、ふつうに行われるようになった。
何はともあれ、元々の動機は煙なり炎なりを作ることが目的で、それができるならパーティクルを使わなくてもかまわない。
要は自分が作りたいのは「煙」や「炎」なのだ。
CG以前は、煙や雲を再現するために、水槽と絵の具が使われた。
今でも、炎や爆発を再現するためにガソリンや火薬が使われる。
細かなデブリを舞わせるために、圧縮空気で打ち出したりもする。
では、なぜそういった「煙」や「炎」を作る必要があるのか?
それは、映像にリアリティーを追加したいからである。
映像にリアリティーを追加し、より見ている人が信じられるものにする。
それにより、映像の不手際にまどわされることなく、ストーリーを安心して追いかけていくことができる。
それがアーティストである「自分」が「達成したいこと」なのだ。
そのための手段として、「自分」がパーティクルを「選択した」のだ。
決してパーティクルを使うこと自体が目的ではなく、パーティクルしか選択肢がないから選んだわけではない(はずだ)。
そこを目的にしてしまっては、技術者(オペレータ)としては成功するかもしれないが、アーティストとしての視点が失われてしまうように思う。
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さて、何日にもわたってこのエントリを書き直してきたが、いろいろと調べている間に、パーティクルのことをより知るには、CG以前の時代のSFXや、自然現象、ストーリー・テリングなど幅広いことを勉強する必要があるように感じ始めた。
パーティクルのことを調べてより明確にしようと思ったのは、そもそも自分がCGを通して何をやりたいのかということを思い出し、明確にするためだった。簡単に言えばルーツを探り、そこから今までの間で指向の中でまとめ損なったところをきれいに整理し、これからの道を進む上で迷いをなくすことにある。
そのためには、自分の起源であるCG以前の時代にさかのぼる必要がある。
それにしても、こういう考えを持ち始めたのは先日の「仕事の流儀」で浦沢直樹氏と、宮崎駿氏の話を読んでからだ。
まだ、20代のころには、こういった完璧性をもとめる自分に対する厳しさやハングリーさがあったのに、最近なくなってきているように感じていた。
それが何かわからず、最近、20代のころによんだ本などを読み直していたのだが、この「仕事の流儀」を見て、ご両人とも自分なりの視点をもって見たこと感じたことを、表現しようとしているのだと思った。
そして、自分が、そういった自分の内面をどれだけ大切にしてきたかを考え直してみると、はずかしながらとても微々たる物だ、いつもだれか他の人の介在を許し、少しづつながらも自信を失ってきていたように思う。
ここで言う「自信」とはスキルに関しての自信ではなく、自分の感じている物を大切にし、他の人に認められないからと言って、安易にすてないこと。
要するに「自分の感じていることを信じる」という意味での「自信」だ。
とりあえず、とてもひとつのエントリに収まる内容ではないことがわかったので、このエントリはいったんここで終わりとする。
以下の内容は、あとでまとめようと思って残したメモですが、これからの調べ物でも必要なので残しておきます。
文面は最初に書いたときのままで手を入れていないので、内容的にとりとめがなかったりだぶっているかもしれません。
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いくつかの情報源からすると、VisualEffectsでパーティクル・システムが使われたのは「スタートレック2 カーンの逆襲」(1982)のジェネシス計画のらしい。
当時、映画館に見に行ったとき、惑星全体をなめるように動くカメラに驚かされた。
また惑星全体が爆発するように見える効果や、光のショックウェーブが惑星全体に広がる様子が表現されていた。
当時はそういったことよりも、惑星の地形が見えることや、植物に覆われていく感じがすごいなと感じた。
リアリティーの面ではまだまだCGっぽいものだったが、たしか当時のSF雑誌「スターログ」には画期的な出来事のように書かれていたように記憶している。
http://homepage2.nifty.com/out-site/starlog.html
(余談だが、スターログは1979年6月号から1980年5月号までは時々、それ以降1986年4月号まで毎月欠かさず買っていました。とても良いsfxの記事がたくさんありました。いまでも表紙をみるとそのときのわくわくした感じを思い出します。)
wikiによると、このエフェクトはILMの前身である「スプロケット・システムズ」によってピクサーの創設メンバーにより作られたらしい。
このエフェクトは、ジェネシス装置がテラフォーミングを行う場面の説明に使われた。
原子レベルに分解された物質が再構成されて、様々な生命を生み出すという効果を視覚的に表現するためにパーティクルが使われた。
Youtubeのビデオを見るとわかるが、これはプロジェクトの解説をする劇中のビデオのもので、実際のエフェクトとして使われているわけではない。
おそらくまだ技術的にリアルな物はつくれないことがわかっていたからだろう。
実際のエフェクトだが、ミサイルにのせられたジェネシス装置が星にあたり爆発がおき、炎と煙上のものが立ち上る。
そこから立ち上る無数の炎の柱が連鎖反応を起こすように星の表面全体に広がっていく。
Project genesis(Youtube)
http://www.youtube.com/watch?v=cCw_iW6-i88&feature=related
そして水と植物が地表にあふれていくが、そこまでパーティクルで作られているのかどうかはわからない。
それにしても、今見ても、30年近く前につくられたとは思えないほどのクオリティーである。
特にカメラの動きはすばらしい。
調べてみると、ちょうど同じ年には「トロン」が公開されている。
CGを映画に使う試みがいろいろと試されていた時代で、CGと言えばワイヤーフレームのモデルというのがまだまだ一般的なイメージだった。
その少し前は、ワイヤーフレームでさえ、費用対効果を考えると、実用的ではなかったのか手描きのアニメーションなどが使われることが多かった。
翌年1983年の「007ネバーセイ・ネバーアゲイン」でも劇中のゲームでワイヤーフレームが使われていたが、これは実際に針金で作られたモデルを撮影したものであると模型の写真付でスターログに紹介されていた。
(この映像の6:00ぐらいのところ)
このころは、CGはまだまだお金も時間もかかる上、リアルな物には使えない代物だったが、少しづつ映画の中で実用化されていくその黎明期だった。
1977年の最初のスターウォーズが公開されており、ジョージルーカスはCGは映画には使えないと思っていたころだ。
1979年のディズニー映画「ブラックホール」では、オープニングにワイヤーフレームのCGが使われていた。
実際のブラックホールのエフェクトでは、アニメーションか実際の流体を撮影して作られたのだと思う。
http://www.youtube.com/watch?v=aGm-hoFk0Qg
しかし、なんと退屈なオープニングか...。
ちなみに大手エフェクトスタジオのリズムアンドヒューズにはブラックホールのポスターが壁に掛けられている。
大体スタジオで関わった映画のポスターを貼ってあるのだが、このCGを作ったのはリズム&ヒューズなのか、もしくは、会社を創設時のメンバーのだれかが関わっていたのだろうか。
ずっと気になっている。
ちなみに同じ頃日本でもゴルゴ13にアニメではじめてCGが使われた。
http://www.dailymotion.com/video/x5jk8s_golgo-13-first-anime-cgi-scene-1983_shortfilms
話をパーティクルに戻すと、カーンの逆襲では
「炎」
「煙」
といった要素にパーティクルが用いられた。
こういった要素の演出をするには、当時は、
実際の炎や煙をなんとかコントロールして使っていた。
他にも煙や雲を表現するには、
スターログで、「フラッシュゴードン」では異世界の空を表現するのにトイレ用洗剤を水槽にいれたという記事を読んだことがある。http://www.youtube.com/watch?v=VnTHypbLlkE&feature=related
(「デジタル/エレクトロニック・シネマ 」にも書いてあった)
http://www.tcat.ne.jp/~oguchi/Digital%20&%20Electronic%20Cinema%201970-1989.html
映画 The Day Afterでは、確か、打ち上げられるミサイルの煙と、キノコ雲が水槽と絵の具を使ってつくられた。
http://www.youtube.com/watch?v=7VG2aJyIFrA
他にあげれば、パーティクルそのものではないが、
レイダースやポルターガイストの幽霊は、水槽で布を動かして撮影したのは有名なところだ。
このように見てくると、炎は別として「煙」に関しては昔から液体を用いた偽物の「煙」が使われてきた。
そして、それはそれなりの効果を上げていた。
http://www.asr.co.jp/user/nobo/bk/bk05.html
http://homepage3.nifty.com/gachinkobros/berson.html
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