日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
●まとめエントリはこちら ●FAQ ●お問い合わせは左のメールフォームから

2010年8月16日月曜日

林田ブログ 「就活」を読んで。

※記事の中に出てくる林田宏之氏は2015年8月3日に急逝されました。
謹んで哀悼の意を表します。

※この投稿は元々2010年8月に書かれたものですが、あまり適切でない表現が多く、意図が伝わりにくいものになっていたので2017年1月11日に修正、加筆しました。



またまた林田さんのブログ・エントリ「就活」を読んだあとに、いろいろと考えたことをまとめてみました。

今回のエントリも、共感できる内容でした。
この傾向(ストーリー作品を作る)って日本人が多いかなと思うが、海外の学生とて例外ではない。
新卒だと卒業制作で作ったストーリー作品をデモに入れてくる人もいる。
しかし、本当にVFXだけを目的にした学生の作品などは、必要な物だけを見せており、断片的な映像の寄せ集めだったりする。


ただ見る側からすれば、なにか使えそうだなと思わせる映像にたどり着くまで、じっとつまらないストーリーの流れを追っていくのはつらい物がある。

VFXがすごそうと思って借りてきたレンタルDVDが思った以上にストーリーが退屈だと、じっと目的のVFXが出るまで待つだろうか?
待つ人もいるだろうが、VFXの部分だけが目的なら早送りするだろう。

これと同じだ。
しかも見る側はプロとして数多くの作品を見なれた一目で善し悪しがわかる人間がみているのだごまかしは一切きかない。
個人的には、それをいろいろなものでオブラートに包んだようにされると、その人のガッツの無さを感じてしまう。


それにしても、たしかに学生のデモリールってストーリー作品が多いなと感じる。
たまにあるのが時間が無いため予告編みたいに作っているもの、ご丁寧に「The following PREVIEW has・・・」の部分から見せており、中は文字で解説をはさみ、最後にComming soonで終わる作品。



このパターンはあまり好きではない。
自分の作品に自信がないのか、最後まで作り上げることができなかったのかと思ってしまう。
多くは構想段階でアイデアが膨らみ、実際に作業している間にとても時間が足りないことがわかり、作品提出時には見せ場だけつくってしまおうということで、こうなってしまうのかなと思う。
それでも、作りかけの印象を与えないようにするには予告編風にしてしまうのが一番違和感が少ない。

まぁ学校内でみせるならそれでいいのだが、就職するためのデモリールは目的が異なる。
企業で審査する側は、採用する側の目的に合うものを探している。
CGだからCGを見せるデモリールであるべきだが、これが役者なら演技をみせるデモリールになるし、編集なら編集をみせるデモリールになる。

審査する側は、おそらく「The following PREVIEW has・・・」をうまく入れられる人、Comming Soonが絶妙なタイミングで入れられる予告編を作れる人を探していることは、ほとんどない。
またストーリー作品の鑑賞をしているわけでもないし、それを求めているわけでもない。
(一つの完成された映像作品をもとめている企業もあるかもしれないが、多くのケースでないだろうと思う)

商業作品の予告編は短い時間で印象に残し、人を呼び込むことにつなげるのが目的である。
印象付けられるのでデモとしてよいと考える人もいるかもしれないが、見る側はプロである。
映像から自分の目的にあったものを探すのに離れていて、小手先の技術には左右されない。
むしろノイズとなる。


そもそも、卒業制作だとしてもCGを見せるための物であるべきなのに、冒頭から文字ばかり見せていても仕方がない。


面白いストーリーを作りたくて、モデリングですごいものが作りたくて、アニメーションをかっこよくみせたくて、すべてを一本の作品でまとめたいというような。
その気持ちは学ぶ段階において必要なことだが、デモリールはその成果をみせるものである。
学生の間の、限られた時間でやるなら、そのすべてをやろうとすると中途半端にならざるを得ないことを忘れてはいけない。




-------------
さて話を戻すが、なぜそんなストーリー作品が多いのかを考えてみた。

学校としては映像作品としてのCGにかかわるため、その作業全体を教えるために、教えてもらったことをすべて応用してやろうという意気込みと、卒業制作という学生期間の集大成ということが関連して結果的ににそうなってしまうのかもしれない。

では、学校で作るような物はまったくもって無駄なのか?というとそうでもないとは思う。

ストーリーとストーリーボードを構築し、一部をプレビジュなどにして映像設計を済ませた後で、作り上げれば、映像が作られる流れを知ることができる。
どんな仕事でも大局で見て、自分がどこを担当しているのかを知っている人のほうが、自らの判断で動くことができるし、CGのように相互の分担が密接に関係している場合は他の部署にとっても仕事のしやすい結果を生み出しやすくなる。

また各種の映像コンテスト、シーグラフのアニメーション・シアターなどを目指すのなら、作品を作る必要がある。
また将来映像作家になり、自分の作品を作りたいならまさにそうすべきである。
ただそれは分化されたスペシャリストとしての「デモ」を見せるのとは少し異なってくる。

ただ、そういった作家性にすぐれた技術が伴っていれば、ストーリー作品であっても、雇ってもらえる可能性はあると思う。
ただし、突出した芸術性と技術をプレゼンテーション出来る必要がある。
技術が十二分にあって、ストーリーを効果的にみせるすべも心得ているというこおであれば、その人は技術をストーリーテリングに役立てる方法を知っていると見ることができる。
それは、それで貴重な人材である。
たとえば、シーグラフで入選するような人にはそのような人が多く見られると思う。

しかしながら、多くの学生は、そこまでの熱意がなかったり、時間がなかったり、当面の就職が目的であったり、どこかの会社でアーティストとして使ってもらうのが目的だったりする。

その場合は自分の目的(就職)にあったやり方に、注力するのが一番だと思う。

どうしてもストーリー作品に関わりたいなら、グループで制作し、自分の専門分野に特化して作業するのが良いように思う。
デモリールでは不要な部分を使わなければよい。
こちらの学生でもそうする人は良くいる。
これの良い点は、プロダクションでも共同作業というのは必須なので、共同作業の中できちんと自分の役割を果たせる人間かどうか?が伝わる事もある。(いつでもというわけではないが)


-------------
最後に、これは意見が分かれるところだと思うがデモリールの冒頭に自分の名前を結構な長さで見せる人がいるが、自分の好みではない。

フリーランスだから名前を売り込むべきだと、思うかもしれないがそれはちょっと違うと考えている。
わざわざ、自分の名前をデザインし、CI的な要素を含めたとしても企業的な活動をするのでない、一人の雇われアーティストとしては、悪くはないがちょっと的外れな感じはする。

実際、冒頭の名前だけ表示されている部分が長いと、早送りしたくなってくる。

今はデモリールの冒頭から作品を見せ、それに邪魔にならないレイアウトで名前をオーバーラップさせるようにしている。

これは自分の好みの問題かもしれない。


-------------
以上に述べたことは学生だからわからないか? というとそうでもないだろう。
注意力があり、見る側の立場を考えれば簡単にわかることだ。

またWebのいろいろなところで見ることができる、デモリールを参考にすれば良い。
だれが冒頭の様々な文字による説明をみたいと思うだろうか?

急いでいるときに「この作品のVFXをどう思うか?」とその場で感想を求められた時のことを考えるとよいかもしれない。
見ようと思う部分とそうでない部分が明確に分かれるはずだ。

審査する側は通常、その審査だけを仕事にしているわけではない。
普段は仕事をしていて、通常は締め切りに追われる時間を使っている。
1分でも早く済ませて自分の仕事にもどりたいわけです。
その時間を使うわけだから目的のもの以外は見たいとは思わないのは普通かなと思う。
観客が娯楽で見ているのとは、姿勢も視点も違うことを忘れないでほしい。

なので、とにかく目にとめてもらいたいものだけを載せておく必要があることはわかるだろう。
一目で「これすげぇ」と言える物をいれておけばいいわけです。
そのことが考慮されたデモリールは、それだけでも業界のことをわかっているなと好感が持てるだけでなく、その人が目指すものが伝わってくる。
そのときは駄目でも、また新しいのが出来たら送ってねと言いたくもなるし、アドバイスをもらえることもあるかもしれない。

 すべての学習の始まりは興味を持つことであり、次に来るのは観察である。
学習とか人に教えられることは、もっと後である。
観察は自らが行うことであり、人に教えられることではない。

デモリールがどんな風であるべきか?興味を持ったのならいろいろと観察すれば自ずとわかってくることも多い。

1 件のコメント:

  1. いつも楽しく観ております。
    また遊びにきます。
    ありがとうございます。

    返信削除