正確にはストップトリックではなく、ただ二つのカットをつないだだけ。
二つのカットの中心となるオブジェクトの形状が似ているために、状態が遷移したように感じさせるものになっている。
それは2001年宇宙の旅で、猿人にほおりなげられた骨が、宇宙船に変わるシーン。
前後のカットは、まったく違う物を異なる場所で撮影している。
共通点は、
1)背景にはほとんど目をひくものがない。
2)浮遊している物体の白い色と、細長い形状。
骨から宇宙船へ意味的な状態遷移を表現している。
ここでは「視覚的」な状態遷移よりも「意味的」な物が重視されていると思われる。
それが、カットのつなぎだけで表現されている。
ストップトリックではないのだが、あえてとりあげた理由は、
カットの持つ強烈さを感じる良い例だと思ったからだ。
この状態遷移はカットで表現されているがゆえに非常に強力で、見た物に混乱を引き起こすほどの衝撃を与える。
正直、最初この映画を見たときには、ここで何が起こったのかわからず、混乱した。
「なぜ、いきなり宇宙船?」
ただこの後には、穏やかでゆったりしたシーンが続くので、その混乱も徐々に和らいでいった。
キューブリックは、カットの技法が生み出す衝撃が見る物を混乱させることを十分承知で作ったのだろう。
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人類が初めて使った道具「骨」と、そこから進化した人類の英知を集めて作られた「宇宙船」
その間にはながい時間が横たわるが、それを一瞬に飛び越えさせ、人間がいかに進化したかも感じさせるようになっている。
最初この映画をみたのは中学生のころだったが。
いろいろなSF雑誌で、この「「骨」が「宇宙船」に変わるシーン」は大絶賛されていた。
しかしながら、SFXおたくの自分には、
当時、どうしても「骨」が「宇宙船」に「変わった」とは認めることが出来なかった。
カットをつなぐだけという原始的な方法が幼稚で子供だましのように見えた。
いまだに「変わった」とは感じられないが、その異質なカットをつなぐことで生じる衝撃と
そこに表現しようとした意味は、わかるようになってきた。
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