日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
●まとめエントリはこちら ●FAQ ●お問い合わせは左のメールフォームから

2010年9月5日日曜日

本「スタジオプロジェクトDynamics」への補足 (その4)

とりあえず今回で4回目ですが、別に、作者やボーンデジタルさんの揚げ足をとったり、細かなミスをつついておとしめようという意図は全くありません。
むしろ、その逆で入門者向けに、ここまで良い本はいままでなかったので、これは日本のスキルアップにはとても良い後押しになるのではないかと思っています。
個人的に何か収益になるわけではありません。

したがって、この本を買った人が、ちょっとした文章の意味が理解出来ず、結果としてうまくいかずにがっかりして途中であきらめてしまうというのは、見過ごせません。
誤植や翻訳ミスといった凡ミスは非常にもったいないと思います。

以前、Mayaを習い始めの頃、こういった日本語訳されたチュートリアルのちょっとしたミスで、 説明通りに行かず、どうしてよいかもわからず数時間はまってしまったことがありました。
結果として、高い金を払って買ったにもかかわらず、そのチュートリアル本は少し読んでおしまいでした。
もちろん期待していたスキルは伸びません。
こうした経験からちょっとしたミスが特に初心者には大きな障害となるとわかりました。

一方で、翻訳の難しさもわかります。
Mayaを熟知した翻訳者などそうそういるわけでもないので、こういった本の翻訳は大変な作業だと思います。
以前、業界は違いますが、マニュアルの原稿と版下作成にも関わったことがあるので、どんなにチェックしても見過ごされがちな点もあることはよくわかっています。
ただ、こういったことを許容していては、質の良いチュートリアル本は生まれてきません。

特にエフェクト関係はチュートリアルが少ないので、この本だけはなんとかガイドとなってほしいと期待しています。

この手のステップバイステップのチュートリアルを正確に校正するには、実際に実践しながらステップを追っていく以外にないでしょうし、それが一番確実な方法だと思いますが、実際の出版現場では非現実的なステップかもしれません。

スキルが高い人たちはこのような入門書は、それほど読むことはないだろうし、
かといって初心者でしかも日本語版を購入する人は、間違いなどを指摘することはできずに、ただの説明不足や誤植、誤訳に振り回されるだけですから、ほおっておいては、なかなか解決できないだろうことが推測できます。

よって、私のようなある程度Mayaになれている人間であれば、ステップの間違いに気がつきやすく、チュートリアル程度なら英語も少し理解できるので、誤訳も指摘できます。

私のような人は他にもいるかもしれませんが、その人達がちゃんとメモを残し、しかも公開するかどうかという点については、もっと確率が低くなります。

ということは、この勉強の機会をうまく利用し、気がついた点を残し、公開していくのが、この本を手にした全ての人にとって役に立つのではないかと思ったのがこの「本「スタジオプロジェクトDynamics」への補足」シリーズを書いている理由です。





-------------

Pg21 ステップ2の誤訳
: 「デフォルトでは、シーンにないライトがない場合には、Mayaによって有効に設定されます
: 「デフォルトでは、シーンにライトがない場合にMayaはあるライトを有効にします。

これは、デフォルト・ライトのことを説明しているわけですが、デフォルトライトの詳細はオンラインヘルプをご覧ください。

CGでは、かならずライトがないと、レンダリングしても真っ黒になってしまいますから、何かしらの結果をみれるようにするには、最低一つのラインとが必要となります。

毎回、シーン作成する度に、ライトを作成する手間を省く意味でもデフォルト・ライトが自動で作成されています。
通常、Mayaのシーンにライトを作っていなくてもレンダリングしたときにオブジェクトが見えるのはこのデフォルト・ライトのおかげです。
これはディレクショナル・ライトです。


-------------
Pg21 ステップ3への補足
図1.25は、この時点での銀河のイメージのスナップショットです。
とありますが、これは翻訳の間違いではありません。
.原文自体、ストレートな言い方でなくて多少わかりにくい説明だと思います。

もしかしたらこのIBLを利用してレンダーしたイメージのことだと思われる方もいるかもしれないので補足しておきたいと思います。
(自分がそうでしたので)

この文の一つ前で「galaxy.iff」をロードするという文がありますが、ここでは「そのgalaxy.iff はこんな画像です」と説明しているだけです。
あえていえば「銀河」と訳さざるを得ないので、どのことを指しているのかわかりづらいのですが原文では
Figure 1.25 shows a snap-shot of the galaxy image at this point.」
となっています。
the galaxy image
であり、その前にあったgalaxy.iffを指していると思います。
ここがややこしくなっているのは、

「galaxy.iff」はファイル名のことを指しており
その後の説明はこのgalaxy.iffというファイル内にある画像(イメージ)を見せたいのでキャプチャーしたものを掲載しておきます。という意味です。


意訳するなら
図1.25は、galaxy.iffに含まれているイメージ画像です。
というほうがわかりやすいかもしれません。


-------------
Pg22 一番上にあるIBLノードの説明について補足
これは違和感なく理解出来る人もいるのだと思いますが、自分は少し引っかかったので

イメージをシーンに合わせて回転させることができます。
とありますが
原文は
You can rotate it to align the image in your scene.」
ここで「合わせて」と訳されているところは、原文では「align」です。
Alignには、「そろえる、調整する、整合させる」という意味があります。

これをそのまま訳すと
シーン内では、イメージを調整させるために、それを回転させることができます。
となりますが、「それ」という表現ではあいまいさが残るので、以下のように表現するとよりわかりやすくなります。

「それ」というのはIBLノード(mentalrayIbl1」ノードのことを指していますので、
文章としては
シーン内では、イメージを調整させるために、IBLノードを回転させることができます。
というほうがしっくりくるでしょう。

しかし、これは原文と多少異なってくるため、この訳を載せることは出来ないでしょうね。



-------------
Pg22 ステップ4 補足
イメージをベースにしたハイブリッドのディレクショナル・ライトが作成されます。
とありますが、
ここの「ディレクショナル・ライト」は原文では「directional lights」と最後に「s」がつく複数形です。
要するにイメージのピクセルカラーと強度を元に、たくさんのディレクショナルライトが作成されるという感じですね。
(いくつ作られるのかはわかりませんが)

それを踏まえておけば後に続く「各ディレクショナルライトは、・・・」の文脈は理解しやすいと思います。



-------------
バグ?
このメンタルレイのIBLレンダリングですが、Maya2011だと、星とアステロイドベルトは真っ黒になってしまい背景の画像しかレンダリングされません。
オブジェクトのアルファはあるので、ライト(IBL)のバグだと思うのですが、何かご存じの方がいたら教えてください。

設定は
デフォルト・ライトをOFF
IBLを作成。
画像を使用
IBLのEmitt Lightをオン

です。

ちなみにMaya 2011 64bitを使用、 Hotfix3 64bitでインストールし直しましたが現象は変わりませんでした。

これについてはまったく同じ問題を抱えている人もいました。
The AREA: Maya 2011: IBL?
このスレッドの中にもあるのですがバグについて書いてあるのは以下のURLのページです。
http://mayastation.typepad.com/maya-station/2010/08/light-emission-from-ibl-node-increase-render-time-in-maya-2011.html
ここにあるようにQualityUとVを7にしても、このシーンの場合は、変わりませんでした。

(2010/9/5 追記: Maya2010にて同じシーンファイルを開いたところ、問題なくレンダリングできました。やはりMaya2011でのバグと思われます)



-------------

Pg25 流体のメカニズム 補足
冒頭の文章で、
その後数年のうちに、ジオメトリ操作の分野において新たな用途が見いだされました。
これだと、「ジオメトリ操作の分野」に焦点が合っているような気がして、なぜいきなりそのような話になるのかちょっととまどいました。

原文は
And over several years, this technology found new uses in manipulating geometry.

合っているかどうかはわかりませんが、自分なりに訳してみると
数年のうちに、このテクノロジーの新たな用途がジオメトリ操作において見いだされました。
微妙な違いですが、これだと原文にもあるように「このテクノロジー」と明記してあるので、その前にされたパーティクルの話が続いていることがわかります。

ちなみに、これはソフトボディーやクロスシミュレーションのことを言っているのでしょうか?


-------------
古くからある技術に基づく新しいツールが登場しました。

原文は
a new tool emerged based on an old science.

「science」ですが、これを「技術」と訳すこともできるのですが、自分の場合は「科学」と訳した方が納得できますし、あとの文章
「実世界の流体メカニズムの研究がベースになってい・・・」に結びつきます。

自分なりの解釈した訳は
古い科学に基づく新しいツールが登場しました。



-------------
これはさほど代わりはないのですが、

主な概念の基本を理解するだけで十分です

原文は
only that you have a basic understanding of the principal concepts.

自分なりに解釈した訳は
主要な概念の基本的理解があるだけで充分です。


-------------
過去の関連エントリ:
本「スタジオプロジェクトDynamics」への補足 (その1)
本「スタジオプロジェクトDynamics」への補足 (その2)
本「スタジオプロジェクトDynamics」への補足 (その3)

0 件のコメント:

コメントを投稿