日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2010年2月14日日曜日

ハリウッドで通用するアーティストになるには

まず、これは単に自分自身が考えたことで、正しいかどうかはわからないことをお断りしておきます。真偽は、読む人の判断にお任せします。

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ハリウッドのVFXは誰が見てもすばらしいと感じると思う。
もちろん、すべての人がすばらしいと感じているかどうかはわからない。
ただ、ここではそんな少数派は切り捨てて考える。

●本物と見間違えるほどのリアリティー
●異常なほどの作り込み

これらはどのように達成されたのか、いつも議論の主役になり、注目の的である。

帰結する解答はいつも似ている。
大人数で作り上げるパイプラインの存在。
高度な知識に裏打ちされた独自のシステム開発。
これらを支える大予算の存在。
大体はこういったに帰結する、そして「だから我々にはできない」という結論にも...。


日本映画には予算も時間もないから、あそこまでのクオリティーは作れないという意見もよく聞かれる。
それは実際の所、本当だと思う。
映画全体を考えたときには全くその通りだ。
だからこそ、あきらめもつく。

しかし、個々のアーティストにはそれはあてはまらないと思う。
そこであのクオリティーを追究することを諦めてはいないだろうか?とふと疑問に思うことがある。

ハリウッド映画は確かに大人数で作っている。
予算もあるのでトータルの工数も増加できる。

しかしながら最終的なクオリティーを分解したときに、その要素の一つ一つを決断し作り出しているのは個々のアーティストである。

あるショットのある一部分のクオリティーを出すために、一台のマシンで一人のアーティストが奮闘することだってあるのである。
特に大手のようにシステム開発の予算も体力もない中小企業がハリウッド映画にかかわるときはそうである。大予算の恩恵もそのレベルまで下りてくると薄くなってくる。
そしてこういった環境で作られるショットも少なくない。
名前さえ表に出てこないエフェクト・ハウスが関係してくることもよくあるのである。
それは純粋な3Dソフトとどこでも手に入るプラグインでつくられていることさえある。
最近では3dsMaxを使ってハリウッド映画を作る会社もある。

個々のアーティストの生み出す小さな結果がトータルに組み合わさって、できているのがハリウッド映画のVFXだと思う。


今、目の前に「このショットにこういうVFXを追加して欲しいのだが、何ができて何を他の人にやってもらえばいい?」と聞かれたとしたらあなたは、どう反応するだろうか?

もちろん、足りない技術は他のプロフェッショナルにお願いするとして、あなたがそのショットの一部に貢献してハリウッドのクオリティーをだせるだろうか?

たとえばトランスフォーマーのようなものを作りたいとして、映画のあるショットを取り上げてみる。
そのショットの以下のどの部分でも良いが、映画とまったく同じクオリティーにできるかどうかということだ。
ロボットのセットアップ(リグ)ができる。
ロボットの変形アニメーションができる。
テクスチャーがリアルに出来る。
見た目をリアルに出来る。(ルック・デヴェロップ)
ライティングをリアルに出来る。
エフェクツ(パーティクルなどをリアルにできる)

全く同じではなくても、90%ぐらいは近づけられるだろうか? 80%ならどうだろう?
見た目であれば、まず静止画から挑戦してもいい。


最近、気がついたが(「遅すぎ!」というツッコミはなしということでw)、
こちらで就職活動をするということは、そういうことをアピールするということだと思う。
デモリールやレジュメはそれを証明するための手段である。
一部でもそれがリクルート担当者やスーパーバイザーの目にかなえば、道が開けてくる。
たとえある映画の1ショットをまるっきりコピーしていてもよいと個人的には思う。
それをどんな手段を使ってでも、まったく同じクオリティーに見えるようにつくっているなら、それでいい。なぜなら求められることはショットを作る事に貢献できるかということだけだから。

今日、友人と話していたことだが、ハリウッドでは人脈が大切といわれることがよくある。
しかしそれは、大作映画を作る環境には、かならずしも当てはまらない。
人脈はたしかに大切だし有効に働くこともないとはいえない。
しかしそれはクオリティーを作り出せる腕前があり、それが採用側のタイミングとそのプロジェクトに必要なものであるときに初めて有効な手段となる。
それらの前提がシビアになってくる環境ほど、人脈は関係なくなってくる。
アーティストを選別するスーパーバイザーやプロデューサーには失敗は許されないのだ。
なぜなら大金が掛かっているからだ。
情に流されて採用して、もし駄目だったら責任はその人に降りかかってくる。
反面、それほどシビアではない環境、たとえば中小企業であれば、逆に人脈が生きてくる。


100%そうだとは言えないが、ハリウッドで人脈が生きるのは、たくさんの中小企業があるというのも一つの理由ではないかと思う。


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さて、ようするにハリウッド映画のVFXを作るには、仕事でも個人の作業でも良いので、とことん何かを追究し、これならハリウッド映画のクオリティーが出せると、自他共に認められるスキルを身につけておかなくてはいけない。

これは経験を積むことによってもできるし、個人の独学でも達成できる。
手段はどうでもよい、あなたがそのスキルを持っていることが証明できる結果をみせられることが最重要だ。
チャンスが来たときにそれをつかむためにも日々の訓練を積み重ね、精進しておくことが必要である。一日10分でも1週間で70分、1ヶ月で280分(4時間40分)、一年で56時間の勉強ができる。
「ゼロ」と比較してどれだけの差があるか考えてみて欲しい。
時間が無いという人も多いが、本当に意図すればであればたいがいの人は時間を作り出すことができるだろう。
本当に時間が無い人もいるだろうが、そういう人は、ハリウッドで仕事をするつもりはないか、もしくは自分なりの工夫をすでに始めている人だろう。


また、趣味的にとりくむこともできるが、それでは時間が掛かり、意図が散漫になる。よって得られる物も少なくなる。
やるなら明確な目的を持ち、意図を強く持って突き進むことで、不要な物を切り捨てることができ、効果が上がる。

明確な意図を持ち、実践したのがデジタルドメインの坂口氏ではないかと思う。

最近の記事などでは、デジタルドメインで仕事をしながらの努力が紹介されているが、以前、読んだCGワールドの「海外で働く日本人」(鍋潤太朗 著)にあった坂口氏のインタビューによると、彼の努力は日本にいたときからすでに始まっている。(インターン前に必要と思われる、C言語を勉強したといったようなエピソードだったと思う)


おそらくそれは学校で学べることではない。
学校に行けばなんとかなるのではないか? 卒業して経験をつめばなんとかなるのではないか?という中途半端な希望は棄てた方がむしろ精神的に良い効果をもたらすかもしれない。
それは、有効に働くこともある。
しかしながら、気持ちの持ち方がしっかりしていて行動に移すことが出来る人が勝利するのは変わりない。
「あなた自信」である。それは学校では学べない、自分が向き合う必要がある。


そして、世界中のどこの国にいても、たとえ日本にいても、実行できることであり、だれもが今すぐ、スタートできることである。
現にハリウッド映画をめざす世界中のアーティストは、そうしている。

淡い夢を抱き、のほほんと暮らしている人と、死にものぐるいで日々の時間を向上に費やしている人が同じ土俵にたったとき、どちらが勝つかはだれにでもわかることだ。

ハリウッド映画に関わる優れたアーティストとは、それをこなしてきた個々のアーティストからなる。
決して「ハリウッド映画のアーティスト」という集団が最初から存在していたわけではないし、一律にそういった才能をみにつけるシステムがハリウッドに存在しているわけでもない。(と自分は思う)


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また日本のCG業界で死にものぐるいで働いている人達の努力は決して無駄にはなっていない、
日本でCG業界でスキルを身につけた人はこちらでも高い評価がされることがある。

しかし、自分がハリウッド映画のどの部分なら担当することができるか?
そこに焦点をあてて、一日に少しだけでも努力をすることでもう一歩ふみだし、それを研ぎ澄ますことで、夢に近づくことになるのではないかと思う。


 現在ハリウッド映画のVFXは世界中へアウトソーシングされている。
将来ハリウッドであろうと、カナダであろうと、イギリスであろうと、オーストラリアやニュージーランドであろうと、そして日本であろうと、ハリウッド映画のVFXを手がけたいなら、要求されることは同じではないだろうか?
チャンスが,巡ってきたときにそれを物に出来るかどうかは、このあたりに掛かっている。
そして、それは日本がそういったアウトソーシングの潮流からガラパゴス化しているのことを説明してくれる理由の一つかもしれない。


日本にいると、このあたりのリアリティーがわかなかった。
努力が必要で、それが効果をもたらすことはわかっていたが、その努力をどちらへ向けていけばよいのかわからなかった。
こちらで6年も仕事をしてきて、やっとわかってきた。
いやわかってはいたが、面と向かい合えるまで時間がかかったというべきかもしれない。

「でも坂口さんは人並み外れた努力をしたからできたんだ」とか、「かれは格別だから」、「かれはすごいから」という言い訳は可能だ。

でもあなたがそうなりたいのなら、それについての私の解答は明白だ。
事実は、目を背けても、逃げても、そこにある。

以前にも書いかもしれませんが、マトリックスのでVFXスーパーバイザーをつとめ、バレット・タイムで一大ブームを作った(とされる)ジョン・ゲイタは、マトリックス・リローデッドのメイキング公演会で、あるリスナーから「どうすればあなたのように優れた人(並外れた人)なれますか?」という質問をうけた。

それに対しての彼の答えは、
他の人がテレビゲームで楽しんでいる時間を自分は、勉強に費やしました。それだけです。

2 件のコメント:

  1. はじめて投稿させていただきます。
    今回の記事、大変勉強になりました。私はいま日本でCGを学んでいる学生ですが、目標の設定位置が低かったことに気づかされました。と、同時に、自分の努力次第で素晴らしいVFXアーティストになれるのだ、というモチベーションを得ることができました。
    ありがとうございます。気合を入れて頑張ります!

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  2. こんにちは、Yujiさん。
    このエントリは、もっともっと日本の方には頑張って欲しいという思いで書きました。
    なにか通じる物があったようでうれしいです。
    以前Yujiさんのブログも拝見したことがあったのですが、今日、初めて村本浩昭さんの公演メモを読みました。
    「日本のプロダクションへの提言」で彼の言っていることは、ほぼすべて自分も感じるところです。
    それが、日本でハリウッドVFXを制作してもいいんじゃないかという考えにつながりました。
     

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