とくに航空機マニアというわけではないが、同年代で小・中学生のプラモデル三昧ですごした人たちには近いほどの知識はもっている。
今回、写真ブログ「plog」の「On War: Korean War 60th Anniversary」をみていて、ふと65番の写真が目にとまった。
剣道の面を連想させる特異な形状のコクピット。
両脇に突き出た太いハネのような物。
荒れ地とミスマッチな、1950年代のSF的なデザインを思い起こさせるスタイリング
「一体このヘリコプターは何だ!」と、非常に気になり調べてみることにした。
特に、(後でコクピット後部のドアがあいているとわかったのだが)コクピットがまるでカプセルのように独立して見えたので、余計に気になった。
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探す
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今回、この機種を探していく過程を記録してみた。
実は以前に飛行機のモデリングをしたことがあるのだが、かなりマイナーな機種で機種の絞り込みに苦労したことがあった。
明確な資料がない場合は、できるだけたくさんのアングルとクローズアップの写真が必要となる。
そのためには、正確な機体の知識がないと、写真に撮られている細部が、自分がほしい機種のものか、それとも違う機種の物なのか?
近年追加されたものか?オリジナルの物かなどが判断できない。
さほど、正確性が必要ない場合はよいのだが、機種の確定は、できておいたほうが、後で資料を探すときに非常に楽になる。
まず、最初の手がかりは、この写真の説明文にある「3rd Air Rescu」(第三レスキュー飛行隊)というキーワード。
今でも、その活躍を伝えるホームページがあるが、そこにある写真には該当機をみつけることはできなかった。
次に見つけたのが「All the Worlds's Rotocraft」というサイト
歴代のヘリコプターならほとんどのものがここで写真付きで見ることができる便利なサイトだ。
ここで見つけることができた。
実はここでも最初、見つけることができずにTwitterでヘルプを求めた。
しかしながら、つぶやいた直後に見つけることができた。
(RTしていただいた方、解答してくださったかたありがとうございます。)
ヘリコプターで有名なシコルスキー社(アメリカ)のものとわかった。
(シコルスキー社がロシア名なのは、創設者がウクライナ生まれで、ロシア革命の時にアメリカへ亡命した人だから:Wikipedia)
機種名としては、Sikorsky S-51 / H-5 / HO3Sなど、いくつかある。
細かい違いはよくわからないが、XR-5という試作機に始まり、いくつかの派生型がある。
S-51 / H-5 / HO3S の3タイプは、民間向けか、軍隊向けかの違いはあるものの、基本的に同じ4座型の同じ機首を違う名前でよんでいるだけのようである。
写真にあった通り、朝鮮戦争では救難活動に大活躍し、それがもとで有名になったらししい。(Wikipedia)
前線を超えたところで撃墜された兵士の救出などにも利用されたということで、その姿からは想像がつかないほどの活躍ぶりである。
日本にも同型のS-51が輸入され、自衛隊や、東北電力などで活躍したらしい。
参照:サイト「ヒコーキ雲」
ページ:「東北電力のウエストランドシコルスキー S-51の変遷」
また、朝鮮戦争でのこのヘリコプターの活躍は「トコリの橋(1954)」という映画でも描かれていることがわかった。
この動画の3:30あたり
画質が悪いがどんな状況で使われていたかがわかる動画(同じ映画)
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機種の検証
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さて、この機体の正確なタイプは何だろうか?
Wikipediaによると、1946年に90機のHO3S-1がアメリカ海軍に配備されている。
1948年には救難任務に特化したのはH-5Gが39機、フロートを装備したH-5H水陸両用機が16機、追加生産されている。
両脇に飛び出たタンク状のものが最初フロートに見えたため、水陸両用機かと思い、H-5Hを調べてみたが、二つの写真がみつかった。
ひとつはSikorsky H-5 Dragonfly Helicopter w/ Floats
もうひとつは、H-5Hと表記されているが、機体に出っ張った部分があり、フロートがついてない機体。
どちらを信用すべきかはわからないが、このエントリ最初の写真の機体にあるでっぱった部分と比べて、フロートは、形状も位置も違う。
(ちなみに、WikipediaによるとH-5HはH-5Gのアップデート型であり、フロートが必ずついているとは書かれていない。)
そこで、考えつくのはこれはけが人などを運ぶタンカがわりのケースではないかということ。
当時としては、かなり未来的な感じがする形状ではあるが、1951年なので、ないとも言えない。
そして、それはその通りであることが、いとも簡単に証明された。
質の高い航空機写真、飛行機に関するたくさんの情報が掲載されているairliners.netからカナダ空軍の同機体写真を見つけることができた。
また以下のページによると
サイト:rotor&wing 「Like An Angel Came Down to Get Me 」
これはアルミニウム製のポッドとのことだ。(機体はH-5)
Wikipediaを見直すと、まさに「第三レスキュー飛行隊」で使われた機体写真があった。
ただし、この記述ではH-5としか書かれておらず、それ以上の詳細はわからない。
レスキュー専用機であるH-5Gの可能性もあるので、そのあたりを調べてみた。
H-5Gに関して明確な記述がある写真はAirliners.netにいくつか見つけることができる。
写真1、写真2、写真3、写真4
みればみるほど混乱してくるのだが、おそらく、機種の表記自体が曖昧な部分がある(撮影者/投稿者の思い込み)のかもしれない。
コクピットの足下の窓がふさがれているものが大半で、そこにはライトが埋め込まれているように見える。
下のプラモデルパッケージがわかりやすいが、もうひとつの特徴としてウインチがあげられる。
このパッケージイラストは下部の窓はオープンだが、ローターの付け根あたりにウインチがあるのがわかる。
救難目的ということからは理にかなっており、おそらくこれらのウインチがついた物や、ライトがついた物がH-5Gとよばれる救難に特化したものなのかもしれない。
もしかすると用途によって、いくつかのバージョンが存在するのかもしれないし、
ひょっとすると、ノーマルのHO3S-1に後からウインチをつけた物なども存在するかもしれない。
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しぼりこみ
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H-5というタイプ番号は、R-5, S-51, HO3S-1などと言い換えられており、意外と曖昧である。
元々、気になった写真をみると、コクピット下部のライトやウインチはない。
可能性はぬぐいされないが、H-5Gの可能性は低いとも言える。
またフロートや機体横の出っ張りもないことから、H-5Hではない可能性もある。
時期的にはHO3S-1が大量導入された後であり、Wikipediaの写真にも同時期、韓国に配置されたHO3S-1の写真が掲載されているので、HO3S-1かもしれないと思った。
しかし、Wikipediaに掲載されている第三レスキュー飛行隊の写真とその説明は、National Museum of the US Air Forceが出所であり、写真の出所からすると空軍である。
HO3S-1は海軍へ配備されているので、そうすると空軍所属のこの機体はHO3S-1ではない。
ということは11機が配備されたR-5Fである可能性が高くなる。
R-5Fは1946年当時の呼称であり、後にH-5Fと呼称変更されており、写真がとられたのが1951年であることと、写真説明の記述であるH-5とも一致する。
問題の、どのH-5であるかということだが、上記の写真から推測すると外観からみてH-5G、H-5Hである可能性は低い。
しかし、H-5Gは、H-5Fに救難装置をつけたものであることから、タンカ(アルミ・ポッド)が救難装置ということになればH-5Gとうことになる。
時代的にはH-5Hのフロート無しという可能性も捨てがたい。
結論としては
H-5F(一番可能性が高い)
H-5G(二番目に可能性が高い)
H-5H
のうちのどれか、という歯切れの悪い結末となった。
窓の形状や、細かな部品の有無などから推測していくこともできるが、そこまで調べる必要も中田ので今回は調べていない。
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ほかにもこの第三レスキュー飛行隊のH-5の写真があった。
(以下の写真は全て第三レスキュー飛行隊)
アルミ・ポッドが使われている写真もある。
これらの写真をみると(特に最後の物)、アルミ・ポッドは、片側につけられていたことが多いようだ。
最初の写真では、両側についており、けが人が多いことが予想されていた作戦だったのかもしれない。
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おまけ
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映画「ラドン(1956)」にもラドンの巣を見つけるために登場するらしいが、あいにくその映像を見つけることはできなかった。
下の動画は、アメリカ版ラドンの予告編。H-5は出てきませんがミニチュアワークがすごいので掲載しました。山の崩れる所など、今見てもすごいですね。
ちなみに日本版ラドンの予告編にはミニチュアワークが出てくる場面は少なくなっています。
この違いから、日本人は人の驚く様子や反応を見て、アメリカン人は、派手なディザスターが好きなのかなと勝手に想像しました。
プラモデル
参照:なまこ日記(仮))
もうひとつ全然関係ないけど、印象に残ったので。
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