日本でハリウッドVFXを制作できるようにするためには、政府だけでなくプロダクションや、個々のアーティストでさえ、多大な努力と費用が必要になると思われます。
そこで、ハリウッドのVFXを制作することで、実際どんなメリットがもたらされるのかが重要な焦点となります。
検討すべき一つのことは収入面がありますが、 もう一つはどんなノウハウが吸収できるかと言うことです。
制作を通して得られるノウハウが日本映画の制作やアニメーションの制作においていかすことができ、日本の映像産業を飛躍させることができるのであれば、そのメリットは大きいと言えます。
そのためには、現在のハリウッド映画の制作状況を知ったり、日本とハリウッドの制作におけるテクニックの比較や、何が導入できてなにが導入できないかなど、様々な角度からの検討が必要となってくるでしょう。
今回はアニメーション(非リアリスティック)作品とVFX作品の制作における共通点を調べてみました。
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ハリウッドでの大作劇場アニメーションでは、ほぼすべてCGが主体となっています。
アニメーションは、キーフレームを手作業で作っていく作業と、モーションキャプチャーで作っていく作業の二つあるのはご存知の通りと思います。
通常の非リアリスティック、もしくはカートゥーンと呼ばれる分野はもちろんのこと、実写のVFX映画においてもその二つがよくつかわれます。
これは「アニメーション=カートゥーン」ではなく、「アニメーション=動き」と理解すればわかりやすいと思います。
実写VFX映画では、エイリアンや恐竜、怪物、ロボットといった異質なキャラクタをCGで作成したり、通常では不可能な人間やカメラの動きを作るために俳優がCGで再構築されます。
これらの動きを作るのはすべて非リアリスティックなものとまったく同じです。
(当然ながら、非リアリスティックは動きを派手にするなどの、違いはあります。)
おもてにはでてこないところでは、変身につかわれます。
まずCGで、役者やキャラクタが作られ、撮影された役者や動物の動きにぴったり合わせてCGキャラクターのアニメーション(動き)を作成します。
その上でCG役者をいろいろな形に変形させたり、皮膚を鱗のように変えたり、簡単なところでは傷をつけたりという作業が行われ、実写と合成されます。
また光線や、炎、煙などを役者とからめたりするのにも使われます。
このようにキャラクターの動きを作成する部分には、VFXといえども、非リアリスティックな作品(アニメーション)と共通する部分が多いのがわかります。
煙、炎、光線など多種多様なエフェクトも、大作アニメでは、基本的な技術は通常のVFX映画と共通する部分が多数あります。
また、CGキャラクターの質感、たとえば皮膚、毛などといったものを作る技術も基本的には、共通していると言えます。
おおざっぱにいえば、大きな違いはレンダリングの違いだけともいえます。
(もちろん、厳密に言えば、それぞれに演出の違い、最終的イメージの違いがあるので、技術の用途も異なってきます。)
非リアリスティックな作品(アニメ)では、ピクサーや、ドリームワークスが有名です。
昨年末に公開された「ディズニーのクリスマスキャロル」は、それらとは異なる見た目をもったアニメです。
「クリスマスキャロル」は、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で有名なロバートゼメキス監督による作品ですが、従来の非リアリスティックとリアルなものとの中間的な質感をもったものです。
ロバートゼメキスはこのような質感をもったアニメーションに2004年の「ポーラ・エクスプレス」から取り組んでいますが、その柱となるテクニックがモーションキャプチャーです。
また、ご覧いただけたらわかると思いますが、皮膚の質感などのテクスチャーは、非常にリアルな物で、背景などの小物にしても、実写に近い質感を持っています。
http://www.trailerspy.com/trailer/5347/A-Christmas-Carol-Trailer-HD
http://www.apple.com/trailers/disney/achristmascarol/hd/
このように、最近では、非リアリスティック(アニメ)な作品も、質感においてはどんどんリアルになる傾向があります。
また実写VFXにおいても手作業のキーフレーム、モーションキャプチャー共に使われています。
最近ではフェイシャルキャプチャーの技術が発展し、昨年公開された「ベンジャミンバトン」もCGで作成された老人の顔の動きは役者であるブラッド・ピットからとっています。
参照:デジタルドメインVFXメイキングサイト
(ちなみにこのベンジャミンバトンでも日本人が多数活躍しています)
参照:鍋潤太朗★ハリウッド映像トピックス
そしてこの延長線上にあり、質感も実写とほぼ互角になったのが「アバター」です。
参照:公式「アバター」サイト
アバターは人間部分は実写ですが、衛生パンドラの環境や、原住民ナヴィや生物はすべてCGです。
監督のジェームスキャメロンはクローズアップにこだわったと言うだけ有り、顔の動きは自然なものに成っています。
アバターには革命的な技法がたくさんありますが、立体視の技法、バーチャルカメラ、フェイシャルキャプチャーの技術は飛躍的に向上しています。
「2012」の監督ローランドエメリッヒは、アバターの撮影現場を訪問したことがあり、「究極の映画制作方法だ」「大作映画はすべてCGで作るべきだ」と賞賛しています。
そして自身の作品に、その技法を取り入れ、すべてCGを使って作成したいと考えているようです。
参照:ファウンデーションシリーズをローランドエメリッヒが映画化しようとしている
上記にあげたようなモーションキャプチャーはシステム的に高精細であり「パフォーマンス・キャプチャー」と呼ばれます。
これが、「アバター」をきっかけにますますVFXを試用する映画の監督からも注目をあびつつあるのは事実なようで、これからのハリウッド映画制作の傾向の一つになる可能性はあると思われます。
ただ、これは大予算を前提としたハリウッド映画界での動きです。
日本においては、独自のアニメーション作品を作り出しており、そこへのこだわりもあります。
これが現在の日本映画やアニメに予算的に導入可能な物なのかどうかはわかりません、(おそらくアニメには予算的に無理でしょう)。
しかしながら、 「パフォーマンス・キャプチャー」が注目を浴びているとはいえ、通常のモーションキャプチャーは、ハリウッドVFXでもまだまだ使われています。
そして日本でもゲーム界などではよく使われており、確立されたテクニックではないかと思います。
「アバター」を作成したのはWETAデジタルが主体と成っています。
「日本でハリウッドVFXを作成する」という視点からこの制作パイプラインをみると、WETAデジタルではアバターのパフォーマンス・キャプチャーは行っていません。
すべてハリウッドで、とられたモーキャプデータがWETAデジタルへ送られてWETAではそれを利用しただけです。
これは俳優や監督がわざわざニュージーランドへ出向かなくても基本的な撮影ができるのでそうされたのも一つの理由でしょう。
このように、予算的に無理なものを導入せずとも、そのVFX作業を行うことは可能です。
そして、そのVFXの制作過程において、パフォーマンス・キャプチャー・データの使い方、生かし方、修正方法のノウハウは蓄積できます。
それは、基本的には現在のモーキャプの延長にあり、将来的には、パフォーマンスキャプチャーの導入への準備を整えることになると思います。
この「アバター」を制作したのは、過去には「ロード・オブ・ザリング」シリーズ、「キングコング」などを作成、数々のアカデミー賞を受賞したニュージーランドのプロダクション「WETAデジタル」です。
WETAデジタルでは、現在スティーブンスピルバーグ監督とピータージャクソン監督(ロードオブザリング)の共同作品「タンタンの冒険旅行」(三部作)の作成が2011年公開をめざして進行しています。
参照:Wikipedia
「タンタンの冒険旅行」は、ゼメキス監督のアニメ作品のようにパフォーマンス・キャプチャーを用いたフルデジタル3Dアニメーションと伝えられています。
これがその通りだとすれば、VFXで有名だった大手プロダクションがアニメーション界へも進出することになります。
このことは、CGを使うのであれば、アニメーションでもVFXでも、基本的な技術に共通点が多いことを裏付ける物だと思います。
またフルCGであるアニメ作品はもとより、アバターのようにVFXのショットをフルCGで作れば、実写合成よりも立体映画の作成が簡単になります。
日本でのアニメーション作品の制作において、これからどのようなものが必要になってくるのかは、まだまだはっきりしていない部分があります。
どちらかというと昔ながらの2Dアニメーションがまだまだ主流で、3DCGソフトを使ったCGアニメーションに関しては、模索している状態ではないかと思います。
以上は私個人の見解なので、十分でない箇所や間違い、また異なる見解もあると思います。
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