CGアニメーター/ディレクターであり、ブログZENTOYを書かれているyuさんが当ブログのエントリ「日本でハリウッドVFXを製作: プランについて」のコメント欄に、すばらしいアイデアを書いて下さいましたのでご紹介します。
-----------yuさんからのコメント-----------------------------
中央行政だけじゃなくて、地方行政も攻めるという手もあると思います。
たとえば、映画の町として、構造改革特区認定をうけるとか。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A7%8B%E9%80%A0%E6%94%B9%E9%9D%A9%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%8C%BA%E5%9F%9F
http://www.wagamachigenki.jp/saisei/01_04.htm
メニュー例による「地域再生に資する民間プロジェクトに対する課税の特例」
なんか、まさにそうじゃないでしょうか。
映画は、砂漠のスタジオから発展したハリウッドなど、町単位で発展してきた歴史もあります。
そこで、課税特例だけじゃなく、火薬もばんばんもやせて素材も撮れる。街角の撮影も許可が簡単。
学生だって撮影し放題。学校では宮崎はやおや北野武が教鞭をとっている。
みたいな町をつくれば、海外資本や留学生も入ってきやすいんじゃないでしょうか。
そんな構造特区にするなら、どんな町がいいですかねー。
------------コメント終わり----------------------------
さっそく、教えていただいた構造改革特別区域(Wikipedia)を読んでみました。
「財政支援がない一方、計画に具体性があり法令に適合し、特区の内容が目的のために必要な物ならば認定される。」
とありますね。
また、いろいろと読んでみて、税優遇は投資に関してという制限もあるようです。
しかしあんがら、「規制の特例措置」に、ひょっとしたらかなり良い条件もあるかもしれません。
また以下のように書かれています。
「地方公共団体が当該地域の活性化を図るために自発的に設定する区域。
当該地域の特性に応じた特定事業を実施し、またはその実施を促進する物をいう。」
Wikipediaにある「分類」をみてみるとVFXに関係がありそうなのは、
●国際交流関連
●産学連携関連
の二つでしょうか。これにどうねじ込んでいくかを考える必要がありますね。
わが町元気、特区・地域再生「どうすれば自分のアイデアを実現できるの?」をみるとアイデアを受けつけたあと、内閣官房が関係各省との調整を行うなど実現にむけて行動をとってくれるようです。
かなり耳を傾けてくれそうです!!
計画をこちらでたてて、興味ある地方公共団体を探して、提出すれば、直接中央政府に、はたらきかけるより実現の可能性が高い気がします。
経産省のアニメーションサポートの動きにもだぶる部分がありますが、逆に経産省の意向にそっているので、その中央政府の政策の見落としをおぎない、助長するものであることを説明できれば地方公共団体も、説得しやすいかもしれません。
教えていただいた税制優遇措置の部分を抜粋します。
http://www.wagamachigenki.jp/saisei/01_04.htm
「地域再生に資する民間プロジェクトに対する課税の特例 【内閣府】
地域再生に役立つ事業を行う会社への個人の出資に対して、投資額控除などの税制上の優遇措置を適用し、民間資金を誘導。」
先ほどもふれましたが、個人の出資に対して投資額控除ということなので、あくまで会社への投資に関しては、優遇するということと解釈しました。
すなわち、収益に関する税制に関しては対象ではなさそうです。
これは別途、特別な優遇として認めさせることができるのでしょうか。
ハリウッドとのパイプラインを築くことがアニメーション産業の市場拡大にもつながり、アニメーション制作においても国際的な作品をつくるハリウッドのノウハウを手に入れることができる可能性を示唆すれば、例外的な税優遇措置を主張できるかもしれません。
ハリウッドから仕事をとってくるには、アメリカのVFXプロダクションよりも安い金額を提示できることが不可欠です。
どのような形であれ、通常運営において、結果的に安くなればよいとは思いますが、それを人件費で削るべきではないと思います。
現状ハリウッドが税優遇措置に興味を示しているのはわかっていますが、ハリウッドがアメリカ国内で、どのような税金によって損をしているのか、そして海外へどのような税金の優遇措置を求めているのか、そのあたりを明確にする必要がありますね。
同じページにある「日本政策投資銀行の低利融資等」なども魅力ですね。
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実際に提案するとして、VFX産業だけだと弱いので、その産業に必要な人材をそだているという意味で、大学を巻き込んだり、アニメーション産業を巻き込む必要があるかもしれません。
そういったことに取り組んでいる地域であることが、この特別区の指定を受けるために必要なのは書かれているとおりです。
最近はCGに力を入れている学校も多いので、候補を探すのはさほど難しくないかもしれません。
自分的に気にかかるのは、「神戸」です。
東京だとたしかに関連企業も多く、すぐれた人材も多いと思いますが、反面、長年この業界にたずさわっているため、業界関係者の圧力や一緒に始めても後で反発/裏切りということが起きる可能性が高いのではないかと疑っています。(まったくの勝手な想像ですが)
その点、神戸は東京から離れている分、業界関係者の利害を圧迫しない、現在は下記のようにアニメーション重視なので、現地の利害関係も圧迫しないように思います。
それに大震災からの復興を得て、地域を盛り上げる気力が強く、活気があるように思います。
神戸芸術工科大などは、講師陣もすばらしい人がおり、教育に止まらず、「アニタス神戸」という制作会社を市や会社(Wish)と連携して今年3月に設立する。
これはアニメーションの分野である。
神戸には神戸デジタルコンテンツ振興会議が毎年「アニメーション神戸」なるイベントを主催し、すでに14回を数えている。
神戸芸術工科大学は、映像表現学科で映画、アニメ、CGなどのコースが選べるようになっており、決してアニメだけに特化したものではないので個々を通せば興味を示してくれるかもしれない。
ハリウッドの技術を取り入れることで、日本の伝統とハリウッドのノウハウをとりいれたコンテンツも作りやすくなるのではないかと思う。
今回のアイデアでは、初期にハリウッドに支部を作る必要がある。
そこのところの理解がえらえるかどうかというのも鍵になりそうです。
(ハリウッドに支部を作るので、地域産業に直接影響しないとみられれば、否定される可能性がある)
特区とすることで、海外のプロデューサーを集める仕組みを作ることもできますね。
海外の無名のプロデューサーや監督に、日本のコンテンツを紹介するツアーを作ったり、アニメ+VFX産業の拠点を見せることで、共同制作の話をもちかけたり、積極的に働きかけるしくみをつくることができれば、より地域を発展させていくだけでなく、ハリウッドの制作サイドの人達との積極的な交流により、日本発のハリウッド映画制作というのも、普通に行われるようになるかもしれません。
海外の投資家(シンガポールなど)から、投資してもらうことで高額な制作費をもった映画も作りやすくなるでしょう。
ハリウッドの映画制作のパイプラインに日本が入り込めれば、映画全体の企画を、日本のプロダクションですすめ、海外の投資、海外の監督、脚本、プロデューサーを使い、ポスプロを日本の会社が行うなどといういいとこどりも出来るような気がします。
反面、日本映画独自の味が失われる可能性もあるので、それが良いとも悪いとも言えないですが。
参照:日本を拠点とするハリウッド出身監督が見た邦画の強さと弱点
参照:ハリウッドの大物プロデューサーがアジアの人気俳優を使うわけ
特別区って英語で言うと「District」ですね。
ワシントンDCみたいにVFX DC(District of Chiba)とか、「District9」みたいにDistrict VFXとか(これだと差別されているみたいですがw)になるんでしょうか。
余談ですが「ハリウッド゙監督学入門」という映画があるんですね。
是非、見てみたい。
こっちのは大体想像がつくのですが、それを日本側がどう感じているのかは見てみたいですね。
実際にプロダクションをおこすプランを立てるなら、こういったことを十分に考慮しておかなくてはいけないでしょうからね。
「【超映画批評】 ハリウッド゙監督学入門」(YouTube)」
引き続き「日本でハリウッドVFXを制作」についてのコメントを受け付けています。
どしどしお寄せ下さい。
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とりあげてくださってありがとうございます。
返信削除メールもさせていただきましたが、僕がいいなあと思っているのが横浜と沖縄です。
横浜は映像文化都市としてさまざまな取り組みがされていて、(税優遇などはないですが)バックアップが期待しやすいということ、また東京藝術大学の大学院の誘致もされていて産学協同体制が整っていること。
(北野武監督や、山村浩二さん、伊藤有壱さんが教鞭をとられています)
http://www.city.yokohama.jp/me/keiei/kaikou/souzou/project/cultural/
沖縄はすでに経済特区で税制優遇されているので、それに映画関係を足してもらう運動をすればいいかなと。
神戸といい、海沿いの町は絵にもなるし、町としても港町だけで発展した昔と違い、次のポジションを狙っているので、取り組みもさかんでいいですよね!
Yuさんコメントありがとう。
返信削除横浜がそこまでいろいろとやっているとは知りませんでした、なかなか興味深いですね。
もうすこし自分でも調べてみます。
沖縄の税制優遇は投資に関する物だけのようなので、ハリウッド側が支払う制作費に対しての税制優遇も行ってもらえるような策が必要となりますね。
投資に関する優遇もありますが、
返信削除沖縄は特別に法人の所得税も優遇みたいです。http://www.pref.okinawa.jp/tokku/how/area01/index.html
うーん、でも、カナダなどの制作費に対する税制優遇と比べてどっちが特かは各企業会計の内訳がわからないので、わかりませんね。
また若年者雇用促進制度などもあります。
http://www.pref.okinawa.jp/tokku/how/support/01.html
ただ、沖縄県自体のCGに関する人材の総数が少ないですからね・・・これだけ、優遇政策があっても現に沖縄にどれだけ会社が移転しているかっていったらそんなに数多いとは思えないですしね。