日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2010年2月18日木曜日

まえがき「日本でハリウッド映画のVFXを受注、製作する」

<日本でハリウッド映画のVFXを受注、製作する>
----ダイジェスト----

現在、映画にはCGによるビジュアル・エフェクツ(VFX)は不可欠な作業です。


VFXはポストプロダクションともよばれ、映画撮影後にCGの技術を使って映像に様々な加工をほどしたり、撮影時に存在しないものを追加したりします。
近年のVFX対策と呼ばれる映画では、宇宙船、恐竜、エイリアン、ロボット、超人、惑星、爆発、等さまざまなものがCGにより製作され実写と合成されます。
最近はSF映画が全盛であり、映画作成自体がVFX作成といっても過言ではないほど、その比率は年々大きくなり「アバター」に至っては、背景やメインの人物、ジャングルの動物まですべてがCGで作られており、そのCGを担当したニュージーランドのWETAでは、最大900人の人員を動員していたことは有名です。



CG/VFXというとアバターのようなSF大作などを想像しがちですが、通常のドラマでも背景を置き換えてロケ地をごまかしたり、小物を追加したり、窓ガラスに反射を加えたりというふうに気がつかないところにも使われています。


そのVFX作業は一社でつくられるのは希なことで、通常は、制作元である大手スタジオからハリウッドの大小、様々なVFXプロダクションへ発注し、処理されるのが通常の流れだと思います。
そして監督のイメージするとおりの映像をつくるというこの作業は増加の一途をたどり、VFXに割かれる経費も増加しました。

そのためハリウッドの映画製作会社は、このVFXの経費削減のためにより安い経費で仕上げられるところを探し求め、ハリウッドのVFXプロダクションもそのその受注額を安くせざるを得ない状況がありました。
しかしながら、ハリウッドのVFXプロダクションでは安くするにも限界があり、製作会社は海外にその活路を見いだしました。

それは人件費が格段に安い中国。
IT産業で今や世界を席巻し、英語も堪能なインド。
そして税金の優遇措置や映画撮影に関する政府支援が得られ、なおかつ技術的にも高度な物をもっている国、カナダ、ロンドン、ニュージーランド。
それらの国のプロダクションへ仕事をアウトソーシングするようになり、映画だけでなくTVでさえ(ゲーム業界もそうかもしれません)そうなっています。
ネットワークの発達により、ビデオ会議、データの転送などが世界中どこの国にいても、アメリカ国内と同じようにできるので、もはや海外と国内の違いは時差以外には、ほとんどありません。

映画やTVのプロデューサー間では、みなが口を合わせたように「カリフォルニア意外ならどこでもいいよ」といっているという話もあります。(カリフォルニアはご存知の通りハリウッドのある場所です)

ここハリウッドの大小とりまぜたVFXプロダクションも活路を見いだすために、それぞれにメリットのある国を選び、カナダ、インド、シンガポールなどへどんどん支部をつくり、いままでカリフォルニアの本社で行っていた仕事の多くをそちらへ送るようになりました。
そのため、現在ハリウッドではVFXの仕事が大幅に減少し、おおくのアーティストが将来の不安を抱いているほどです。


またハリウッド映画のノウハウを持っていなかった中国やインドも早くからこの業界の仕事を受注しており、ロトスコープなどの基本的な作業からはじめ、現在では一部の会社は高度なVFXやCGアニメーションを手がけるようになってきました。
シンガポールも政府が率先してアニメーション業界を活性化しており、大手ルーカス・アニメ-ションをはじめVFXプロダクションでさえ、シンガポール支部を持つに至る状況です。

最近のVFX映画の半数以上に、ロンドンのプロダクションが関係しています。
ロンドン、カナダ、ニュージーランドは映画製作が古くから行われており、ハリウッドとの共同作業にも歴史があります。俳優の人種的にもロケ地についても、共通する部分があり、撮影も行いやすいという面もあるかもしれません。
しかしロンドンは東京と比較されるほどの物価高の国でした。
調べてないのでわかりませんが、平均給料も決して東京と大きな差はないかもしれません。
それでも、予算に厳しくなったハリウッド映画を受注できるのは、その映画製作の歴史だけでは無理です。
そこで功を奏したのが税優遇措置です。
税優遇措置は、以前からアメリカの様々な州でロケの誘致などにつかわれていますが、おそらくそれよりも魅力的な条件だったのでしょう。
しかもVFXに関して言えば、アメリカのほとんどのプロダクションがカリフォルニアにあります。


アバターに至ってはほとんどがニュージーランドで作成されましたが、プロデューサーがニュージーランドを選んだ理由は税優遇措置でした。
そして、このアウトソーシングの流れはその他のアジア諸国をとりいれつつありますます広がる様相をみせています。


今やハリウッド映画は、世界各国で作られているのです。
正確にいうと
ハリウッド映画の製作作業世界の様々な国でおこなわれています。

ハリウッドが映画製作の指揮をとっているのは今もかわりません。
映画スタジオと呼ばれる会社が企画し、プロデュース、広報、配給を行います。
古くから、ハリウッド以外の国で撮影やSFXが行われていますが、近年コンピュータをつかったCG/VFXの製作作業は、いままでになく爆発的に世界各地へ広がっています。



「アバター」で、より高度なレベルに至ったモーションキャプチャー、バーチャルカメラ、CGの技術は、映画製作を変える物とも言われ、ハリウッドの大物監督ローランド・エメリッヒも注目しています。
このような映画が増えれば、VFXの作業は飛躍的に増加するかもしれません。
そのときには、すでにこの流れに乗っている国は、大きく成長しより多くの関連産業がうまれるかもしれません。


一方、日本のVFX、CG業界は、一般的には貧弱であり、競争力がないと思われています。
このひとつの要因は低予算にあると言われています。
また、技術力がないからだとも言われます。

これは本当でしょうか?
これまでのハリウッドVFX業界をみてみますと、多くの日本人が関係しています。
それらの人は、ただ業界に関わるだけでなく、第一線でリーダーとしてチームを率いているような重要なポジションについているひとも沢山います。
そして、それらの人がそろって口にするのは「日本人は決して技術で大きく劣っているわけではない」ということです。
ハリウッドで働いている日本人には、日本で勉強したり、日本でCGの仕事をしていた人も多数含まれます。
それがそのことを証明しているともいえます。

日本のCG業界で長年の経験を積んだ人は、次のステップとしてハリウッドを目指す人が多いのも事実です。学生に至っては、最初からハリウッドを目指したいと思っている人も沢山います。

多くの人がハリウッド映画にあこがれ、夢をそこに求めています。
しかしながら日本ではそれは達成できない夢であり、日本の貴重な人材が流出していくのを指をくわえて眺めているしかないのが実情でしょう。


それにしても、なぜ中国よりも技術力を持ち、インドよりはるかに早く発達したIT産業国である日本が、この流れからはずれているのでしょうか?



映画制作に関するものは、CG/VFXだけではありません、実際のロケ、セットの作成、機材などさまざまなものに予算がわりあてられます。
したがって総制作費が2億ドルとしてもVFXにさかれる費用はその一部となります。
しかしながら一部と言っても、ハリウッドの大作映画になると、数千万ドルを超すこともあるでしょう。
VFXという一分野であっても決して無視出来る金額ではないように思います。

アバターでは、VFX(CG)に使われた金額は桁違いだったと思われます。
そしてVFXの作業でも、それらを様々な業者やプロダクションで細分するわけですが、日本映画のVFX制作費とくらべて十分な収入が見込めるなら、日本でハリウッドVFXを制作することは不可能でないと思います。


カナダやイギリスといった映画産業全体をフォローする体制があり、その歴史もある国にはまともには太刀打ちできませんが、CG(VFXとアニメーション)分野に的を絞り、日本人のもつすぐれた技術力を生かせば、安い人件費で勝負している中国やインドを出し抜くことはできるかもしれません。
たとえ、後発であっても、日本人の仕事の効率化や改善は他国の追随をゆるさないものあります。
こういった得意の能力を生かして、CG業界で勝負することは出来るように思います。

そして、これによりハリウッドの信頼を勝ち得れば、より大きな仕事を得て、それらの作業を通し、独自のノウハウを構築することができます。
これは日本の重要な財産であるコンテンツを生かすことにつながってくるでしょう。
逆にこの分野で出遅れれば、すでに信頼を得つつあるインドや中国が、そのシェアを伸ばし日本の入り込む余地はなくなるかもしれません。

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