先日手に入った、「District9」のDVDをみた。
実は、さほど期待していなかったので、予想外によかった。
多分、高校生のころにみたら、かなりヒットだったかも。
期待していなかった理由は公開前にバンクーバーフィルムスクールがDistrict9に関係している人を紹介したビデオを流していたのだが、そのときにその学校の学生がVFXに関係していると勘違いして(実際は学生ではなくて卒業生が関係している)学生が協力しているならたいしたVFXではないだろうと思っていた。
それから短編のオリジナルをみて、ストーリーのポイントが今ひとつわからず、どちらかというとグロテスクな見た目と奇抜なショットが売りの映画だろうと思っていたのもある。
実際グロテスクな表現は多少スプラッタ映画を思わせるほどで、ここまで必要だったのかと疑問にも思うがエイリアンの武器の強力さを印象づけるには一躍買っている。
映画のレートは「R指定。(17歳以下は保護者の同伴が必要)」。
グロテスクな表現がネックとなって、子供が大きくなっても見せたいとは思いませんが、主人公とエイリアンとの関係の描き方は、よくできている。
「感染」でなんでああなるの?という少々幼稚な突飛さはあったが、ストーリー展開はおもしろく、脚本がとてもいい。
VFXは(学生が制作していたわけではないので)当然ながら良くできている。
ときどき、実写とのからみが甘くCGっぽさを感じる事もあったが、エイリアンのリアルさはもしかしてパペットを作ったのか?と思った。(実際作ってたのかな???)
5~6年前は、DVDでみるとCGの部分は比較的見抜きやすかった。
色が十分にマッチしていないせいか、映画館でみるとさほど気にならなかった部分が、DVDで家庭用モニターを通してみるとCGの部分が浮いて見えた。
しかしながらこの映画のエイリアンは、ノートPCの画面でみても、色つやに、おいてはほぼ完全になじんでいた。
他に気づいたこととして、「人って感情移入してくるとそこにある人の表情を注意深く追うようになるんだな」とおもった。
最初は、よくできたエイリアンだなとぐらいしか思っていなかったが、後半、主人公とエイリアンの関係をみるときに、エイリアンの細かい顔の動きを追っている自分に気がついた。
「映画制作」を勉強したことはないのでそういった観客の心理は知らないが、きっとそうなのだと思う。
将来VFXスーパーバイザーや自分のオリジナル作品を作りたいならそういった映画制作にまつわる知識も勉強しないと行けないなと思った。
みる前には予想が付かなかったし、見ている途中はそんな気分にさせられるとは思わなかったが、友情について考えさせられた。
さて、Wikipediaで「District9」を見ると、VFXの所に以下のような記述があった。
District9のエイリアンはWetaがデザイン、実際の制作やエフェクトに関してはWetaはAvatarで忙しかったため、代りのプロダクションを探す必要があった。
監督は、Tax控除で有利なバンクーバーを基盤とした会社を選択。
カナダのImageEngineが実際の制作作業を行った。
この会社は、それまで劇場映画を手がけたことが無かったので、この決定は「少し賭けでもあった」と監督は述べている。
Wetaは、マザーシップと脱出船のデザインをし、外骨格スーツのデザインはThe Embassy Visual Effectsが行った。
Zoic Studioが2Dワークを行い。
オンセットのライブSFXはMXFXが行った。
「MXFX」は聞き慣れない会社だが、調べてみると南アフリカのSFX&レンタル会社。
Webサイトの「Features」に「District9」でやった仕事が紹介されている。
監督のNeill BlomkampについてもWikipediaで調べてみた。
1979年、南アフリカのヨハネスブルグで生まれ、16歳でアニメーションの仕事に参加し、18歳で家族とともにバンクーバーへ移住。2003年(24歳)にバンクーバーフィルムスクールへ入学。
2004年にポピュラーサイエンスの"Next century in Aviation"と"The Future of the Automobile"へイラストレータとして参加。
ビジュアルエフェクトアーティストとして、「The Embassy Visual Effects」や「Rainmaker Digital Effects」で働いた。
とあるのでカナダのVFX業界のことはかなり精通していたと思われる。
Wikiでの説明では「District9」のエフェクトを任せたことを「少し賭け」と書いていたが、クオリティーには難ある物の、多少押せばなんとかなるだろうという予測はあったのだろう。
話がそれるが、おもしろい裏話がある。
原作となったショートフィルム「Alive in Joburg」でも、Neill Blomkampが監督をしているが、それをプロデュースしたのは「District9」で主役を務めるSharlto Copley。
二人とも同じ高校を卒業しており、
監督が16歳のときにアニメーションをしたのはこのNeill BlomkampがTVプロデューサを務める番組。
それ以来、家族の延長のような親しい仲にある。
「Alive in Joburg」のなかでちょい役で出演したところ、その演技がピータージャクソンの目にとまり、「District9」で全編、通して主役を演じることになったらしい。
(元情報1:Wikipedia Alive in Joburg)
(元情報2:Wikipedia Sharlto Copley)
(元情報3:ブログThe Fantasium Journalより、0815 この夏の最高傑作「District 9」)
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さて、カナダのバンクーバーにある会社がVFXに選ばれたと言うだけ有り、現地の学校「バンクーバーフィルムスクール(VFS)」の卒業生が40人以上、関係しているそうだ。
この学校のYoutubeのチャンネルには、関係者に的をしぼったインタビュー映像がアップされており、テクスチャー画像や、実際にCGソフトでの作業などもちらちらみることができる。
District 9 Interview (District9 インタビュー)
#1: VFX Executive Producer (VFX エグゼクティブ・プロデューサー)
#2: VFX Data Coordinator(VFX データ・コーディネーター)
#3: Creature Supervisor (クリーチャー・スーパーバイザー)
#4: Creature Texture Painter (クリーチャー・テクスチャー・ペインター)
#5: Lighting Lead (ライティング・リード)
#6: Effects Technical Director (エフェクト・テクニカル・ディレクター)
Director Neill Blomkamp (ディレクター)
Behind the Visual Effects (ビジュアルエフェクトの裏)
それにしてもカナダ政府の取っているTax控除優遇措置は、かなり功を奏しているようで、プロジェクトを国内に引き込み、プロダクションが成長するチャンスさえ手に入れている。
アメリカ国外の会社でも、すぐれたVFXを手がけることが普通になってきたが、もともとは、デジタルによる市場の拡大で、LAのプロダクションだけでは処理しきれないほどの仕事量が出てきたのが始まりだったのではないかと思う。
しかし、今はアメリカ国内でなくても十分な質が確保できるようになり、費用削減のために海外へ発注することが増えていったように思える。
昔、「自動車」を舞台としてアメリカと日本で起こったことが、VFXでも起ころうとしているのかもしれない。
「自動車」と違い、基盤となる配給会社はまだアメリカがメインだし、ブレインとなるディレクターやプロデューサーもまだまだLAに多いのでまったく同じにはならないだろう。
ただ、このようなことが増えれば、ますますLAの中小VFXプロダクションは自社を成長させるチャンスである低予算なプロジェクトを逃すことになってしまうのではないか? と思う。
また、
アメリカ国内のVFX産業はブレイン的な作業がメインとなり、下端の仕事は海外へ発注されることが増えるのではないか?
とも思うし、
海外で少なめの予算で同等のクオリティーが保てるとあれば、海外への流出をさけるために国内のプロダクションは受注の見積もりを下げざるを得ないだろう。
fx podcast tvの#071にてdistric9のImage Engine compositのmakingが見れます。
返信削除http://www.fxguide.com/fxguidetv.html
NUKEにてposition passを使ってpoint crowdの位置を決めてそこにcamera mapをしてNUKE内でRelightingを可能にして今まで以上にcomp時に実写との絵のマッチングを可能にしているんだと思います。
確かにDVDで見ると劇場で見た時よりCG部分が浮いて見えるのはいつも思ってましたww
なんでなんでしょうね?勝手にDVDとかTVとか色の深度が浅くなる事によって細かいコントラストに圧縮がかかりfilmで見るより合成した部分との差が助長に出てくるのかな?と思ってますが、、。本当の所よく分からないですw
なので、DVDでしか見てない人がCG浮いてたねー!とか言われると劇場で見てからにして欲しいなと思う今日この頃です、、。
長文すいません。また楽しみな記事まってます~。
これはすごい!!!!!!
返信削除将来3Dの仕事はモデラーとアニメーター以外、職がなくなりそうw
スペキュラ・パスを2D内で作ったりマスク作業を簡易化したり、これはかなり時間を削減してくれますね。
しかも、作業可能な(もちろんハイスペックのマシンを使っているでしょうね)速度を保っている。
やはり色分布や深度の違いでしょうか?
以前DDの松原さんから映画とTVでは色の合わせ方自体が異なると聞いて納得してたんですが、もう少し詳しく聞いておくべきでした。
うちでやってる仕事はTVがメインですが、色あわせは個々のコンプのモニターに頼っているので、よくCGが浮いてみえます。
有益な情報ありがとうございます。
やっぱり内容が印象的でしたので別スレッドでまとめさせてもらいました。
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