日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2009年12月9日水曜日

MPCの自社ツール

少し前からホッキョク熊が空から降ってくるCM動画が、いろいろなところで見かけるようになったが、このメイキングが公開されているとの情報を、「スギログ」さんとこで発見。早速見た。
Plane Stupid: VFX Technical Breakdown

MPC(The Moving Picture Company)が作ったということで、さすがにしっかりしている。

見ている内に気になってきたのが、01:06あたりから説明されている "MPC's PAPI Ragdoll simulation"

Ragdoll simulation はエンドルフィンに見られるように人間などの体がぶつかった時の物理的な動きをシミュレートするシステムであることはわかる。
MPCは会社の名前なのだが「PAPI」というのが今ひとつわからない。
パピー=子犬=四足動物 という単純発想で考えてみたが納得はできない。
人間の形状とは違うので、エンドルフィンを使っているわけではないだろうから、独自のラグドールのシステムのことなのだろうかと思い調べてみることにした。


検索してみると映画「ポセイドン」の記事が見つかった。
(Poseidon’s Wet VFX Work : studio daily)
The chaos was created and managed by MPC’s proprietary dynamics system, PAPI, a physics API that handles large-scale rigid-body simulations.
訳: この混沌はMPCの所有しているダイナミック・システムPAPIにより作成され管理された。
これは、大規模なリジッド・ボディー・シミュレーションを処理する物理学(フィジックス)APIです。
(訳注:この少し前に、船が横転するときの室内の小物のシミュレーションについてのべている。混沌とはその室内に物が散乱する様子のことをさしている)

もうひとつの記事
Poseidon: Making a Big CG Splash :AWN)
For the later shots of the grand staircase collapsing, MPC wrote a shattering algorithm to pre-break the mesh. Then, proprietary rigid body dynamics engine PAPI was used to constrain everything back together for the simulation.
訳: 終わり頃のショットで、大階段が崩れ落ちるシーンのために、MPCはメッシュをあらかじめ破片に分けておくための、のアルゴリズムを作成した。
そして自社のリジッド・ボディー・ダイナミック・エンジンPAPIで、シミュレーションの前段階として、すべてをコンストレインしてつなぎとめ元に戻しておくために使われた。


Whenever the characters had to take a hard fall, on a chair for instance, or to roll around with other people, we used PAPI to create the dynamics of the animation. It was then blended with the motion captured motions.”
訳: しかしながら、落下するキャラクター、例えば椅子の上に落ちるとか、他の人とぶつかって回転したりといったものには、アニメーションのためにPAPIのダイナミックスを使いました。
そしてそれはモーション・キャプチャーの動きとブレンドされました。


The simulations ran in ALICE, with PAPI creating the rigid body dynamics animations, all within Maya.
訳: PAPIがリジッドボディー・アニメーションを作ると共に、シミュレーションがALICEの中で実行され、すべてはMayaの中で作業しました。


どうやら、PAPIはリジッドボディーのシムレーションを行う自社開発のシステムらしい。
「ALICE」という新しい疑問もでてきたが、これもそのうち調べようと思いつつ、もう少しPAPIについて調べてみた。

Harry Potter: The Magic of Double Negative :xguide)
訳注:このページの下の方にMPCについて書いたところがある。
(文字化け部分もそのままコピペしてます)
Bespoke particle systems were exploited for the ‘shockwave’ and ‘sand tornado’ sequences with the PAPI rigid body dynamics system allowing fast and accurate simulations of shattering glass seen in the explosion shots.
訳: 爆発ショットの中にみえる砕け散るガラスのすばやく正確なシミュレーションを可能にしたPAPIリジッドボディ-・ダイナミック・システムを使うように、カスタマイズされたパーティクルシステムが「ショックウェーブ」と「砂竜巻」シークエンスのために開発された。


なんとなく見えてきたのがダイナミックスのシステムであるということで、プロジェクト毎にパーティクルやリジッドボディーなどと関連づけて使われているようだ。
今回のシロクマのケースでは、リジッドボディーのシステムを使い熊のラグドールを作ったと言うことだろう。


そしてさらに調べたところ、MPCのサイトの「About R&D」にちゃんと説明が書かれていた。

<< PAPI >>
訳: PAPIとは「Havokをベースにしたフィジックス(物理演算)API」です。
落下や衝突、コンストレインされたリジッド・ボディーを伴うシーンの作成を容易にしてくれます。
基本的には簡単なスクリプティング・ツールで、「トロイ(2004年)」や「キングダム・オブ・ヘブン(2005年)」の作業のために開発されました。
ユーザーインターフェイスを追加して強化されました。すなわち、より複雑なシナリオでも数回ボタンをクリックするだけでシミュレーションが設定ができ、オブジェクトの破壊(ブレイク)と粉砕(シャッター)も、インターフェイスを通して、イベントを設定することによりコントロールすることもできるよう、簡単になりました。
PAPIはALICEにも統合され、クラウドと物理的な要素を相互作用させることができます。

Havokってたしかゲーム用の物理エンジンですね。
たしかにラグドールには向いているでしょうね。

wikiによると、採用されているのは、
Xbox、Xbox360、ニンテンドーゲームキューブおよびWii、ソニーのプレイステーション2、プレイステーション3およびプレイステーションポータブル
と幅広いです。

しかし、ゲーム用というとおおざっぱなイメージがあるので、そのへんはどうなんでしょう?
エンジン部分におけるコリジョン判定などはもしかすると調整次第ではかなり精密に出来るのか、それともそのあたりは自社の改良で精密にしているのか?

どちらにしても、軽そうなので大量の破壊物には向いてそう。
これをつかってシロクマのラグドールをシミュレートしているということですね。
シャッターなどの破片の生成はこれもHavokの機能なのか、それとも独自の物なのか気になります。


<< ALICE >>
MPCのインハウス・クラウド・システム。
キャラクタの小さなグループから独立したエージェントからなる大群まで、位置決めや演出をするよう設計された広範囲にわたる専用ツール・セットです。
元々は「トロイ」に必要な群衆という要求に応えるために作られましたが、連続的なプロダクションの異なるニーズに合わせられるよう、その能力を拡張するために今なお、開発を継続しています。

指揮され、統率された兵隊であろうと、大きな音を立てて群れるエイリアンであろうと、群れてどしんどしんあるくマンモスであろうと、はしゃぎすぎのサンタの仕事場であろうと、ALICEはきちんと働きます。
そして、ALICEは恥ずかしくてスポットライトから逃げるようなことはありません。

ナルニア国物語 第2章:カスピアン王子の角笛」においては、我々のもっとも野心的な群衆が日の目をみました。ALICEは、ワイドショットをただ人で埋めるだけではなく、雑多な伝説上の生き物でバックグラウンドを埋めました。それにショットのカメラにとても近い前景でさえ、アニメートされたキャラクターを配置するためにも使われました。

ALICEが、MPCのアニメーション・パイプラインに完全に統合されているという事実によって可能となっています。
いいかえると、モーションキャプチャーやキーフレームアニメーションそして、物理シミュレーションが、高度なアニメーション統合エンジンへの入力として切り替え可能です。
個々のALICEのエージェントはヒーローCGキャラクターのようにアニメーション下における筋肉、クロス、ファーに対しても注意を払います。
(訳注: 最後のよくわかりませんが、こんな意味ではないかなと意訳しました。 )

ついでに他のインハウスのツールについても解説があったので、追記。


<< Furtility >>
Furtilityは、MPCの次世代サーフェイス仕上げ用ツールです。主としてフォトリアルなファーやヘアをCGキャラクターに作成します。
また羽から草までいろいろなものの生成に使うことも出来ます。

MPCのインハウス・ヘアシミュレーション・ソフトウエア・アーティストの組み合わせは、ファーの動きと相互作用において完全なコントロールを持っています。
このコントロールには硬直性(Stiffness)、重さ(weight)、そして外部や風や雨そして体の動きのような環境の効果をも含んでいます。
最近では、「紀元前1万年(10000 BC)」のために体毛が長いマンモスを、また「ナルニア国物語 第2章:カスピアン王子の角笛」では、主要なキャラクターを作りました。


<< ISIS >>
ISISはデジタル・セットの再構築のための完全に揃えられたソフトウエアを提供します。
あるビルの2D静止画像がひとそろいあれば、その完全な3Dモデルを作ることが出来ます。
その成果は、「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」における、いくつかのセット・エクステンションの仕事に見ることが出来ます。

 

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