1994年~1997年にわたり放映されたアメリカのTVシリーズ「ムービー・マジック」
SFX全盛期からCGの黎明期まで、ストップモーション、マットペインティング、ミニチュアと火薬など毎回マニアックな主題で、楽しませてくれるSFX版NHK特集という感じでしょうか。
かなりの特撮映像はみてきたつもりでしたが、このシリーズに至っては日本で公開されていない(もしかしてこれって同じ物?)こともあり、目新しい映像ばかりで、結構おもしろいです。
当然ながらハリウッドには、この番組を見て育った世代が今は、この業界を引っ張って行っているわけですが、見たことがある人は、好きな番組のトップに入れてくる人が多いのもうなずけます。
日本でも、当時は特撮の特集番組などがよく放映されていましたが、そういうものよりももっと、いろいろな角度から掘り下げた内容になっていて、業界のことがよくわかる内容になっています。
そして、ついにそのYouTube動画を集めたサイトを見つけました。
MovieMagic(postfolio.org)
(投稿時、リンクが違っていましたが修正しました)
シーズン1のエピソード1~10までですが、貴重な映像がたくさんあります。
懐かしい名前が一杯でてきて、この時代を過ごした人には、あの熱い思いがよみがえるのではないでしょうか。
とりあえず今の仕事に関係上がりそうなコンピュータアニメーション(エピソード9)を見てみました。
Movie Magic Episode 9 - Computer Animation
R&Hで、やったプロジェクトが紹介されています。
このころから動物に話をさせていたんですね。
それにしてもこのシステムでマッチムーブをしてたとは凄いですね。
(マッチムーブは16:00あたりにもあります)
今では、小さな会社でもやってしまうヘッドリプレースメントですが、当時は大変だったと思います。
この時期、SFXからVFXへ徐々に移行していったのだと思うのですが、自分が気がついたのはターミネーター2や、アビスのころで、それまではCGについてはあまり興味がなかったので、参考になります。
コンプのソフトもかなり原始的というか、どうやって操作しているのかわかりません。(キーボード?)(19:34あたり)
テクスチャーをフッテージからとって、貼り付けて、目などは別レンダーと言っていますが、どうやってコンプしてるのか不思議です。
12:50あたりにJohn Hughes氏の若い頃の映像があります。
今はレーザーや、カメラで取り込みますが、当時はデジタイザつかってましたね。たしか7年ほど前にR&Hの見学いったときにも、同じ装置ではないですが、モデリングの部署ではデジタイズをしているような感じがしました。(うろおぼえ)
デザインを勉強したときに、学校には、車の1/5程度のクレイモデルを取り込む精密デジタイザがありました。
もともとは工業製品などの測定をするのに使われる物で、すべて金属の固まりでてきたもので測定も大変。
かなり大きな机の形をした、金属の土台のフチに、X方向に動くこれまた金属の土台があり、そこから垂直に突き出た金属棒にY方向へ上下する部分があり、そこからさらに机の中であるZ方向へ動く金属棒がありその先に針状のプローブがついていました。
この装置がケーブルで近くのオフコン(?)につながっており、基準位置を0,0,0に設定してから、測定を始めます。
クレイモデルにはあらかじめ測定をするあたり線をつけておき、その線が公差する部分にプローブの先端を押しつけると、プローブが若干押されて内部のスイッチが働きその座標値をコンピュータに知らせます。
座標値はそれぞれの可動部にセンサがついており、そこで検知します。
これに比べるとR&Hのはかなり簡単にできる装置ですね。
8:00のあたりから、
ローバートエイブルが紹介されています。
エイブル・アソシエイツ(WikipediaではRA&Aとして紹介)なんてなつかしい、これまで思い出すこともなかったです。w
そしてWikipediaを読んでわかりました。R&Hの謎だったこと。
R&Hに行くと社内の通路に映画「ブラックホール」のポスターがはってあります。
でもR&Hが関わったなんて聞いたこともありませんので、なぜだかずっと不思議だったんですが、その謎が7年ぶりに解けました。
ブラックホールが公開されたのは1979年。
R&Hが出来たのは、それから8年後の1987年なので、R&Hが直接関わっていたわけではありません。
Wikipediaに書いてあるようにエイブル・アソシエイツが作っていたのです。
このときにR&Hの創始者であるジョン・ヒューズがエイブルの元で働いていたというわけですね。
自分の関わった仕事であったからR&Hにそのポスターが貼ってあるというわけです。
これはこちらでよくあることで、最近小さな会社を立ち上げたばかりの人は見せる物が無いので、昔SONYで働いていたときの自分の作品を会社のデモに入れたりしているのを見たことがあります。
さて話をMovie Magicに戻します。
ロボットガールのCGでは、このころからトラッキングマーカーのアイデアがあり、使われていたことがわかります。
トラッキングと言っても、おそらく手作業だったと思いますし、マシンも遅いでしょうから、凄い苦労したと思います。
でもこのころから、マシンの遅さや苦労を物ともせず、自分たちの作りたい映像を生み出すために努力を惜しまないのは、すばらしいですね。
使っているコンピュータの画面やキーボードが時代を感じさせます。
13:10に5人でリズム&ヒューズを作ったと紹介していますね。
13:56に若かりし日のジョン・ラセターが。
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しかしこんな番組みてて、身近なところにスタジオがあれば、そりゃこの業界に迷わず入ってくるでしょうね。
そんな人が多いハリウッドがうらやましいです。
若いのにすでに10年以上CGやっている人も多いのも納得です。
多少違いますが、今はカナダや、インド、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスなども今そんな感じなんですかね。
(あえて中国は外しました。個人的に金のほうが先に立っている気がして....。)
さて、さがしてみたらエピソード12までは見つけることが出来ましたのでリンクを貼っておきます。
Movie Magic Models and Miniatures (Season1 Epsode11)
http://www.youtube.com/watch?v=dEmXA0Itv6A
Movie Magic: Stop Motion (Season1 Episode12)
http://www.youtube.com/watch?v=xHG2aao4CVk
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余談ですが、ロバート・エイブルを検索していておもしろい記事を見つけました。
文化庁メディア芸術プラザのホームページにある「コ・マ・ド・リの観察」
CG黎明期にはワイヤーフレームの映像がたくさんみられ、「CG=ワイヤーフレーム」という印象がありました。ワイヤーフレームの映像を見るだけで、最先端テクノロジーに触れた感じがしてわくわくしたものです。
雑誌にあったプログラムを自宅のFM-7に入力して球や帽子のワイヤーフレーム画像を作って喜んでいたのを思い出します。
その後、トロンやゴルゴ13などでシェーディングされたCGが出てきたときは、見た目がしょぼくて、どう反応して良いかとまどうと同時に、内心は少しがっかりしましたw
これが原因で、CGからは距離を置くことになりました。T2やアビスが表れたことで、CGにやっと実用性がでてきたと感じ、この業界を志すことになりましたが、それまでのCGの進化の過程は自分の中でミッシングリンクになっているような気がします。
(それにしてもこの頃は日本のCGも最先端に近いところを行ってたんですね)
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しかしそのワイヤーフレームでさえ、一つの画像をつくるのに時間がかかりとてもリアルタイムでみれるものではありません。
それに映画はまだフィルムが主体でしたので、CGをフィルムに移す必要がありました。
そこで使われたのは上記のページに紹介されているCRT画面を撮影する方法。
どこかで読んだことがありましたが、こんなことが今もネタとして扱われていることに嬉しくなり、当時の映画のいろいろなエピソードを思い出しました。
この記事に「シカゴ」が1981に作られたと書かれていますが、ブラックホールが公開されたのが1979年。
その二年前なのであきらかにこの手法がつかわれていたはずです。
1979年の「ブラックホール」では、オープニングにワイヤフレームCGが使われていますが、ワイヤーフレームでもまだまだ予算が必要な時代でしたのでディズニーだからこそ、できた技かもしれません。(Youtube動画)
それを裏付ける話のが「ニューヨーク1997」
1981年「ニューヨーク1997」ではCGの描写をするのに、ミニチュアを黒く塗って白い線を書いて撮影したという有名な話があります。
これは当時スターログ日本版でも写真入りで紹介されていました。
さらに
1983年、「007ネバーセイ・ネバーアゲイン」の地図や地球儀のワイヤーフレームCGは、確か予算の関係で本当にワイヤーのミニチュアを使ったと、スターログ日本版に紹介されていたと思います。
ブラックホールから4年、トロンが公開された次の年でもこの状態です。
http://shikatanaku.blogspot.com/2009/06/blog-post_16.html
ちなみにトロンは1982年です。
(こうしてみるとディズニーはCGに力を入れたたんですね。)
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次にこのころの日本がどれほどすごかったかを見てみましょう。
1983年:ゴルゴ13
「世界で初めて劇中にコンピュータグラフィックスを使ったアニメ作品」
http://www.youtube.com/watch?v=-pG1xFNYepU
Youtubeのオープニング映像はコメントにもありますが、実写とCGが混在していますのでご注意を、有名だったのはヘリコプターのシーンですね。
まぁ、これもアニメ部分との違和感があって個人的にはシェーダー嫌いを強めることになったと思います。
1983年:子鹿物語
シリーズもののテレビアニメとして世界で初めてコンピュータによる描画・彩色を行った作品。
http://www.youtube.com/watch?v=tcRBfJjExDg
Wikipediaには、オープニングで河をわたる動物には3Dも使われていると書かれていますがおそらくYouTubeの0:52あたりの鹿の群れのことだと思います。
1984年:レンズマン
これもCGの宇宙船が出てきたりと、当時としてはよくがんばってました。
http://www.youtube.com/watch?v=yE9FDTNyCX4
レンズのカットや宇宙船などに使われています、なめらかなカメラワークもすきでした。
ただ他の2Dアニメとの質感の差が大きすぎて、個人的には違和感を感じました。
しかも日本の作品なのに、原作は洋物。(企画がに金子氏がからんでいるだからでしょうか?)
ちなみにハリウッドでは同年スター・ファイターが公開されました。
http://www.youtube.com/watch?v=H7NaxBxFWSo
リアルさでは一歩先を超された感じがしましたが、まぁ予算規模が違いますから仕方ないですね。
多少CGっぽさが残るところもありますが、場面によってはかなりリアル。
CGの出来も良い思いましたが、まだまだだなという感じはぬぐえません。
基本的なところは日本も同じぐらいよくできてたと思いますよ。
しかしゲーム機で戦士のリクルートなんて 当時は映画作った側もジョークだったでしょうが、2009年には米軍がやってしまいましたw
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しかし、この時代は、本当にいろいろな作品があり、日本のアニメ業界も元気でしたね~。 何よりCGについては世界をリードする立場にあったのは驚きです。
もう一度あの熱い日本に、なって欲しいですね。
実を結ばなかったのは、ハリウッドのように映画芸術としてのこだわりや追究がなかったことも原因の一つにあったのではないかと思います。
映像を作るための手段でなく、CGを見せ物にするためのCGであったのではないかということです。
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