日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2010年3月7日日曜日

経済波及効果の意味と、CG業界との関連

経済波及効果とは?

経産省の方とやりとりしていて、ハリウッドVFXの仕事がもたらす経済波及効果にはどんなものがあるのか? と質問されたときに言葉に詰まってしまった。


VFXというのはプレビジュや主にポストプロダクションにおけるCG作業をさすわけだが、これがどんな経済波及効果をもたらすか?と言われてもそれほど掘り下げて考えたことがなかったからだ。

●各プロダクションが大きくなれば近くのコンビニが儲かる。
●コンピュータ関連機器の需要が生じる
●アーティスト、コンピュータ・エンジニアの需要が生じる
ということしか思いつかなかった。

実際の所「経済波及効果」という言葉は、よく耳にするが、正確に意味を把握しているのか?と聞かれればNOだ。
この言葉がきちんと把握できていなければ、どのような波及効果があるのかを正確に推測することも出来ず、納得出来るだけの提案をすることはできない。

小中高と社会科は苦手だったのでこの手の話題はさけてきたのだが、これ以上避けていては先がない。
そこで、この言葉を勉強してみることにした。
まず「経済」「波及」「効果」それぞれの単語の意味を明確にする。

<経済>
社会が生産活動を調整するシステム、あるいはその生産活動のことである。(Wikipedia

この定義に含まれている「生産」とは、土地や原材料などから人間の何らかのニーズを満たす物財(商品)を作る行為、またはそのプロセスを指す。(Wikipedia

CGの場合、「生産」にあたるのは、
コンピュータを人間が使いCG画像を作り出すことで、そのCG画像が「商品」である。
ニーズとしては映画、アニメなどの娯楽、広告などがある。
ニーズを持っているのは最終的には視聴者であるがCGプロダクションからすると監督やプロデューサーなどのクライアントと言うことになるということで大丈夫だと思う。
この「CG画像を作り出す」行為が「生産」ということになる。

またCG画像を作り出すために、R&D、3Dソフトを使う作業、コンポジット、クライアントとの話し合い、日程管理、経費管理、機器管理、営業、その他のことがそのプロセスと言うことになり、これも「生産」の範疇に含まれる。


「経済」とは、その「生産」に関する活動ということであり、上記の「プロセス」の部分である。
Wikipediaには「社会が生産活動を調整するシステム」とあるが、CG業界全体が衰退しないように、さまざまな非政府団体や、政府団体で活性化することが調整であり、それを調整するためのいろいろな組織とその活動がここでいう「経済」の範疇に当てはまると思う。

まとめるとCG製作における「経済」とは、「CG画像を作成する活動と、活性化するためのしくみ」を含んでいるということだと思う。これは後に間違いもしくはすべてには当てはまらないと言うことがわかるかも知れないが一区切り付けておくためにも、現時点ではこれで良しとする。


<波及>
:波紋が広がるように、影響が徐々に広い範囲に及んでゆくこと。(goo辞書使用)
CG産業における「経済波及」とは、「CG画像を作成する活動から発生した広い範囲に及ぶ影響」ということになる。

ちなみに「影響」とは
〔影が形に従い、響きが声に応ずる意〕関係が密接で、他の物事に力を及ぼして、変化や反応を起こさせること。
(goo辞書)

「CG画像の作成という活動」があり、それが「他の活動に変化や反応を起こす」ということになる。


効果:ある行為の、目的にかなった結果。ききめ。(goo辞書使用)
上記「波及」は「変化や反応」であるが、これが何らかの目的にかなった物と言うことになる。

金銭的な物(仕事が増えるとか、収入が増えるとか)
CG画像作成に関する物(作業効率化、CGの質向上とか)


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以上で、とりあえずCG業界を中心にして言葉の意味を考えてみた。
本当に「とりあえず」であり、言葉の意味を理解するためにイメージをつかみやすくするために内容をかなり絞ってある。
経産省の言う、経済波及効果とはもっと幅広い物、間接的な物を含むはずなので、もう少し違う角度から「経済波及効果」を調べてみたい。

わかりやすい説明が埼玉県の「経済波及効果とは?」というページにある。

ここにある「経済波及効果とは、何ですか。」の内容を下に転載しておく。

ある産業に新たな需要が生じたとき行われる生産は、需要が生じた産業だけでなく、原材料等の取引を通じて関連する他の産業にも波及します。
また、これらの生産活動の結果生じる雇用者所得は、消費支出として新たな需要を生み出し、さらに生産を誘発していきます。これが、経済波及効果です。
産業連関表は、産業相互間及び産業・最終消費者間の取引を一覧表にまとめたもので、その表から導き出される係数を用いて、経済波及効果を分析することができます。


これをハリウッドVFXを日本で受注する事に当てはめれば、海外にある需要を国内に取り込むことであらたな需要を生み出すことになる。
海外の需要を十分に満たすことができれば、仕事も増え、国内の関連産業に影響がでる。
関連産業にはどのようなものがあり、それらがどのような影響を受けるかというのがここで重要な情報となる。
たとえばコンピュータ機器の販売/リース、ソフトウエアの販売、もしかするとモーキャプやレンダーファームといったサービス。通信業者。ビルのリース、その他いろいろな物が考えられる。
また雇われた人の給料があがれば、様々な消費につながり、そこに需要が生じる。
お昼ご飯を買いに近くの弁当屋へ行く人が5人ふえればそれが地域への波及効果といえる。
大きな液晶TVや高価なパソコン、自動車を買う人が増えれば、それも波及効果。
これらはCGとは直接関係のない分野での生産を誘発していることになる。


「経済波及効果」の意味をさらにわかりやすくステップ毎に図で説明したのが「経済波及効果のイメージ」ページです。

ここにはさらにいくつかの重要なキーワードがでてきます。
1次波及:直接の生産(直接効果)の増加からの波及
第1次間接効果:一次波及による生産額の増加分
経済波及効果(1):(直接効果+第1次間接効果)

2次波及:所得増加による需要の増加(消費の増加)とそれによる波及
第2次間接効果:その合計

経済波及効果(2):直接効果+第1次間接効果+第2次間接効果



以前のエントリ「Weta給料:1週間110万円」でアバターの経済効果についてふれた記述がありました。

「産業開発大臣のGerry Brownlee氏は、「3億ドルという莫大な金額が、ここでサラリーとして費やされました。」助成金は価値のある投資だった、経済全体に波及効果をもたらしたと述べています。」

これはアバターの誘致で4500万ドルの助成金を使ったことに対する正当性の説明なので、おそらく、第2次間接効果も十分にあったということをほのめかしているように思います。
ようするにニュージーランドは助成金をだしたにもかかわらず、消費の恩恵はそれ以上であったということを言いたいかったのではないかと思います。


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ここでいろいろな経済波及効果の例をみてみます。
男子ゴルフの石川遼に関する経済波及効果についてのニュースを見てみます。
石川遼の経済波及効果341億円 関西大教授ら試算

直接効果(約153億円)
●CM出演企業の売り上げ増加
●ギャラリー増による消費、グッズの売り上げアップ
●賞金獲得総額など

さらにその波及による額を考慮すると合計で341億4500万円になる。


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次の例は少し映像関連よりのもの。
日銀高知支店が2009年10月に発表した
NHK大河ドラマ「竜馬伝」の経済波及効果」(PDFファイル)

経済波及効果234億円のうち、
直接効果(144億円)
●観光客消費額の増加額

間接効果(90億円)
第1次間接効果+第2次間接効果
●観光客 前年度比:37万人増加
●消費額 前年度比:74億円増加

この例は、観光客が主体であり大量の人間による消費からくる経済効果である。
ハリウッドVFXの仕事を誘致しても、直接ロケなどをしているわけではないので、
このような観光産業には結びつかないだろう。(一般の認知度、受け入れ度が低い)
このような大量の人間の消費に関連した物としては、コミケなどが考えられるが、
実際に結びつけられるかどうかはわからない。

実は映像産業に関して、一番手っ取り早く、大きな効果があるのがこの経済波及効果だろう。
それに比べるとハリウッド映画の製作を援助するだけのVFX作業は経済効果が無いように見えてくる。
ただ、このような経済波及効果意外にも、いろいろな面での波及効果があるはずである。


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おもしろい物としては、
東北地域への映画(映像)事業の継続的誘致のための経済効果と課題に関する調査(PDFファイルファイル)

映画ロケを主体としたものだが、
8ページにどのような経済効果があるかを一目でわかるように一覧にしてある。
ここのロケ隊の消費というのは、CG製作におけるスタッフの消費とおきかえてみればいろいろな消費活動を考えることができそうだ。
また社会効果に関しては、まさに業界への影響が主目的のこの計画では、これは重要な点である。
この表を参考にしていろいろ考えるのも悪くはない。

9ページではロケ隊と、観光の需要との関連性を表にしている。
ロケ隊の需要を考えるときに現地の人との関わり合いがでてくるが、CGの場合どうしても部屋にこもる作業のためげんちの人との関わり合いは通常のロケと比べると少ないともいえる。


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埼玉りそな産業協力財団がまとめた
埼玉県企業誘致大作戦」がもたらす経済波及効果について」(PDFファイル)
埼玉県の企業誘致による経済波及効果および税収効果」(PDFファイル)

これらは、一般企業の誘致大作戦による経済波及効果についてリポートしている。
これをみると大きな企業を誘致することで、そこと関連した下受け企業に需要が生じていることに触れている。
ハリウッドの大手プロダクションを誘致するとすればこのような見方をすればよいだろう。
また税収効果についてもふれている。
税制優遇措置が具体的にどのような物か実は、はっきりとはしていないが...(゚Д゚)
クライアント側が支払うときに負荷される消費税に関する物としてとらえている。
だとすればその仕事うけた企業自体とそこで支払われる給料には税金が普通にかかることになる。
もしプロダクションが成長すればその額も増えていくことが想像できる。


その他の一般的な経済波及効果の例も「Keizai report.com」で122例、確認できる。

また「経済波及効果」について説明してあるサイトは他にもあったので記載しておく。
経済波及効果とは:「生産誘発効果」、「価格波及効果」といった言葉についても解説している。
http://www012.upp.so-net.ne.jp/hakyu/hakyukouka/hakyukouka.htm#hakyukouka

産業連関表による経済波及効果(石川県)
http://toukei.pref.ishikawa.jp/annual/kaiseki/renkan_h7/ioreport/renkanbunseki.htm

経済波及効果(北海道新聞)
http://www5.hokkaido-np.co.jp/motto/20050604/



またこの計画に関する「経済波及効果」を考える上で役に立ちそうなのは
映画産業ビジネスモデル研究会 報告書(pdfファイル)
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/movie.pdf

コンテンツ産業の現状と課題(pdfファイル)
http://www.meti.go.jp/policy/media_contents/downloadfiles/kobetsugenjyokadai/genjyoukadai1215.pdf


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メモ:
実際、VFXをコンセプト段階から請け負うようになれば、
様々な企業の協力を得て、その企業ブランドを映画に関連させることもできるかもしれない。
これは世界的にブランドのイメージを売る宣伝効果が期待できる。
これはたとえばアウディーのような感じである。



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おまけ:
北斗の拳映画および投資ファンドについての考察
http://www.alpha-net.ne.jp/users2/ginjy/zakki/hokuto_fund.html

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