日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2010年1月1日金曜日

税優遇措置とは(2)

では映画制作者側(プロデューサーや監督)がいかに税優遇措置に注目しているかを見てみましょう。

少し古い話題ですがおもしろい記事を見つけました。

シネマトピックス(2004年9月)
ルイジアナ州の税制優遇措置が功を奏したようだ。"Glory Road"のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーは「優遇措置で資金を節約できる。我々がここにいる唯一の理由だよ」と語ったとか。

ニューヨークは映画ロケ誘致のための税制優遇措置をスタートさせたようだ。「プロデューサーズ」("The Producers",1968)の再映画化が適用第一号となった模様。
メル・ブルックスは「税控除がなければ、この映画はカブールかどこか世界で一番安い場所で撮影しなければならなかっただろうね」と語ったらしい。

数々の大ヒットを生み出した名プロデューサ「ジェリー・ブラッカイマー」が税優遇措置に注目しているのは最近も耳にした話から知りましたが、すでに2004年から税優遇措置を利用していたのですね。
そういえばプリンスオブペルシャも彼がプロデュースして、VFXはロンドンです。
彼のように資金繰りが効く人でさえそうなら、他は当然そうなっても仕方がないと言えます。


シネマトピックス(2004年7月)
「シ カゴ」("Chicago",2002年)の撮影が実際はトロントで行われるなど、シカゴは映画製作地としてここ数年衰退が続いていたものの、今年1月よ りイリノイ州が税制優遇措置をスタート、「アイ,ロボット」("I, Robot")や「オーシャンズ12」("Ocean's Twelve")、"Batman Begins"など新作の撮影が続き、今年の同州での映画・TV製作によりもたらされる利益は前年比3倍の7500万ドルに達する見込みとか。
ただし、税制優遇措置が受けられるのは年内のみとか。
上記にもあるようにアメリカ国内でも税優遇措置を行っている州はあるようです。
残念ながら、VFX業界にはあまり関係なさそうですが。


エンタメ早耳情報 映画の聖地でようやく優遇措置(2009年3月)
年間1億ドル(約980億円)の税額控除となっています。
また「州の試算によると、この措置で州内で費やされた額の2.85倍が経済波及効果となって戻って来る」そうです。
これによると、カリフォルニア州でも今年7月から税優遇措置がとられているということですが「低予算映画やTVが対象」となっていますね。
大予算のハリウッド映画が対象ではないのでしょうか?
しかもそもそも効果がどれほどでているのでしょうか?
「約10年前から優遇措置の導入を検討していたのだが、ロス以外の他の街の議員が「映画プロデューサーが得するだけ」と強行に反対していた。」
まぁ気持ちはわからないでもないですが、映画プロデューサー達は、そのメリットを他の国からうけることが出来るとは思わなかったのでしょうか?
それにより出遅れて、期待される経済効果がうまれなかったのかもしれません。


『ナルニア国物語/第2章 カスピアン王子の角笛』 アンドリュー・アダムソン監督インタビュー
税制優遇措置など様々な理由で、編集・合成・音響などのポストプロダクション作業をヨーロッパでやることになったのです。特に英国のスタジオが「『ナルニア国物語』は英国の原作だから我々にやらせろ」と積極的に売り込んできました。


多くのプロデューサーや監督が税優遇措置に注目していることがわかります。
実際にお金を動かす人達がこうなので、以下に仕事がそちらへ流れていくかは理解するのが難しくありません。
たしかに税金をとられないために人々は、いろいろと工夫をするわけで、それは庶民も金持ちもかわりません。
むしろ金持ちほど税金対策をおこたりません。
そして、大企業においてはいうまでもありません。



インドでのソフトウェア・オフショア開発を成功に導く
市場の成長と諸費用の安さで、インドは撮影後の編集作業でのアウトソーシングハブとなってきています。
さらに米国のアニメーション制作会社やゲーム制作会社のインド進出も、近年増えてきています。
インドでアニメ映画を作ると、米国の2割程度でできるなら、今後もインドへのアウトソーシングは増えていくことは間違いないでしょう。

 「シュレック2」、「スパイダーマン2」や「ナルニア国物語」などの最近の大ヒット作は、インドのアニメ制作会社や映像効果の専門家によって作られました。

この表記誤解を生みますね。
すべてがインドで作られたわけではなく、「それらの一部は・・・作られました」と変えた方が良いと思います。 でもインドへのアウトソーシングの量が増加しているのは事実ですね。
しかし「米国の2割程度でできるってのはやばいですね。


中国政府、アニメ産業に税制優遇措置
アニメですが、中国も頑張ってます。
そのうち、米国も日本の2Dアニメーション業界のようになっていくのでしょうか?



こうしてみると、どうあがいてもこの流出は、安定することはあっても、再び減少することはないように思います。
アメリカ(カリフォルニア州)がその対抗措置をとったとしても、その流れを完全には食い止められないように思えます。

ソフトの発展が、VFXを特殊技術ではなく、一般技術に近づけ、それが世界全体へ広がりつつあるのでしょう。
いわばデジタル時代の流れですかね。


しかし、あえて、アメリカ国内でVFX業界が生き残るすべを考えてみます。
なにをすればいいのでしょう?
1)海外のプロダクションでは対応しきれないほどの仕事量を作る。
2)R+Dなどのシステムやツールを作り上げる仕事に専念する。
3)他の国よりも、よっぽど魅力的な優遇措置をとる。

年間に作られる映画の数を増やすには資本や、元が取れる有能な監督の数からしても、限界があるでしょう。
立体映画は単純に仕事量を増やしますが、最近の一番多い仕事量をもっていたアバターでさえ、ほとんどの仕事がニュージーランドに流れています、どうなんでしょうね。

VFXに必要なシステムやツールを作るのは、しばらくは維持できそうな仕事内容ですね。
やはりただのITの知識だけでなく、ハリウッドには長年の映画作りそのものに対するノウハウが蓄積されています。
しかし、これから5年、10年すると、アメリカ国外のプロダクションもそのあたりのノウハウが蓄積されてきます。
インドや中国などが、独自のレンダラーや、流体システム、ダイナミックスシステムなどが作るようになるとこの領域もそう長くはないでしょう。
あとはそれらを管理していくことしかできません。


他の国よりも有利な優遇措置というのがあり得るのかどうかわかりません。
カナダやイギリスに対してはもしかしたら有利になり得るかもしれません。
しかし、インドのように安く仕上げられては、手も足も出ないでしょう。


1~2年で、アメリカ国内のVFXの仕事が半分以下になるということは無いと思いますが、最盛期はすぎたのは確実な感じがします。
3D(立体)映画が、市場を盛り上げてくれれば、ひょっとすれば、もう少し寿命を延ばしてくれるかもしれません。

またPixarなどのオリジナルアニメーションを一から作る体制を持っている大手のプロダクションは、この流れには完全には巻き込まれないでしょう。


今は、将来を不安がるのではなく、それらを受け入れ、将来に対するそなえをすべき時かもしれません。

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