日本でハリウッドVFXを制作! 「経産省アイディアボックス」 結果:  
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2010年3月6日土曜日

ハリウッドから仕事をとれれば給料があがるのか?

給料の減少はよく問題にされますが果たしてハリウッドから仕事をとれれば、給料をあげることができるのでしょうか?

日米共に、CG映像製作を依頼してくるクライアントは現在の支払いでさえ多すぎると思っているのが現状でしょう。そして、これはますます安くなっていく傾向があるようです。
これはCGに限らず、コンピュータに関係する業界全体に言えることかも知れません。


よくみかけますが「国内映像産業はエージェントが搾取している」
これが真実であれば、ハリウッドVFXを各プロダクションがエージェントを通さず直接取得できれば、解決するように思えてきます。

国内映像産業の真実を知らないので、なんとも言えませんが、とりあえずハリウッドから直接仕事をとってこれれば、ショット単位での予算は期待できるかもしれません。
これは、仕事内容にも寄りますので一概にはいえませんが、仮に20%ほど、良かったとしたらどうなるでしょう?


時給をベースに考えてみました。
ハリウッドからVFXを受注して、ショットあたりの単価が日本国内の仕事よりも上がるとしても、同時に質を求められれば工数(人数、時間)がかかります。
増えた仕事は、新たに人を雇うことで処理するようにすれば、個人あたりの時間的負荷はふえません。
しかし、国内の仕事にくらべて、スケジュール的余裕がある場合も考えられます。
時給が同じで、残業時間が減れば、いままで残業で何とかしていた人は、逆に月給が減ります。

またショットあたりの単価が高いといっても、現状と較べてどのぐらいの差があるのかにも掛かってきます。
アメリカへの出張費、弁護士費用、事務所を作った場合、その維持費、現地の社員の給料など、様々な費用を差し引けばマイナスになる可能性も無いとは言えません。
共同でエージェントをもてば、このあたりの経費が削減できます。

仮に4倍近い収入が入るとすれば、それら諸経費を差し引いてもなんとかなるかもしれません。そうなると各プロダクションの経営判断に任されます。
現状の給料は少しだけあげて、あとはボーナスにするとか、現状維持で入ってきた収入はさらなるプロジェクト確保のために使われることも考えられます。

またそのように単価が大幅に高い仕事であれば、アーティストやVFXスーパーバイザーもスキルの高い人が求められます。仮にそれを海外から雇うとすれば給料は高く設定する必要がでてきます。
それらの人に給料を支払った残りがどれぐらい残るかも考えなくて行けません。


このように考えてみると収入面では末端のアーティストに還元されるまでには意外とハードルが多く、アメリカのアーティストのような収入が得られる可能性は少ないような気もしてきます。
少なくとも、大作のVFXを大量に依頼されるようになるまでは、まだまだ厳しい状況はつづきそうな気がします。
ある程度まとまった仕事が継続的にとれるようになれば、環境改善も期待できます。


他に、期待できるのは日本が得意とする効率化。
同じショットを2/3の時間で仕上げることができればそれだけ予算が節約できます。
これをアーティストなどの作業者へ還元することができる仕組みを作ればアーティストにとっても、やっただけの見返りがあるという話になるように思います。

これらの話は全て具体的なVFXショットの予算に関係してきますから、しっかりとした理論にしていくにはショットの難易度別に日米の単価や工数を較べてみないと始まらないような気がします.


2010/03/06追記:
いろいろと書いているうちになんとなく現実的な面がみえてきたような気がしてきますが、まだほとんどが推測にすぎません。
ただこういうことを考えてみたのは、実際に経産省にしろ、企業にしろ、皆があげているこういった問題が結果として解決する方向へどの程度向くのかが、今回の支援を決定づける上でも、忘れてはいけないポイントであると思います。

いくら状況を改善するためにと声を高らかにあげても、 現実に即していなければ結果がでてきませんからねー(T_T) 見たくない部分も見て、いろいろな方面からの解決策を考えていく必要があると思います。
ちょっとがっかりした人もいるかもしれませんが、そういうわけで、あくまで推測に過ぎませんのであしからず。 

10 件のコメント:

  1. とても興味深い記事ですね!
    確かにハリウッドから仕事を取っても、他の面でお金が掛かってしまい、クリエイターの給料は変わらないかもしれませんね。
    それでも、海外の技術に憧れて渡米するクリエイターは後を絶たちませんし、日本の技術を発展させるなど他のプラス面を考えると、やはり海外から仕事を受注していきたいところ。
    また、未来性のことも考えると、よりそう思います!

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  2. ノウハウの発展についてはプラス面ありと思います。
    技術面についても中規模以上のパイプラインについてはえるものがあると思います。
    しかし、なかなか現実に即したプランが少ないし、現実に即していても長期の視野に立っていないプランは地方空港問題のように税金の無駄使いで終ってしまいますし。
    また国がかかわると、その業界は衰退するという経験からきた話もききました。
    なかなか難しいところですが、ひとつひとつ絡んだ糸をほぐしていくしかないですね。
    もしかすると、そういう問題を一部の人しか考えてこなかったから、解決してこなかったということもあるように思います。
    ここらでみんなが考える必要があるのでしょうね。

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  3. ちょっと前から、フリーの方中心にこの運動をしているのを見て思っていたのですが、ハリウッドから仕事取れば給料あがるとかありませんよ。

    全ての産業で言えることですが、所得を上げる一番簡単な方法は、自前で儲かるコンテンツを作る事だけです。
    外需に頼ればいつか価格競争で新興国に負けるのは自明ですから。

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  4. 匿名さん コメントありがとうございます。
    特にフリーの方をターゲットにしたつもりは無いのですがw
    匿名さんと同意見の方もたくさんいるようですね。

    >ハリウッドから仕事取れば給料あがるとかありませんよ。

    給料上がるという意見も給料上がらないという意見も私には確固たる裏付けがなく、推測になってしまいます。
    匿名さんがもし私も同じように断定できるだけの情報をお持ちであれば、お寄せいただけると非常に助かります。
    確固たる情報は、経産省の方も必要としていると思いますので、お伝えしますよ。

    私(おそらく経産省の方も)には、上がる下がるが判断できないという所なので、現状では、私の考えるところを書くしかないというのもあります。

    もし上がらないと言う事がわかれば、それを書くつもりは十分あります。
    日本のCG環境や作品がよくなれば、特にこだわりはありませんので、判断材料となる情報を是非お寄せ下さい。

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  5. >時給が同じで、残業時間が減れば、いままで残業で何とかしていた人は、逆に月給が減ります。
    日本のプロダクションで残業代が出るという所はほとんど無いのでそういう事は無いと思います。

    予算、期間が日本での仕事より多ければ給料には反映されないとしても、
    プロジェクトの人数を確保できる・残業を減らしてゆとりがある生活をできる・マシンや機材、パイプラインに投資して効率化できる
    など給与面以外でのメリットの方が大きいと思います。
    現状だと映画などのエンタメ系の仕事だと関わる人数をギリギリまで絞って
    残業徹夜の強制で乗り切ってなんとか黒字を出している会社が多いでしょうし。

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  6. 3月10日とおそらく違う方だとおもいますが、コメントありがとうございます。

    >日本のプロダクションで残業代が出るという所はほとんど無いのでそういう事は無いと思います。
    本当にそうなんですね-。ちょっと自分の書き方がmずかったんですが、残業代というのは時間数が増えたことによってもらう給料として行っている部分がありりました。
    たとえば時給1000円として1時間残業したら1000円が追加されるという感じです。

    でも実際に、残業代と行ってしまうと、例えば残業を1時間して時給1000円のところが1200円になる。
    ようするに200円が残業代と言うことですよね。すみません、これは書き方がまずかったです。
    ところで、ハリウッドの中小VFX企業でも、残業代が出ないところは多いですよ。
    http://shikatanaku.blogspot.com/2010/02/blog-post_10.html
    最近、行った2箇所は両方とも残業代は出ません。
    基本時給はでますが、たしか日本でもそれでなんと名成り立っている人も多いとどこかで読んだことがあるので、月の手取りが減るかなと思って書いたんですが実際にはそのあたりの給料もでない。ようするに無報酬での労働ということなんでしょうか?
    それだと変わらないのは理解できるんですが、思った以上にひどいですね。

    こっちでも人数や残業徹夜の強制はありますね。とくに中小は多いように思います。
    夕方にクライアントのコメント(直しの指示)が入り、(大体クライアントはお昼近くから深夜にかけて活動する人が多いので、夕方にコメントが来ることが多いです)「締め切りは明日の朝ね」とか言われます。
    体壊したり無理しないようにねといわれますが、実質残業してくれと言うことなんですが、残業してなんとか終らせると「え~そんなにやってたの!なんてこったい!」「くそっ!、なんてひどいんだ!」みたいな感じで同情するような感じで驚かれます。
    まぁ本当に認識してなかったとは思えず、半分は言葉裏での暗黙のコミュニケーションだと思いますが、そんな感じで残業せざるを得ない状況になることはよくありますね。w
    最近は、予算が削られているので、どれぐらい時間がかかる?と聞かれて答えるとそれより1~2時間けずった時間までに終らせて「こんなくそ仕事はやく終らせて、ゆっくり休みなよ!」とまで言われます。
    まぁ基本、フレンドリーなんですが結局「金ないんだからそんなに残業すんなよ!」って所ですw

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  7. 日本で時給ってのはまずありませんね。
    精々日給でしょうか。
    なので1日1時間で終わらせて帰ろうが徹夜でやろうが休みに出勤しようが給料は変わらないわけです。
    今の日本はサービス残業という名の実質タダ働きで成り立っているような物です。

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  8. そうなんですか、アーティストに、それはかなりきついですね。
    「サービス残業」って呼ばれるのも納得です。
    そうすると、
    実際の支給額÷全作業時間
    で計算するとかなりも単価が低くなりますね、その価格で他国の人件費と比較しないといけないようにも思いました。

    実際サービス残業の時間が増えているのであれば、その単価が下がり続けているわけで、いわば無給労働による市場崩壊というか、労働費破壊というか、そのような事がおきているということになり、将来の事を考えるとこれを何とかしないと、かなり危険なことですね。

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  9. 3/10の匿名

    私はたぶん日本で最も海外の仕事をしている会社にいた事もありますが、その会社の平均給はとても低いと感じました。
    まず海外の仕事を請けると言うことは、大規模なコンペに価格&クオリティで勝ち抜く事を意味しており、そういった意味で、ヨーロッパやインドなんかに技術、価格で勝たなくてはいけません。とても過酷な競争です。
    そうしたら、自ずと儲けの幅なんて極僅かになります。
    むしろ日本はハリウッドに憧れがあるので、赤字でもOKみたいな勢いでやってましたが・・・。

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  10. 最初の匿名さんですね、コメントでお答えいただきありがとうございます。
    やっぱり実際に経験された方の情報が一番信頼おけます。
    日本で海外の仕事を受注するのがトップクラスでもそのありさまなら、なるほどかなり無理があるのだなとわかります。
    そういった会社の方との話でも、(人件費の話はしませんでいたが)ヨーロッパやインドとの熾烈な価格競争の話は出てきました。
    そして税制優遇措置があればコンペで勝つための後押しになるが、現状のままではかなり難しいと聞いた話があります。

    価格競争はハリウッドでも小さなプロダクションは同じような状況にあり、大体わかります。
    それでいて日本の進出は新しく、もし仕事が取れるなら最初は赤字でもと思うのは、こちらの出来たばっかりのプロダクションでもあることなので、理解はできます。
    いくら憧れといえども、アーティスト側はともかく、プロダクション側は赤字でもOKというのをずっと継続は出来ない(もしくは、したくない)と思ってはいるのですが。
    実際に日本で税制優遇措置がうけられるようになれば、日本のCG業界が競争力をもつことになり、技術力ではヨーロッパよりは劣るとしても、中国や、インドに比べて高度なので、そのあたりの層の仕事をとってくることは出来るかも知れないなと思いました。
    また私も、小さな仕事では黒字になるとは思えなかったのですが、匿名さんの情報により、それが半ば裏付けられるような形になったと感じています。
    なので、いかにして受注する仕事をより高度で、大きな予算のものに変えていくことができるのかを間がなければこの計画が実行されても頓挫してしまうことになるように思いました。

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